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第一章 たからばこのおかゆ
とろっとしたご飯から、まっしろなけむりがもくもくと上がっていた。
そしたらけむりの上から、金色のとろとろが降ってきた。
中には、赤や緑や黄色の小さなかけらがいっぱい入って、一つ一つがキラキラ光っている。
まるで大冒険したあとに見つける、たくさんの宝石がいっぱいに詰め込まれたピカピカのたからばこだ……!
「これ……たからばこ?」
そう言ったら、ちょっと恥ずかしそうに男の人が笑うのが見えた。
けむりもなんだか美味しそうな香り。
温かくて、あまくて……お腹がきゅうっとちぢんだり、広がったりしたんだ。
❖
「このたびは、お世話になりました」
頭を上げると、少年の顔が視界に入る。少年は笑っていた。
よかった。それを見た男は、心からそう感じていた。
少年の両親もとても満足そうだ。母親のほうは、目尻にうっすらと光るものがある。
彼らが立つのは3LDKのマンションの一室。フローリングの床や、白い壁紙のあちこちに楽しい今日の出来事の名残がある。
そんな部屋で、少年とその両親、流しの料理人である男が一人、互いに向かい合っていた。
先ほどまでは少年の友人たちもいて、大騒ぎだったのだ。なんの騒ぎか……それは壁にかかった垂れ幕に書かれている。
『しょうまくん お誕生日おめでとう』
『しょうま』というのは、少年の名だ。昌磨は、頬にほんの少し赤い爛れのある顔をめいっぱいくしゃくしゃにして笑った。
「ありがとう! すっごい美味しかった!」
昌磨のその言葉を耳にして、両親は感情が溢れだしそうになっている。
「本当に助かりました。なんとお礼を言っていいか……」
「ええ、この子からこんな……『美味しい』なんて言葉が聞けて、本当にもう……!」
少年の両親から口々に賞賛されて、男はなんだかくすぐったい。人あしらいが得意ではないので、なんと言っていいかわからず、代わりにもう一度頭を下げる。
「とんでもない。そのお言葉が聞けただけで、充分です」
「おかげさまで、これまでで最高の誕生日にしてやれました。満足のいく食事など、できないと諦めていました。それなのに……」
男の言葉に少年の母親が涙ながらに答える。
「そんな諦めるなんて……これからも、何度でもお声がけください。いつでも、参ります」
男が言うと、母親は再度ハンカチを濡らす。そんな様子に気付いているのかいないのか、少年は男の手を取った。男を見上げる瞳が、キラキラ輝いていて宝石のようだ。
「ねえ、また来てくれるの? ほんとに?」
「ああ、もちろん」
「おれ、今度は……別のものも食べてみたい」
「ああ、なんだって作るとも。何が食べたいか、ちゃんと考えておいてくれよ」
「うん!」
男は、少年と指切りをした。千切れんばかりの力で約束を交わす。これだけの元気があるなら、またの機会はすぐにやってきそうだ。男はそう安堵する。
(子どもは、こうでなくちゃ)
昌磨は、生まれたときから複数のアレルギーを併発していた。
おかげで、赤ん坊の頃から厳しい食事制限をしなければならなかった。食材、調味料、添加物の有無……それらに十二分に注意を払った上で、漢方薬の服用、鍼灸治療なども行っていた。それでも、症状はなかなか改善されない。
少年はいつしか、黙々と『食べられる』メニューを流し込むだけになってしまっていた。そんな様子を心配した両親は、プロフェッショナルの力を借りることにしたのだ。
昌磨がお腹いっぱい、好きなものを食べられるパーティーメニュー。それが、この家族からの依頼だった。
「これ、今日作った料理のレシピです。よければ作ってあげてください」
ほんの少しのサービスをして、男はマンションをあとにした。
店を持たず、勤め先も持たず、客先に出向き、求めに応じて食事を提供する流しの料理人。それがこの男――剣の稼業だった。
特定の店がないから客の集まりは悪い。だが腕は確かなので、依頼を受ければ客がつく。だから剣は様々な店からの誘いをすべて断り、一匹狼の道を進んでいた。
後ろ盾のない剣を訝る客もいたが、その料理を一口、口にするとたちまち彼を見る目が変わる。気に入って、度々呼んでくれる客もいた。
手を抜いた席など一つもない。どの席でも、客が何を望むのか、真剣に向き合い、答えを出してきた。
自分は料理人だ。料理で応えるほかない。何より、自分にはそれしかできない。
男はそんな風に思っていた。
何故ならば、剣は料理人の魂から生まれたのだから。
ふわりと、剣の鼻先を白い小さな塊がかすめる。いつの間にか、雪が降り始めていた。
剣は身震いしながら、コートの襟をきゅっと引き寄せ、ふと先ほどの少年の笑顔を思い浮かべる。真っすぐで、輝いていて、そして逞しかった。未来に希望を抱いている瞳だった。
「やっぱり子どもは、悲しい思いをしちゃいけない。美味しいものを食べて、美味しい顔をしなくちゃな」
そう呟きながら、剣は思い出す。あの家にも、子どもの声が響いていた。楽しそうな声、悲しそうな声、怒った声、泣き叫ぶ声……人は赤ん坊から大人になるまでに、様々な感情を経験する。剣はそれらの声を、よく耳にしていた。
主が自分を手入れしながら子どもを叱り飛ばす声を、心地よく思っていたものだ。何故ならどんなに喧嘩をしても、自分を使ってできた料理を食べた家族は、皆、笑っていたからだ。
剣は、料理人が大切に使っていた包丁から生まれた、付喪神――あやかしとして生を受けた。だから彼は、料理を作る。ただそれだけしか知らないのだ。
❖
『剣』という名は、生みの親たる主がつけたものだ。
「包丁から生まれたということは……」
顕現した剣を見たその人……主は、眉間にしわを寄せてうんうん唸りだす。
そして、包丁 → 刃物 → 刀 → 剣
という連想クイズのノリで、男の名は『剣』に決まった。あっという間に決まったので、剣に拒否権はなかった。人間に混ざって暮らしても違和感のない名に決まったから文句はないのだが……時々もやもやする。意思を持ってともに暮らすようになってわかったことだが、主は温厚でちょっとズレていたようだ。
主の前にも、剣の本体である包丁の持ち主は二人いた。持ち主たる料理人たちは、古くは江戸時代から続く料理人一族だ。直近の主の祖父である料理人が剣を使い始め、代々その子らに引き継がれてきた。剣は持ち主であった三人だけでなく、その先祖の心意気まで受け継いでいると、思っている。
もちろん、剣を顕現させた主の心意気と腕は、最も色濃く受け継いでいる。
生粋の料理人である主が選んだ夫もまた、腕のいい料理人だった。そして、その二人の間に生まれた一人娘も、料理人を志した。
娘は今、ひとかどの料理人として歩んでいるが、剣のことは受け継がなかった。剣ではなく、父親の包丁を受け継いだからだ。
娘には何度も詫びられたし、剣自身も残念に思ったが、今はこれでよかったと思っている。こうして制約なく、自由に客のもとへ行くことができるのだから。
とはいえ、特定の店を構えていない、しかも宣伝や広告を出しているわけでもない、一料理人が毎日毎日仕事にありつけるはずもない。今日は久々の依頼だった。個人的な知り合いの紹介によって成立した仕事だったのだ。
先ほどの家族はごくごく一般的なサラリーマン家庭。受け取った謝礼は、決して高額ではない。経費と知り合いへの紹介料を引くと、少し心もとないと言える。
(まあ、今日明日ぐらいはちょいと美味いものを食べたって罰は当たらんだろう)
研究という名の食べ歩きは、料理人たる剣のライフワークだ。金があるときは誰に憚ることなく、美食の限りを尽くすと決めている。
何を食べようか……常連客の社長に頼んでおすすめの料亭に連れていってもらおうか、馴染みの小料理屋で定番から新作まで食べ尽くすか。居酒屋飯の食べ歩きもいい。ホテルのレストランのビュッフェも捨てがたい。各地のグルメフェスを点々とするのも……いや、そもそも今日は近所のパン屋が月に一度の限定メニューを出す日だ。それも見逃せない。
行きたい場所を次々思い描きながら、剣は家までの道のりを歩いた。自宅が見えると、そのそわそわした思いは一層増す。
「まだ時間はある。買い物がてらゆっくり考えるか」
ひとまず仕事道具を置いてからにしよう。そう自分を落ち着けて、剣は足早に自宅へと歩みを進める。そこで、剣は気付いた。
視界の端……剣の家の門前に、人間の子どもがいることに。
その子どもは、ヨレヨレの服に身を包み、見るからに汚れている。何より剣の目を引いたのは、その子どもが――まるでマッチ棒のように、ガリガリに痩せ細っていたことだった。
か細い四肢を力なく投げ出し、うつ伏せに倒れるその子どもから、剣は目が離せなかった。
❖
いつから倒れていたのか、子どもの体はすっかり冷え切っている。だが、脈はある。
剣は考えるより先に抱き抱え、玄関をくぐって自分の部屋に運んだ。
干さずに畳んだままの布団を敷き、子どもをそこに寝かせると、台所に向かった。蒸しタオルを作るためだ。
まずは顔の汚れを拭いてやろう。汚れを拭く以外にも、脇の下などに置いて、温めてやらねばならないから、タオルがたくさん必要だ。目につくタオルを片っ端から水に濡らし、電子レンジに放り込んでいった。
タオルを持って、子どもが寝ている部屋に戻る。布団をかけたためか、心なしか顔色がよくなった気がする。だが触れると、まだ外の空気と変わらないほどひんやりしていた。
寒くないように、少しずつ布団をめくり、温めたタオルを体にあてる。そして、手元に残ったタオルで顔を拭いていく。
顔は汚れて、黒くなってしまっていた。髪はボサボサであちこちにシラミが見える。
泥に汗に……おそらく垢。長いこと風呂に入っていないのではないかと思われる独特の臭いがした。濡れたタオルで拭ったくらいでは、きれいに落ちない。さらに別のタオルで手を拭いた。こちらも同じだ。泥に汗に垢まみれで、おまけに爪は伸び放題。次に腕をよく見てみると、おそらく痒かったのだろう。伸びた爪で掻いたからか、いくつも傷がある。あとで手当てもしてやらねばならない。
足はさらにひどかった。この寒さの中で靴どころか靴下も履いていなかったのだ。どこから来たのかはわからないが、この子どもは冷たい地面を裸足で歩いて来たらしい。おそらく短い距離ではないだろうことは、足の傷つき加減で察せられた。
剣はどうやって手当てをしようか考えながら、少しでも汚れを拭きとってやろうとする。
そこでふと思い至った。着替えもいる。今身につけているのは、おそらく大人用のTシャツであろう。薄手のもので、こんな真冬に適した格好ではない。
剣はひとまずタンスを開けて、子どもでも着られそうなものを探す。
探しながら、剣はふと、ずっと前のこと……剣がこの世に顕現したときのことを思い出していた。いきなり現れた自分に、主は名前を与えて、一緒に暮らすなら普段着も必要だと、タンスや物置をあれこれひっくり返して用意してくれたものだ。
まさか自分が、見ず知らずの子どもに同じことをするとは……ふと可笑しくなって、小さく笑うと、その声と重なるように別の声が聞こえた。
「う……ん」
首元まで布団をかけていた痩せっぽちの子どもが、小さく目を開いたのだ。
「起きたか」
声をかけたが、子どもはしばらく動かない。怯えているのだろうか。
起きて早々、知らない場所で知らない大人が横にいるのだから致し方ない。剣は枕元まで行って、まだぼんやりしている子どもの顔を覗き込む。
子どもが半分しか開かない目で、じっと剣の顔を見上げている。剣はその瞳に、思わず見入ってしまった。
子どもの瞳は、空のように澄み渡っていて、それでいて夜のように深い黒に染まっていた。
❖
水を差し出すと、子どもはゆっくりと飲んだ。一気に飲み干す力が残っていないようだ。
ぷはっと小さい声を出し飲み終えると、カラカラに乾いていた唇にわずかに潤いが戻っている。
「もう一杯いるか?」
剣が尋ねると、子どもはふるふると首を横に振る。そしてそのまま、俯いて黙り込んでしまった。チラチラと剣のほうを見るくらいで、口を開こうとしない。
(参ったな……)
いきなり知らない場所で知らない男に看病されていたのだから驚きもするだろうが……剣のほうも正直この状況に戸惑っていた。こんな状態の子どもの心を開く方法など持ち合わせていない。どうしたものかと考えあぐねていたら、子どもがカタカタ震え出した。
「そうだ。いいもの作ってやろう」
そう言って剣が立ち上がろうとすると、今度は子どもがなんだか悲しそうな顔をする。そして遠慮がちに手をもじもじと動かしている。こちらに伸ばそうかどうしようか、迷っているのだと、なんとなくわかった。
「一緒に、いたほうがいいか?」
剣が尋ねると、子どもは小さく頷く。
(寂しかったのか)
剣は胸が締めつけられるような気持ちと、頼られて心が温かくなるような気持ちを、同時に感じた。しかし、つい今しがた出会ったばかりの見知らぬ他人をそこまで信じてしまって、この子は大丈夫なのかと不安にもなった。とはいえ、危害を加える気はまったくない。一緒にいたいと言うならそうしたほうがいいのだろう。
剣は、ひとまず部屋の壁にかけておいた半纏を子どもにかけてやった。
「寒いから、これを着てな」
子どもが半纏に袖を通したところを見て、剣はその脇に自分の手を入れる。
「よっ……と」
ぐいっと一気に力を入れて抱き上げた。以前、お客さんに赤ん坊を抱っこさせてもらったときと同じ要領だ。難しくはない。
だが、抱き上げて剣は驚いた。先ほどは慌てていたために気付かなかったが、抱き上げた子どもの体は、あまりにも軽すぎた。思わず声が出そうになったのをなんとか抑える。
❖
剣が住んでいる家は、一人暮らしには少し大きい一軒家だ。主の家に、そのまま住まわせてもらっている。二階建てで部屋数もそこそこあるのだが、一人では使い切れなくて、二階は手つかずになっている。居住空間はほぼ一階のみで、それも台所、居間、自室の三か所くらいの、非常に狭い範囲しか行き来しない。
そのため、自室は台所に一番近い部屋を使っている。
台所につくと、手近な椅子に子どもを座らせて、剣は食器棚から湯呑を二つ取り出した。
保温ポットからお湯を注ぐと、今度は戸棚から白い粉を取り出す。湯呑が温まったのを確認し、中のお湯をボウルに入れ、先ほど取り出した白い粉を湯呑に入れる。そして、ボウルに出したお湯をもう一度湯呑に入れて、掻き混ぜた。
子どもは、その様子をきょとんとした表情で見つめている。剣は、ニッと口の端を持ち上げて、また湯呑に熱湯を注ぐ。そして、子どもにも見える位置でぐるぐる掻き混ぜた。すると、乳白色だった湯呑の中がどんどん透明に変わり、さらさらのお湯がとろみを帯びてきた。
「!」
子どもが驚いた表情をする。目をぱちくりさせて、湯呑の中の様子を見守っていた。
剣は最後に砂糖を入れて混ぜ、子どもの前にそっと置いた。
「さ、できたぞ。葛湯だ」
「……く……ずゆ……?」
子どもが絞り出した声は、驚くほど掠れていた。
「ああ。寒いときは、これがすごく温まるんだ。飲んでみな」
そう言って、まず剣は自分が湯呑に口をつける。ずずずっと音を立てて、葛湯を飲んだ。
「ぷは~」
剣が湯呑の中身を飲み干して一息つくと、子どもも笑って湯呑に口をつけた。
「……ひぁっ」
子どもが悲鳴に似た声を上げる。湯呑から手を放し、何か恐ろしいものでも見るような目で湯呑をじっと見つめている。
「すまん! 熱かったな。こう……ふーふーって、冷まして飲むんだ」
「ふー……?」
剣がやってみせたとおりに、子どもは少し冷ましてからもう一度口をつけた。
「~っ!」
すると、今度は瞼をめいっぱい広げて剣を見る。ほっぺたに手を置いて、目だけで何かを訴えている。剣には、言いたいことがなんとなくわかった。
とろっとしたご飯から、まっしろなけむりがもくもくと上がっていた。
そしたらけむりの上から、金色のとろとろが降ってきた。
中には、赤や緑や黄色の小さなかけらがいっぱい入って、一つ一つがキラキラ光っている。
まるで大冒険したあとに見つける、たくさんの宝石がいっぱいに詰め込まれたピカピカのたからばこだ……!
「これ……たからばこ?」
そう言ったら、ちょっと恥ずかしそうに男の人が笑うのが見えた。
けむりもなんだか美味しそうな香り。
温かくて、あまくて……お腹がきゅうっとちぢんだり、広がったりしたんだ。
❖
「このたびは、お世話になりました」
頭を上げると、少年の顔が視界に入る。少年は笑っていた。
よかった。それを見た男は、心からそう感じていた。
少年の両親もとても満足そうだ。母親のほうは、目尻にうっすらと光るものがある。
彼らが立つのは3LDKのマンションの一室。フローリングの床や、白い壁紙のあちこちに楽しい今日の出来事の名残がある。
そんな部屋で、少年とその両親、流しの料理人である男が一人、互いに向かい合っていた。
先ほどまでは少年の友人たちもいて、大騒ぎだったのだ。なんの騒ぎか……それは壁にかかった垂れ幕に書かれている。
『しょうまくん お誕生日おめでとう』
『しょうま』というのは、少年の名だ。昌磨は、頬にほんの少し赤い爛れのある顔をめいっぱいくしゃくしゃにして笑った。
「ありがとう! すっごい美味しかった!」
昌磨のその言葉を耳にして、両親は感情が溢れだしそうになっている。
「本当に助かりました。なんとお礼を言っていいか……」
「ええ、この子からこんな……『美味しい』なんて言葉が聞けて、本当にもう……!」
少年の両親から口々に賞賛されて、男はなんだかくすぐったい。人あしらいが得意ではないので、なんと言っていいかわからず、代わりにもう一度頭を下げる。
「とんでもない。そのお言葉が聞けただけで、充分です」
「おかげさまで、これまでで最高の誕生日にしてやれました。満足のいく食事など、できないと諦めていました。それなのに……」
男の言葉に少年の母親が涙ながらに答える。
「そんな諦めるなんて……これからも、何度でもお声がけください。いつでも、参ります」
男が言うと、母親は再度ハンカチを濡らす。そんな様子に気付いているのかいないのか、少年は男の手を取った。男を見上げる瞳が、キラキラ輝いていて宝石のようだ。
「ねえ、また来てくれるの? ほんとに?」
「ああ、もちろん」
「おれ、今度は……別のものも食べてみたい」
「ああ、なんだって作るとも。何が食べたいか、ちゃんと考えておいてくれよ」
「うん!」
男は、少年と指切りをした。千切れんばかりの力で約束を交わす。これだけの元気があるなら、またの機会はすぐにやってきそうだ。男はそう安堵する。
(子どもは、こうでなくちゃ)
昌磨は、生まれたときから複数のアレルギーを併発していた。
おかげで、赤ん坊の頃から厳しい食事制限をしなければならなかった。食材、調味料、添加物の有無……それらに十二分に注意を払った上で、漢方薬の服用、鍼灸治療なども行っていた。それでも、症状はなかなか改善されない。
少年はいつしか、黙々と『食べられる』メニューを流し込むだけになってしまっていた。そんな様子を心配した両親は、プロフェッショナルの力を借りることにしたのだ。
昌磨がお腹いっぱい、好きなものを食べられるパーティーメニュー。それが、この家族からの依頼だった。
「これ、今日作った料理のレシピです。よければ作ってあげてください」
ほんの少しのサービスをして、男はマンションをあとにした。
店を持たず、勤め先も持たず、客先に出向き、求めに応じて食事を提供する流しの料理人。それがこの男――剣の稼業だった。
特定の店がないから客の集まりは悪い。だが腕は確かなので、依頼を受ければ客がつく。だから剣は様々な店からの誘いをすべて断り、一匹狼の道を進んでいた。
後ろ盾のない剣を訝る客もいたが、その料理を一口、口にするとたちまち彼を見る目が変わる。気に入って、度々呼んでくれる客もいた。
手を抜いた席など一つもない。どの席でも、客が何を望むのか、真剣に向き合い、答えを出してきた。
自分は料理人だ。料理で応えるほかない。何より、自分にはそれしかできない。
男はそんな風に思っていた。
何故ならば、剣は料理人の魂から生まれたのだから。
ふわりと、剣の鼻先を白い小さな塊がかすめる。いつの間にか、雪が降り始めていた。
剣は身震いしながら、コートの襟をきゅっと引き寄せ、ふと先ほどの少年の笑顔を思い浮かべる。真っすぐで、輝いていて、そして逞しかった。未来に希望を抱いている瞳だった。
「やっぱり子どもは、悲しい思いをしちゃいけない。美味しいものを食べて、美味しい顔をしなくちゃな」
そう呟きながら、剣は思い出す。あの家にも、子どもの声が響いていた。楽しそうな声、悲しそうな声、怒った声、泣き叫ぶ声……人は赤ん坊から大人になるまでに、様々な感情を経験する。剣はそれらの声を、よく耳にしていた。
主が自分を手入れしながら子どもを叱り飛ばす声を、心地よく思っていたものだ。何故ならどんなに喧嘩をしても、自分を使ってできた料理を食べた家族は、皆、笑っていたからだ。
剣は、料理人が大切に使っていた包丁から生まれた、付喪神――あやかしとして生を受けた。だから彼は、料理を作る。ただそれだけしか知らないのだ。
❖
『剣』という名は、生みの親たる主がつけたものだ。
「包丁から生まれたということは……」
顕現した剣を見たその人……主は、眉間にしわを寄せてうんうん唸りだす。
そして、包丁 → 刃物 → 刀 → 剣
という連想クイズのノリで、男の名は『剣』に決まった。あっという間に決まったので、剣に拒否権はなかった。人間に混ざって暮らしても違和感のない名に決まったから文句はないのだが……時々もやもやする。意思を持ってともに暮らすようになってわかったことだが、主は温厚でちょっとズレていたようだ。
主の前にも、剣の本体である包丁の持ち主は二人いた。持ち主たる料理人たちは、古くは江戸時代から続く料理人一族だ。直近の主の祖父である料理人が剣を使い始め、代々その子らに引き継がれてきた。剣は持ち主であった三人だけでなく、その先祖の心意気まで受け継いでいると、思っている。
もちろん、剣を顕現させた主の心意気と腕は、最も色濃く受け継いでいる。
生粋の料理人である主が選んだ夫もまた、腕のいい料理人だった。そして、その二人の間に生まれた一人娘も、料理人を志した。
娘は今、ひとかどの料理人として歩んでいるが、剣のことは受け継がなかった。剣ではなく、父親の包丁を受け継いだからだ。
娘には何度も詫びられたし、剣自身も残念に思ったが、今はこれでよかったと思っている。こうして制約なく、自由に客のもとへ行くことができるのだから。
とはいえ、特定の店を構えていない、しかも宣伝や広告を出しているわけでもない、一料理人が毎日毎日仕事にありつけるはずもない。今日は久々の依頼だった。個人的な知り合いの紹介によって成立した仕事だったのだ。
先ほどの家族はごくごく一般的なサラリーマン家庭。受け取った謝礼は、決して高額ではない。経費と知り合いへの紹介料を引くと、少し心もとないと言える。
(まあ、今日明日ぐらいはちょいと美味いものを食べたって罰は当たらんだろう)
研究という名の食べ歩きは、料理人たる剣のライフワークだ。金があるときは誰に憚ることなく、美食の限りを尽くすと決めている。
何を食べようか……常連客の社長に頼んでおすすめの料亭に連れていってもらおうか、馴染みの小料理屋で定番から新作まで食べ尽くすか。居酒屋飯の食べ歩きもいい。ホテルのレストランのビュッフェも捨てがたい。各地のグルメフェスを点々とするのも……いや、そもそも今日は近所のパン屋が月に一度の限定メニューを出す日だ。それも見逃せない。
行きたい場所を次々思い描きながら、剣は家までの道のりを歩いた。自宅が見えると、そのそわそわした思いは一層増す。
「まだ時間はある。買い物がてらゆっくり考えるか」
ひとまず仕事道具を置いてからにしよう。そう自分を落ち着けて、剣は足早に自宅へと歩みを進める。そこで、剣は気付いた。
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その子どもは、ヨレヨレの服に身を包み、見るからに汚れている。何より剣の目を引いたのは、その子どもが――まるでマッチ棒のように、ガリガリに痩せ細っていたことだった。
か細い四肢を力なく投げ出し、うつ伏せに倒れるその子どもから、剣は目が離せなかった。
❖
いつから倒れていたのか、子どもの体はすっかり冷え切っている。だが、脈はある。
剣は考えるより先に抱き抱え、玄関をくぐって自分の部屋に運んだ。
干さずに畳んだままの布団を敷き、子どもをそこに寝かせると、台所に向かった。蒸しタオルを作るためだ。
まずは顔の汚れを拭いてやろう。汚れを拭く以外にも、脇の下などに置いて、温めてやらねばならないから、タオルがたくさん必要だ。目につくタオルを片っ端から水に濡らし、電子レンジに放り込んでいった。
タオルを持って、子どもが寝ている部屋に戻る。布団をかけたためか、心なしか顔色がよくなった気がする。だが触れると、まだ外の空気と変わらないほどひんやりしていた。
寒くないように、少しずつ布団をめくり、温めたタオルを体にあてる。そして、手元に残ったタオルで顔を拭いていく。
顔は汚れて、黒くなってしまっていた。髪はボサボサであちこちにシラミが見える。
泥に汗に……おそらく垢。長いこと風呂に入っていないのではないかと思われる独特の臭いがした。濡れたタオルで拭ったくらいでは、きれいに落ちない。さらに別のタオルで手を拭いた。こちらも同じだ。泥に汗に垢まみれで、おまけに爪は伸び放題。次に腕をよく見てみると、おそらく痒かったのだろう。伸びた爪で掻いたからか、いくつも傷がある。あとで手当てもしてやらねばならない。
足はさらにひどかった。この寒さの中で靴どころか靴下も履いていなかったのだ。どこから来たのかはわからないが、この子どもは冷たい地面を裸足で歩いて来たらしい。おそらく短い距離ではないだろうことは、足の傷つき加減で察せられた。
剣はどうやって手当てをしようか考えながら、少しでも汚れを拭きとってやろうとする。
そこでふと思い至った。着替えもいる。今身につけているのは、おそらく大人用のTシャツであろう。薄手のもので、こんな真冬に適した格好ではない。
剣はひとまずタンスを開けて、子どもでも着られそうなものを探す。
探しながら、剣はふと、ずっと前のこと……剣がこの世に顕現したときのことを思い出していた。いきなり現れた自分に、主は名前を与えて、一緒に暮らすなら普段着も必要だと、タンスや物置をあれこれひっくり返して用意してくれたものだ。
まさか自分が、見ず知らずの子どもに同じことをするとは……ふと可笑しくなって、小さく笑うと、その声と重なるように別の声が聞こえた。
「う……ん」
首元まで布団をかけていた痩せっぽちの子どもが、小さく目を開いたのだ。
「起きたか」
声をかけたが、子どもはしばらく動かない。怯えているのだろうか。
起きて早々、知らない場所で知らない大人が横にいるのだから致し方ない。剣は枕元まで行って、まだぼんやりしている子どもの顔を覗き込む。
子どもが半分しか開かない目で、じっと剣の顔を見上げている。剣はその瞳に、思わず見入ってしまった。
子どもの瞳は、空のように澄み渡っていて、それでいて夜のように深い黒に染まっていた。
❖
水を差し出すと、子どもはゆっくりと飲んだ。一気に飲み干す力が残っていないようだ。
ぷはっと小さい声を出し飲み終えると、カラカラに乾いていた唇にわずかに潤いが戻っている。
「もう一杯いるか?」
剣が尋ねると、子どもはふるふると首を横に振る。そしてそのまま、俯いて黙り込んでしまった。チラチラと剣のほうを見るくらいで、口を開こうとしない。
(参ったな……)
いきなり知らない場所で知らない男に看病されていたのだから驚きもするだろうが……剣のほうも正直この状況に戸惑っていた。こんな状態の子どもの心を開く方法など持ち合わせていない。どうしたものかと考えあぐねていたら、子どもがカタカタ震え出した。
「そうだ。いいもの作ってやろう」
そう言って剣が立ち上がろうとすると、今度は子どもがなんだか悲しそうな顔をする。そして遠慮がちに手をもじもじと動かしている。こちらに伸ばそうかどうしようか、迷っているのだと、なんとなくわかった。
「一緒に、いたほうがいいか?」
剣が尋ねると、子どもは小さく頷く。
(寂しかったのか)
剣は胸が締めつけられるような気持ちと、頼られて心が温かくなるような気持ちを、同時に感じた。しかし、つい今しがた出会ったばかりの見知らぬ他人をそこまで信じてしまって、この子は大丈夫なのかと不安にもなった。とはいえ、危害を加える気はまったくない。一緒にいたいと言うならそうしたほうがいいのだろう。
剣は、ひとまず部屋の壁にかけておいた半纏を子どもにかけてやった。
「寒いから、これを着てな」
子どもが半纏に袖を通したところを見て、剣はその脇に自分の手を入れる。
「よっ……と」
ぐいっと一気に力を入れて抱き上げた。以前、お客さんに赤ん坊を抱っこさせてもらったときと同じ要領だ。難しくはない。
だが、抱き上げて剣は驚いた。先ほどは慌てていたために気付かなかったが、抱き上げた子どもの体は、あまりにも軽すぎた。思わず声が出そうになったのをなんとか抑える。
❖
剣が住んでいる家は、一人暮らしには少し大きい一軒家だ。主の家に、そのまま住まわせてもらっている。二階建てで部屋数もそこそこあるのだが、一人では使い切れなくて、二階は手つかずになっている。居住空間はほぼ一階のみで、それも台所、居間、自室の三か所くらいの、非常に狭い範囲しか行き来しない。
そのため、自室は台所に一番近い部屋を使っている。
台所につくと、手近な椅子に子どもを座らせて、剣は食器棚から湯呑を二つ取り出した。
保温ポットからお湯を注ぐと、今度は戸棚から白い粉を取り出す。湯呑が温まったのを確認し、中のお湯をボウルに入れ、先ほど取り出した白い粉を湯呑に入れる。そして、ボウルに出したお湯をもう一度湯呑に入れて、掻き混ぜた。
子どもは、その様子をきょとんとした表情で見つめている。剣は、ニッと口の端を持ち上げて、また湯呑に熱湯を注ぐ。そして、子どもにも見える位置でぐるぐる掻き混ぜた。すると、乳白色だった湯呑の中がどんどん透明に変わり、さらさらのお湯がとろみを帯びてきた。
「!」
子どもが驚いた表情をする。目をぱちくりさせて、湯呑の中の様子を見守っていた。
剣は最後に砂糖を入れて混ぜ、子どもの前にそっと置いた。
「さ、できたぞ。葛湯だ」
「……く……ずゆ……?」
子どもが絞り出した声は、驚くほど掠れていた。
「ああ。寒いときは、これがすごく温まるんだ。飲んでみな」
そう言って、まず剣は自分が湯呑に口をつける。ずずずっと音を立てて、葛湯を飲んだ。
「ぷは~」
剣が湯呑の中身を飲み干して一息つくと、子どもも笑って湯呑に口をつけた。
「……ひぁっ」
子どもが悲鳴に似た声を上げる。湯呑から手を放し、何か恐ろしいものでも見るような目で湯呑をじっと見つめている。
「すまん! 熱かったな。こう……ふーふーって、冷まして飲むんだ」
「ふー……?」
剣がやってみせたとおりに、子どもは少し冷ましてからもう一度口をつけた。
「~っ!」
すると、今度は瞼をめいっぱい広げて剣を見る。ほっぺたに手を置いて、目だけで何かを訴えている。剣には、言いたいことがなんとなくわかった。
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