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第二章 四品目 ころころ”パンダさん”
15 宝物を並べて
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コンロの火を点け、油のたっぷり入った鍋をかける。程なくして、油からじんわりと熱気が上ってくる。手をかざすと、肌が焼かれるような感覚に見舞われる。
竹志はボウルにへばりついている豆腐を菜箸でとって、鍋の油に落としてみた。豆腐は油に落ちると、鍋の底まで着く前にふわりと浮き上がった。細かな泡を伴って、じゅわっと音を立てている。
「よし」
適温だ。そう判断した竹志は、菜箸と豆腐団子が載った大皿を手に持った。そして、天が作ったキレイなまん丸の団子を箸でとり、そっと鍋の中に鎮めた。団子は油の海の中で静かに沈んで、泡をぷちぷち浮かばせている。
竹志は同じように、他の豆腐団子も鎮めていった。鍋の中には真っ白と真っ黒が斑模様を成す団子がいくつも揺蕩っている。
それらがくっついてしまわないように、時折、菜箸で離して、泡の大きさに注意していた。
「みたい」
鍋の中を後諭旨している竹志に、天がそうお願いした。手も目も離せない竹志に代わり、野保が椅子に乗せて、鍋を見られるようにしてあげていた。
自分が作った豆腐団子がいくつも鍋の中で揚がっていく様を見た天は「ほわぁ」と感嘆の息を漏らした。
鍋の底でじゅわっと大きな音を立てて大きな泡を出していた団子たちも、やがてふわりと浮き上がってくる。ぷかぷか浮かびながら小さな泡を出す団子の表面は、真っ白からこんがりきつね色に変わっている。その表面には、やはりところどころ海苔によって黒い模様がついている。
竹志は鍋に浮かぶそれらを網で掬い上げ、キッチンペーパーを敷いた皿に置いていった。そのまま菜箸で一つ、割ってみた。すると、サクッと言う音と共に湯気が吹き上がる。きつね色の表面はカリッとしていて、その中はふんわりとしていて、豆腐の真っ白を保っていた。そして、ところどころ黒い模様ができている、まるでパンダのように。
「天ちゃんの言ってた『パンダさん』て、これかな?」
「うん、これや!」
勢いよく頷く天を見て、竹志は野保と視線を交わした。お互いに「良かった」と思っているのがわかる。
「……ねね、うれしい?」
天が、ほんの少し不安そうにそう尋ねた。窺うような目で竹志を見つめている。
そんな不安を吹き飛ばすように、竹志は大きく頷いた。
「もちろん。だから奈々ちゃんが喜んでたくさん食べられるように、残りも全部揚げちゃおう」
「うん!」
大きな皿には、天が作った豆腐の団子がまだまだたくさん載っている。竹志はそれら一つ一つを、そっと掴んで油に沈めた。
壊さないように、丁寧に、宝物に触れるように。そっと鍋底に沈んでいった真っ白な豆腐は、やがて黄金色の宝石のようになって天の前に浮かび上がってくる。
いつしか白い団子の皿は空になり、黄金色の団子の皿が埋まっていった。そこに並ぶのは黄金か、琥珀か。いや、そう呼ぶには黒い模様が目立つ。
そこにいるのはやはり『パンダさん』だった。
「うん。この方がより『ころころパンダさん』と呼べるんじゃないか?」
千鶴子の作っていたものはラグビーボールに近い形だった。今出来上がったものは、まん丸のボール型であり、まさしく”ころころ”だった。城と黒の混ざり具合もパンダのそれとよく似ている。
竹志は野保と天と目を見交わして、大きく宣言した。
「できました! これが天ちゃんの言ってた『ころころパンダさん』です!」
誰ともなく、互いに拍手を交わした。
そうしていると、玄関の方で音が聞こえた。次いで聞こえたのは……
「ただいまー」
晶の声だ。きっと、その後ろには奈々もいるに違いない。
「よし、じゃあご飯にしましょうか」
竹志は、意気揚々と出迎えに行くのだった。
竹志はボウルにへばりついている豆腐を菜箸でとって、鍋の油に落としてみた。豆腐は油に落ちると、鍋の底まで着く前にふわりと浮き上がった。細かな泡を伴って、じゅわっと音を立てている。
「よし」
適温だ。そう判断した竹志は、菜箸と豆腐団子が載った大皿を手に持った。そして、天が作ったキレイなまん丸の団子を箸でとり、そっと鍋の中に鎮めた。団子は油の海の中で静かに沈んで、泡をぷちぷち浮かばせている。
竹志は同じように、他の豆腐団子も鎮めていった。鍋の中には真っ白と真っ黒が斑模様を成す団子がいくつも揺蕩っている。
それらがくっついてしまわないように、時折、菜箸で離して、泡の大きさに注意していた。
「みたい」
鍋の中を後諭旨している竹志に、天がそうお願いした。手も目も離せない竹志に代わり、野保が椅子に乗せて、鍋を見られるようにしてあげていた。
自分が作った豆腐団子がいくつも鍋の中で揚がっていく様を見た天は「ほわぁ」と感嘆の息を漏らした。
鍋の底でじゅわっと大きな音を立てて大きな泡を出していた団子たちも、やがてふわりと浮き上がってくる。ぷかぷか浮かびながら小さな泡を出す団子の表面は、真っ白からこんがりきつね色に変わっている。その表面には、やはりところどころ海苔によって黒い模様がついている。
竹志は鍋に浮かぶそれらを網で掬い上げ、キッチンペーパーを敷いた皿に置いていった。そのまま菜箸で一つ、割ってみた。すると、サクッと言う音と共に湯気が吹き上がる。きつね色の表面はカリッとしていて、その中はふんわりとしていて、豆腐の真っ白を保っていた。そして、ところどころ黒い模様ができている、まるでパンダのように。
「天ちゃんの言ってた『パンダさん』て、これかな?」
「うん、これや!」
勢いよく頷く天を見て、竹志は野保と視線を交わした。お互いに「良かった」と思っているのがわかる。
「……ねね、うれしい?」
天が、ほんの少し不安そうにそう尋ねた。窺うような目で竹志を見つめている。
そんな不安を吹き飛ばすように、竹志は大きく頷いた。
「もちろん。だから奈々ちゃんが喜んでたくさん食べられるように、残りも全部揚げちゃおう」
「うん!」
大きな皿には、天が作った豆腐の団子がまだまだたくさん載っている。竹志はそれら一つ一つを、そっと掴んで油に沈めた。
壊さないように、丁寧に、宝物に触れるように。そっと鍋底に沈んでいった真っ白な豆腐は、やがて黄金色の宝石のようになって天の前に浮かび上がってくる。
いつしか白い団子の皿は空になり、黄金色の団子の皿が埋まっていった。そこに並ぶのは黄金か、琥珀か。いや、そう呼ぶには黒い模様が目立つ。
そこにいるのはやはり『パンダさん』だった。
「うん。この方がより『ころころパンダさん』と呼べるんじゃないか?」
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竹志は野保と天と目を見交わして、大きく宣言した。
「できました! これが天ちゃんの言ってた『ころころパンダさん』です!」
誰ともなく、互いに拍手を交わした。
そうしていると、玄関の方で音が聞こえた。次いで聞こえたのは……
「ただいまー」
晶の声だ。きっと、その後ろには奈々もいるに違いない。
「よし、じゃあご飯にしましょうか」
竹志は、意気揚々と出迎えに行くのだった。
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