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第二章 一品目 ”ぽろぽろ”ごはん
12 二つのレシピ
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「どれが一番美味しい?」
「えっとな、えっとな……全部美味しいねん。だから天ちゃん、毎日残さへんねんで」
これには、竹志を含めた全員が拍手した。
「そうか、偉いぞ。いっぱい食べるのは元気な証拠だ」
「残さず食べたくなるご飯を作れる奈々ちゃんも、すごいわ」
野保と晶に、それぞれ褒められると、姉弟はまたそれぞれの反応を示した。天はえっへんと嬉しそうに胸を張り、奈々は何故だか余計に俯いてしまった。
奈々の自信に繋がればいいと思ったのだが……どうも逆効果だったようだ。
「えーと……あ、そうだ、天ちゃん。同じように、粘土で『ぽろぽろ』作ってみてくれないかな?」
竹志は天と目線を合わせて、頼んでみた。こんなことを頼めば、自分が『ぽろぽろ』を作れないことがバレてしまうかもしれない。そうなればガッカリさせてしまうが……うまく聞き出せれば無事に『ぽろぽろ』を作れる。賭けではあったが、同時に大きなヒントを得られるチャンスだ。
内心でハラハラしながら天の返答を待っていると……
「ええよ!」
天は、ニッコリと笑って頷いた。どうやら『ねねの朝ご飯』を大絶賛されて気を良くしているらしい。ホッとしながら、竹志は天の手元に注目した。
天は嬉々として、先ほどのメニューに使った粘土を元の場所に戻していった。すべてが最初の状態に戻ると、改めて粘土を取り出した。手に取ったのは……白の粘土だ。粘土を2つちぎって、こねて、伸ばす。次に茶色の粘土を取って、今度は細く長ーくこねていく。紐のようになったら、今度はナイフのような道具を取り出し、小さく切り分けていく。小さなぽろぽろしたそれらを白い粘土の上にぱらぱらとかけて、最後にもう一つの白い粘土を上に載せると「できた!」と言う。
「これが『ぽろぽろ』のご飯……?」
確かに、何かしらぽろぽろしたものを使っている。
(白いのって、さっきはご飯だったよな。最初に言ってたみたいに、白いご飯の上に、茶色い『ぽろぽろ』をふりかけてたってことかな?)
茶色い、ぽろぽろした、ふりかけるもの……そう考えて記憶を探っていると、ふと、とあるページの記述に行き着いた。
竹志は急いで『はてなのレシピノート』をめくり、そのページを見つけ出した。次いで奈々が持つノートのページをめくり、見比べる。
「もしかして『ぽろぽろ』って……これじゃないかな?」
竹志は二冊のノートを並べて奈々に見せた。奈々もまた、二つのレシピをよく見比べて、そして小さく頷いた。
「これ、作ってくれたことあると思います」
奈々にそう言って貰もらい、竹志の中で確信が持てた。これで、作ることが出来る。
「よし、やろうか。天ちゃんの言う『ぽろぽろご飯』……!」
「えっとな、えっとな……全部美味しいねん。だから天ちゃん、毎日残さへんねんで」
これには、竹志を含めた全員が拍手した。
「そうか、偉いぞ。いっぱい食べるのは元気な証拠だ」
「残さず食べたくなるご飯を作れる奈々ちゃんも、すごいわ」
野保と晶に、それぞれ褒められると、姉弟はまたそれぞれの反応を示した。天はえっへんと嬉しそうに胸を張り、奈々は何故だか余計に俯いてしまった。
奈々の自信に繋がればいいと思ったのだが……どうも逆効果だったようだ。
「えーと……あ、そうだ、天ちゃん。同じように、粘土で『ぽろぽろ』作ってみてくれないかな?」
竹志は天と目線を合わせて、頼んでみた。こんなことを頼めば、自分が『ぽろぽろ』を作れないことがバレてしまうかもしれない。そうなればガッカリさせてしまうが……うまく聞き出せれば無事に『ぽろぽろ』を作れる。賭けではあったが、同時に大きなヒントを得られるチャンスだ。
内心でハラハラしながら天の返答を待っていると……
「ええよ!」
天は、ニッコリと笑って頷いた。どうやら『ねねの朝ご飯』を大絶賛されて気を良くしているらしい。ホッとしながら、竹志は天の手元に注目した。
天は嬉々として、先ほどのメニューに使った粘土を元の場所に戻していった。すべてが最初の状態に戻ると、改めて粘土を取り出した。手に取ったのは……白の粘土だ。粘土を2つちぎって、こねて、伸ばす。次に茶色の粘土を取って、今度は細く長ーくこねていく。紐のようになったら、今度はナイフのような道具を取り出し、小さく切り分けていく。小さなぽろぽろしたそれらを白い粘土の上にぱらぱらとかけて、最後にもう一つの白い粘土を上に載せると「できた!」と言う。
「これが『ぽろぽろ』のご飯……?」
確かに、何かしらぽろぽろしたものを使っている。
(白いのって、さっきはご飯だったよな。最初に言ってたみたいに、白いご飯の上に、茶色い『ぽろぽろ』をふりかけてたってことかな?)
茶色い、ぽろぽろした、ふりかけるもの……そう考えて記憶を探っていると、ふと、とあるページの記述に行き着いた。
竹志は急いで『はてなのレシピノート』をめくり、そのページを見つけ出した。次いで奈々が持つノートのページをめくり、見比べる。
「もしかして『ぽろぽろ』って……これじゃないかな?」
竹志は二冊のノートを並べて奈々に見せた。奈々もまた、二つのレシピをよく見比べて、そして小さく頷いた。
「これ、作ってくれたことあると思います」
奈々にそう言って貰もらい、竹志の中で確信が持てた。これで、作ることが出来る。
「よし、やろうか。天ちゃんの言う『ぽろぽろご飯』……!」
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