殿下、恋はデスゲームの後でお願いします

真鳥カノ

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 カイの宣言通り、それからは目の回る忙しさだった。
 エステルは商会の名で出資をしたものの、現状、別の取引が山積みであり、とてもカイの医院作りに協力できる余裕はなかった。
 それすらも、カイは喜んで二人分働くと請け負ったのだ。元々は自分の立案なのだからと言って。
 エステルの代わりにカイに協力したのは、レアはもちろんのこと、マティアスもだった。
「俺は候補者たちの間をフラフラしてるだけだからね」
 ……などと陽気に言っていた。
 そういえば、マティアスも同じ候補者のはずなのに、何か自分の評価を上げる工作をしている気配がない。カイの手伝いをしているところはよく見るのだけど……。それに、他にも疑問に思うことはいくつかある。あるのだが、何故かいつもはぐらかされてしまうのだった。
(知る必要ができたら教えてくれるのかしら)
 彼らを深く知ろうとするのは、諦めていた。どうせ自分は、幸運を分け与えるだけの役目。彼の本当のパートナーにはなり得ないのだから。
 実際、難しい手続きはすべてマティアスが行っていた。カイとは行動を共にしているが、付き添うだけ。
 レアにできることは、何もないのだった。それどころか……
「貴女は、帰りたいと思うか?」
 唐突に、そんなことを聞かれてしまった。
「カイ様、なぜそんなことを?」
「この王位継承争いも佳境だ。無事に勝ち抜くことができれば、貴女にいてもらう必要もなくなる。帰りたいと思っているなら、無理に王都に押しとどめておくこともないかと思ってな」
 もしかして、気遣ってくれているんだろうか。
「……今は、まだわかりません。終わってから考えてもいいでしょうか」
「ああ」
 レアが、カイにとって用済みになる瞬間が、近づいている。そう感じてしまった。
 本当にカイが王位に就くのなら、その妻は王妃となる。辺境の子爵令嬢につとまる役目じゃない。側妃になる選択肢もあるが、傍にいる必要がない以上、生家に戻ることになるだろう。
(まぁ……お約束の報酬は頂けるのだろうし……いいか)
 今できることといったら、積み上がった書類の整理か、お茶を淹れることくらい。そっと部屋を出て、厨房に向かっていると、カイについている監視官が歩いてきた。レアには目もくれずに、いれかわりで 執務室に入っていく。
(どうしたのかしら。なんだか焦っていたような……)
 その時の予感は、結果として当たっていた。お茶を淹れて戻った瞬間に、それがわかった。
「……やられた」
 書類を握りつぶして、呻くようにそう言うカイを、レアは怪訝な顔で見るしかできなかった。カイの言を継いだのは、監視官だった。
「奥方ならば、お見せしてもいいでしょう」
 監視官はカイの持っていた書類を、そのままレアへと渡した。ぐしゃぐしゃになったしわを伸ばして書面に目を通すと、きっとカイが抱いているのと同じであろう感情が、沸々と湧き起こってきた。
「マティアス様とエステル様が……!?」
 書面には、大きな文字が躍っていた。

『エステル=シルヴォラおよびマティアス=アラヤの両名に市民医療の発展に大きく貢献した功績を認め、評価を改めることとする』
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