95 / 111
Chapter6 約束
7
しおりを挟む
「何ですか?」
そう言うと、一旦離れて、リスト端末を操作した。そして私と彼の間に、『実験リスト』を表示させる。
さっき加地くんや弓槻さんたちと話し合って、項目がだいぶ増えている。その、最後にもう一行付け足した。
「これは……」
「これを実行するのは、私だけ。ナオヤくんも、弓槻さんも加地くんも、やる必要はない。だけど……勇気がほしい。一人だけじゃ、できないかもしれないから」
リストと、私と、ナオヤくんは交互に見て、ほんの少し眉を下げていた。色々と、心配をかけているんだろうと思う。
だけど、私がやらなきゃいけないことだ。そして、ナオヤくんとおばさんの姿を見て、私も立ち向かわないといけないと、そう思った。
勝手なお願いだったかと、不安になって顔を上げると、そこにはナオヤくんの穏やかな笑みが待っていた。清流のような、曇りのない面持ちだった。
「僕の勇気なんて、あなたに比べれば微々たるものだ。それでも良ければ、ありったけ持って行って構いません」
そう言うと、今度はナオヤくんが大きく両手を広げて、私をまるごとすっぽりと腕に収めてしまった。そのまま、ぎゅぅっと、力一杯締め付ける。
「うっ……痛い痛い! 強い!」
「ありったけの勇気なので」
「ありったけじゃなくていいよ。ちょっとでいい、ちょっとで!」
笑い声と共に、ほんの少し腕が緩まる。一瞬絞め殺されるかと思ってじろりと睨み上げるけど、すぐに、やっぱり笑ってしまった。
片手でリスト端末を操作する。もう一つの、二人だけのファイルをそっと開いて、指でそっと、3本線を引いた。
リストに残っていたうちの、3つ。
『きれいな夕日を見る』『強く抱きしめる』『心から「好きだ」と言う』……この、3つに。
「……どうか、頑張って」
「うん……ありがとう」
そう答えて、私は……私たちは、お互いにもう一度強く、互いの温もりをその腕に刻みつけた。
そう言うと、一旦離れて、リスト端末を操作した。そして私と彼の間に、『実験リスト』を表示させる。
さっき加地くんや弓槻さんたちと話し合って、項目がだいぶ増えている。その、最後にもう一行付け足した。
「これは……」
「これを実行するのは、私だけ。ナオヤくんも、弓槻さんも加地くんも、やる必要はない。だけど……勇気がほしい。一人だけじゃ、できないかもしれないから」
リストと、私と、ナオヤくんは交互に見て、ほんの少し眉を下げていた。色々と、心配をかけているんだろうと思う。
だけど、私がやらなきゃいけないことだ。そして、ナオヤくんとおばさんの姿を見て、私も立ち向かわないといけないと、そう思った。
勝手なお願いだったかと、不安になって顔を上げると、そこにはナオヤくんの穏やかな笑みが待っていた。清流のような、曇りのない面持ちだった。
「僕の勇気なんて、あなたに比べれば微々たるものだ。それでも良ければ、ありったけ持って行って構いません」
そう言うと、今度はナオヤくんが大きく両手を広げて、私をまるごとすっぽりと腕に収めてしまった。そのまま、ぎゅぅっと、力一杯締め付ける。
「うっ……痛い痛い! 強い!」
「ありったけの勇気なので」
「ありったけじゃなくていいよ。ちょっとでいい、ちょっとで!」
笑い声と共に、ほんの少し腕が緩まる。一瞬絞め殺されるかと思ってじろりと睨み上げるけど、すぐに、やっぱり笑ってしまった。
片手でリスト端末を操作する。もう一つの、二人だけのファイルをそっと開いて、指でそっと、3本線を引いた。
リストに残っていたうちの、3つ。
『きれいな夕日を見る』『強く抱きしめる』『心から「好きだ」と言う』……この、3つに。
「……どうか、頑張って」
「うん……ありがとう」
そう答えて、私は……私たちは、お互いにもう一度強く、互いの温もりをその腕に刻みつけた。
10
お気に入りに追加
4
あなたにおすすめの小説
『覇王アンシュラオンの異世界スレイブサーガ』 (旧名:欠番覇王の異世界スレイブサーガ)
園島義船(ぷるっと企画)
ファンタジー
★【重要】しばらくは本家の「小説家になろう」のほうだけの更新となります★
―――――――――――――――――――――――
【燃焼系世界】に転生した少年の、バトルあり、ほのぼのあり、シリアスあり、ギャグありのバトル系ハーレム物語(+最強姉)。
生まれ変わったら、「姉とイチャラブして暮らしたい。ついでに強い力で守ってあげて、頼られたい」。姉属性大好きの元日本人のアンシュラオンは、そんな願いをもって転生したものの、生まれた異世界にいた姉は、最高の資質を持つはずの自分すら超える【最強の姉】であった。
激しく溺愛され、その重い愛で貞操すら(過去に自ら喜んで)奪われ、半ば家畜同然に暮らしていたが、ようやく逃げ出すことに成功する。常に支配され続け、激しいトラウマを負った彼が次に求めるのは、「従順な女性とイチャラブしたい」という願望。そこで目をつけたのがスレイブ(奴隷)である。
「そうだ。スレイブならば、オレを支配しないはずだ。何でも言うことを聞いてくれるし」
そんな単純で不純な動機でスレイブに手を染めるのだが、それが彼の運命を大きく変えていくことになる。
覇王アンシュラオンと『災厄の魔人』である最強姉のパミエルキが織り成す、異世界バトルハーレムファンタジー!
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
ここはフロンティア。安っぽい倫理観などなく、暴力と金だけが物を言う魔獣溢れる未開の大地。嫌いなやつを殺すことも自由。奪うのも自由。誰かを愛するのも自由。誰かを助けるのも自由。そんな中で好き勝手に生きる少年が、お姉さんとイチャついたり、女の子たちを優遇したり、おっさんと仲良くしたり、商売を始めたり、都市や国を創ったり、魔獣を飼い慣らしたりする物語。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
※しばらく毎日更新予定。最低でも【午前一時】に1話アップ
※よろしければ評価、ブックマークよろしくお願いします(=^^=)
※以前のもの「欠番覇王の異世界スレイブサーガ」とは異なる新バージョンです。草案に基づいてリメイク、違う展開の新版として再スタートしています!旧版は作者HPで掲載しています。
〇小説家になろう、カクヨムでも同時連載しています。
https://ncode.syosetu.com/n7933hg/
https://kakuyomu.jp/works/16816700429162584988
〇HP
https://puruttokikaku.com/
〇ブログ
https://puruttokikaku.muragon.com/
【短編集】或るシンガーソングライターの憂鬱/或るシングルマザーの憂鬱
ふうこジャスミン
ライト文芸
●【連載中】「或るシンガーソングライターの憂鬱」
闇堕ちした元シンガーソングライターの、変人たちに囲まれた平凡な日常
●【完結】「或るシングルマザーの憂鬱」シングルマザーの小北紗季は、職場の変人メガネ男と恋愛関係に発展するか!?
【本編完結】異世界再建に召喚されたはずなのにいつのまにか溺愛ルートに入りそうです⁉︎
sutera
恋愛
仕事に疲れたボロボロアラサーOLの悠里。
遠くへ行きたい…ふと、現実逃避を口にしてみたら
自分の世界を建て直す人間を探していたという女神に
スカウトされて異世界召喚に応じる。
その結果、なぜか10歳の少女姿にされた上に
第二王子や護衛騎士、魔導士団長など周囲の人達に
かまい倒されながら癒し子任務をする話。
時々ほんのり色っぽい要素が入るのを目指してます。
初投稿、ゆるふわファンタジー設定で気のむくまま更新。
2023年8月、本編完結しました!以降はゆるゆると番外編を更新していきますのでよろしくお願いします。
エッセイのプロムナード
多谷昇太
ライト文芸
題名を「エッセイのプロムナード」と付けました。河畔を散歩するようにエッセイのプロムナードを歩いていただきたく、そう命名したのです。歩く河畔がさくらの時期であったなら、川面には散ったさくらの花々が流れているやも知れません。その行く(あるいは逝く?)花々を人生を流れ行く無数の人々の姿と見るならば、その一枚一枚の花びらにはきっとそれぞれの氏・素性や、個性と生き方がある(あるいはあった)ことでしょう。この河畔があたかも彼岸ででもあるかのように、おおらかで、充たされた気持ちで行くならば、その無数の花々の「斯く生きた」というそれぞれの言挙げが、ひとつのオームとなって聞こえて来るような気さえします。この仏教の悟りの表出と云われる聖音の域まで至れるような、心の底からの花片の声を、その思考や生き様を綴って行きたいと思います。どうぞこのプロムナードを時に訪れ、歩いてみてください…。
※「オーム」:ヘルマン・ヘッセ著「シッダールタ」のラストにその何たるかがよく描かれています。
幕張地下街の縫子少女 ~白いチューリップと画面越しの世界~
海獺屋ぼの
ライト文芸
千葉県千葉市美浜区のとある地下街にある「コスチュームショップUG」でアルバイトする鹿島香澄には自身のファッションブランドを持つという夢があった。そして彼女はその夢を叶えるために日々努力していた。
そんなある日。香澄が通う花見川服飾専修学園(通称花見川高校)でいじめ問題が持ち上がった。そして香澄は図らずもそのいじめの真相に迫ることとなったーー。
前作「日給二万円の週末魔法少女」に登場した鹿島香澄を主役に服飾専門高校内のいじめ問題を描いた青春小説。
あなたとの離縁を目指します
たろ
恋愛
いろんな夫婦の離縁にまつわる話を書きました。
ちょっと切ない夫婦の恋のお話。
離縁する夫婦……しない夫婦……のお話。
明るい離縁の話に暗い離縁のお話。
短編なのでよかったら読んでみてください。
煩わしきこの日常に悲観
さおしき
ライト文芸
高校に入学するとき、誰もが憧れを抱いて入学するだろう。ただ、その憧れはすぐに消え去ってしまう。
俺、明坂翔(あけさかかける)は今日で高校生。重い制服を来て、友人の雨宮彼方(あめみやかなた)と初登校を迎えていた。入学後、些細な縁で俺はクラスメイトの嶋田葉月(しまだはづき)と出会い、話すようになる。
そこである日、俺は葉月の思いつきに巻き込まれていく。その一番最初が部活を設立することだった。いきなり俺は部員集めを強要され、彼方、そして幼馴染みの最上雫(もがみしずく)の二人を集めることに成功したが……
婚約破棄されなかった者たち
ましゅぺちーの
恋愛
とある学園にて、高位貴族の令息五人を虜にした一人の男爵令嬢がいた。
令息たちは全員が男爵令嬢に本気だったが、結局彼女が選んだのはその中で最も地位の高い第一王子だった。
第一王子は許嫁であった公爵令嬢との婚約を破棄し、男爵令嬢と結婚。
公爵令嬢は嫌がらせの罪を追及され修道院送りとなった。
一方、選ばれなかった四人は当然それぞれの婚約者と結婚することとなった。
その中の一人、侯爵令嬢のシェリルは早々に夫であるアーノルドから「愛することは無い」と宣言されてしまい……。
ヒロインがハッピーエンドを迎えたその後の話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる