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Chapter5 あなたたちとは違う
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「俺は、めちゃくちゃ感謝してる。ドナーがいてくれたおかげで、俺が今、ここにいるんだからさ。ただ……そのドナーの人はさ、可哀想で……」
加地くんに移植されたのは心臓らしい。ということは、もとの主は心臓を失うということ。もしくは、心臓を必要としなくなっていたか……。
「俺に心臓をくれた人……たぶんヒトミとオリジナルの人と、同じだったみたいだ。生まれてすぐにクローン生成されて、いざと言うときの、スペア……みたいな?」
私を気遣うように、加地くんは言う。気にしないでと仕草で伝えたけれど、やっぱり申し訳なさそうな顔のまま、続けていた。
「聞いた話だと、オリジナルとクローン、二人同時に事故に遭って、オリジナルは命に別状はなかったけどだいぶ重傷で、クローンの方は体は無事だけど、脳死状態になったんだと。その時はまだ法律が改正されてなかったから、クローンからの移植は可能だった。それでオリジナルに必要な内臓とか色々移植して……残った心臓をどうするかって話で、ドナーとして見知らぬ別の子どもに贈るってことになったらしいんだ」
そして、加地くんは自分で自分を、指さした。
「それが、俺」
そこに浮かんだ笑みは、今まで見たことがないような、悲しげな笑みだった。笑っているけど、悲しみが溢れて隠しきれない……そんな顔をしている。
「俺は今、こうして元気に楽しくやってるけどさ。この心臓の持ち主はどうだったんだろうって、考えずにいられないんだよね。事故は仕方ないにしてもさ……当然のようにオリジナルに体を渡されて、挙げ句知らない他人にまで……同じように生きてたはずなのに、その違いは何なんだろうって」
そして、そっとボタンを閉じて、まっすぐな視線を向けた。
「でも……どれだけ考えても、わからない。本人はもう、いないからさ。だから俺は、目の前にいるクローンだっていう人の、力になりたいって思ったんだ。俺は人生まるごと救われたんだから、それくらい当然だろ。……って、何ができるのか、全然わかんないけどさ」
加地くんはそう言って、照れ隠しのように笑う。
笑って誤魔化すのに、その言葉の、なんて力強いんだろう。なんとなく確信めいたものを感じていた。この人はきっと、たくさんの人を勇気づけて、大勢の人を助けていくんだろうって。
今、私が胸を熱くしているように。
「だからさ……ヒトミがクローンだから、オリジナルの影だからって、自分から引っ込んじゃうのは、ダメだ。友達として、そんなことしないでほしいって……そう思う」
加地くんも弓槻さんも、まっすぐに私を見つめてくれる。二人の心からの言葉なんだと、わかる。
こうまでまっすぐに言葉を向けてくれる人が二人もいる。なんて、幸せなんだろう。二人の優しさが胸に染み渡り、全身を温かく駆け巡っていく。
同時に、同じ言葉でも両親の顔が浮かぶと、その温かさが急激に冷えていくのがわかった。
(加地くんと弓槻さんに言われると嬉しい。でも、お父さんには、言われたくない……!)
その思いだけは、どうしても拭い去ることができずにいた。
加地くんに移植されたのは心臓らしい。ということは、もとの主は心臓を失うということ。もしくは、心臓を必要としなくなっていたか……。
「俺に心臓をくれた人……たぶんヒトミとオリジナルの人と、同じだったみたいだ。生まれてすぐにクローン生成されて、いざと言うときの、スペア……みたいな?」
私を気遣うように、加地くんは言う。気にしないでと仕草で伝えたけれど、やっぱり申し訳なさそうな顔のまま、続けていた。
「聞いた話だと、オリジナルとクローン、二人同時に事故に遭って、オリジナルは命に別状はなかったけどだいぶ重傷で、クローンの方は体は無事だけど、脳死状態になったんだと。その時はまだ法律が改正されてなかったから、クローンからの移植は可能だった。それでオリジナルに必要な内臓とか色々移植して……残った心臓をどうするかって話で、ドナーとして見知らぬ別の子どもに贈るってことになったらしいんだ」
そして、加地くんは自分で自分を、指さした。
「それが、俺」
そこに浮かんだ笑みは、今まで見たことがないような、悲しげな笑みだった。笑っているけど、悲しみが溢れて隠しきれない……そんな顔をしている。
「俺は今、こうして元気に楽しくやってるけどさ。この心臓の持ち主はどうだったんだろうって、考えずにいられないんだよね。事故は仕方ないにしてもさ……当然のようにオリジナルに体を渡されて、挙げ句知らない他人にまで……同じように生きてたはずなのに、その違いは何なんだろうって」
そして、そっとボタンを閉じて、まっすぐな視線を向けた。
「でも……どれだけ考えても、わからない。本人はもう、いないからさ。だから俺は、目の前にいるクローンだっていう人の、力になりたいって思ったんだ。俺は人生まるごと救われたんだから、それくらい当然だろ。……って、何ができるのか、全然わかんないけどさ」
加地くんはそう言って、照れ隠しのように笑う。
笑って誤魔化すのに、その言葉の、なんて力強いんだろう。なんとなく確信めいたものを感じていた。この人はきっと、たくさんの人を勇気づけて、大勢の人を助けていくんだろうって。
今、私が胸を熱くしているように。
「だからさ……ヒトミがクローンだから、オリジナルの影だからって、自分から引っ込んじゃうのは、ダメだ。友達として、そんなことしないでほしいって……そう思う」
加地くんも弓槻さんも、まっすぐに私を見つめてくれる。二人の心からの言葉なんだと、わかる。
こうまでまっすぐに言葉を向けてくれる人が二人もいる。なんて、幸せなんだろう。二人の優しさが胸に染み渡り、全身を温かく駆け巡っていく。
同時に、同じ言葉でも両親の顔が浮かぶと、その温かさが急激に冷えていくのがわかった。
(加地くんと弓槻さんに言われると嬉しい。でも、お父さんには、言われたくない……!)
その思いだけは、どうしても拭い去ることができずにいた。
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