君はプロトタイプ

真鳥カノ

文字の大きさ
上 下
38 / 111
Chapter3 『愛』と『ヒトミ』

10

しおりを挟む
 四人でリビングに戻ったものの、さっきの話の続きを改めて始めるのは気恥ずかしくて、誰も何も言えずにいた。
 コーヒーをすする音だけが、リビングに響く。これを飲み終えると、きっとナオヤくんはおかわりを淹れに行く。すると今の均衡が崩れてしまう。
 なんとか、その前に何か話し始めないと……!
「……先ほどの話ですが」
 口火を切ったのは、なんとナオヤくん。しかも、一番気にしている話題だ。
「さ、先ほどの話って何だよ?」
「天宮さんと普通に友達でいる……と言っていた件です」
「深海くんも聞いてたの?」
「お二人は声が大きいので」
 それもあるけれど、ナオヤくんの気配が薄すぎるのも原因の一つだとは思う。
 そして動揺する空気を切り裂くように、ナオヤくんは続けた。
「お二人は、天宮さんがクローンか否か関係なく友達でいると、そういうことですよね?」
「え、あぁ……うん」
 こうもはっきり言われてしまうと、肯定してもらってるのにお互い目を合わせられなくなる……。不思議な空気だ。
「そこに、僕は含まれるでしょうか?」
「……へ?」
 目を逸らせていた私を含む三人が、全員、一斉にナオヤくんを見た。自分が不思議なことを言った自覚がないらしいナオヤくんは、まじまじと三人を見つめ返している。
「えーと……当たり前っていうか……」
「深海くんのことは、話題に上がってなかったから、言うまでもなかったっていうか?」
 と言うより、どうして今までの話で、自分だけのけ者にされると思ったんだろう。
「そうですか。ありがとうございます。これからも、どうぞよろしくお願いします」
「こ、こちらこそ」
 加地くんと弓槻さんが、きょとんとしながら恭しく頭を下げた。何でお辞儀をしているのか、よくわかっていないみたいだ。
 私も、よくわからない。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

Leaf Memories 〜想いの樹木〜

本棚に住む猫(アメジストの猫又)
ライト文芸
──── 誰かの想い、誰かの記憶の葉を実らせた大きな樹木です。 誰にも見つけることが出来ない樹木は、いつか、誰にも分からない気持ち、誰にでも分かる気持ちを抱えた記憶と想いを、誰かに見つけてもらえるように、今日もひっそりと木の葉を揺らしてあなたを待っています。 ──── これは、私の短編小説を書き遺すものです。 皆さんは、連想ゲームというのを知っていますか? 1つの単語、あるいは言葉を中心に、想像出来る事や、言葉を並べていってそこからまた想像出来るものを書いていくという繰り返し。 全体を見ると、葉っぱをつけた木のように見える様です。 この短編小説集は、連想ゲームではありませんが、沢山の小説を葉っぱに見立てて、その登場人物達の記憶を、《記憶と想いの葉》として記録した不思議な短編小説集です。 続きが気になる!という所で終わっていたり、結末や登場人物がこの先どうなるのかではなく、その時の《想い》を中心にしたもので、小説が終わる事は後その《想い》が変化したり展開が変わるんだと、感じていただければ幸いです♪ 短編小説は書いて投稿したことがありませんが、どうか、少しでも楽しんでもらえれば幸いです♪ 2週に1回の金曜日、8時に投稿する予定です♪ 供給が追いつかないこともあるので、投稿が途絶える可能性もあります! ご了承くださいっ!

蝶の羽ばたき

蒼キるり
ライト文芸
美羽は中学で出会った冬真ともうじき結婚する。あの頃の自分は結婚なんて考えてもいなかったのに、と思いながら美羽はまだ膨らんでいないお腹の中にある奇跡を噛み締める。そして昔のことを思い出していく──

あなたとの離縁を目指します

たろ
恋愛
いろんな夫婦の離縁にまつわる話を書きました。 ちょっと切ない夫婦の恋のお話。 離縁する夫婦……しない夫婦……のお話。 明るい離縁の話に暗い離縁のお話。 短編なのでよかったら読んでみてください。

婚約破棄されなかった者たち

ましゅぺちーの
恋愛
とある学園にて、高位貴族の令息五人を虜にした一人の男爵令嬢がいた。 令息たちは全員が男爵令嬢に本気だったが、結局彼女が選んだのはその中で最も地位の高い第一王子だった。 第一王子は許嫁であった公爵令嬢との婚約を破棄し、男爵令嬢と結婚。 公爵令嬢は嫌がらせの罪を追及され修道院送りとなった。 一方、選ばれなかった四人は当然それぞれの婚約者と結婚することとなった。 その中の一人、侯爵令嬢のシェリルは早々に夫であるアーノルドから「愛することは無い」と宣言されてしまい……。 ヒロインがハッピーエンドを迎えたその後の話。

百々五十六の小問集合

百々 五十六
ライト文芸
不定期に短編を上げるよ ランキング頑張りたい!!! 作品内で、章分けが必要ないような作品は全て、ここに入れていきます。 毎日投稿頑張るのでぜひぜひ、いいね、しおり、お気に入り登録、よろしくお願いします。

この感情を何て呼ぼうか

逢坂美穂
ライト文芸
大切だから、目を背けていたんだ。

エッセイのプロムナード

多谷昇太
ライト文芸
題名を「エッセイのプロムナード」と付けました。河畔を散歩するようにエッセイのプロムナードを歩いていただきたく、そう命名したのです。歩く河畔がさくらの時期であったなら、川面には散ったさくらの花々が流れているやも知れません。その行く(あるいは逝く?)花々を人生を流れ行く無数の人々の姿と見るならば、その一枚一枚の花びらにはきっとそれぞれの氏・素性や、個性と生き方がある(あるいはあった)ことでしょう。この河畔があたかも彼岸ででもあるかのように、おおらかで、充たされた気持ちで行くならば、その無数の花々の「斯く生きた」というそれぞれの言挙げが、ひとつのオームとなって聞こえて来るような気さえします。この仏教の悟りの表出と云われる聖音の域まで至れるような、心の底からの花片の声を、その思考や生き様を綴って行きたいと思います。どうぞこのプロムナードを時に訪れ、歩いてみてください…。 ※「オーム」:ヘルマン・ヘッセ著「シッダールタ」のラストにその何たるかがよく描かれています。

シャハルとハルシヤ

テジリ
ライト文芸
①その連邦国家では、未だかつて正式な女性首長は存在しなかった――架空の途上国を舞台に、その不文律に抗う少女ソピリヤと、それを一番近くで支えるハルシヤ。彼等は何も知らぬまま、幸福な幼年時代を過ごす。しかしその裏では身近な悲劇が起ころうとしていた。 【幕間】深く傷つけられた魂を抱え、遠く故郷を離れたシャハル。辿り着いた先は、活動修道会・マルチノ会が運営する寄宿舎兼学校だった。そこでジョアン・マルチノと名を隠したシャハルは、愉快な仲間達と共に、つかの間の平穏を得る。 ②ある先進国の、冬には雪けぶる辺鄙な田舎町――その町で唯一の民族料理店・ザキントス店主の娘イオニア・プラスティラスは、1人の留学生と出会う。彼の名はジョアン、かつてのシャハルが高校生にまで成長した姿だった。その頃スミドにて、ソピリヤとハルシヤは大事件に巻き込まれる。 ③大学で文化人類学を専攻し、ドキュメンタリー作家サワ・マルチノとなったシャハルは、取材のため故郷を訪れる。ハルシヤの娘イレンカも、小学生ながらそれに参加する。 【外伝①】雪けぶる町で成長した、イオニアの娘イズミル。彼女の通う高校に現れた、生意気な留学生の後輩は、何故かよくちょっかいを仕掛けてきて―― 【外伝②】永遠の夕焼けが続く白夜のさなか、シャハルは広場のカフェで過去に触れ、自身を慕うシャリムを突き放す。

処理中です...