11 / 111
Chapter2 『実験』の始まり
3
しおりを挟む
「いきなり食堂行くの? 混むよ?」
「問題ありません」
昼ご飯は食堂で、と言われて、私はお弁当を手にナオヤくんの隣を歩いた。どこの学校もお昼時の食堂は混雑するものだから、少なくとも転校してすぐはなかなかに茨の道だと思う。
そう言ったのだけど……
「ええ。母もそう言っていましたが、『尚也』はいつも食堂でその日その時食べたいパンやメニューを買っていました。果敢に挑むのは、非常に『尚也』らしい行いです」
「そう、ですか……」
付き合わされる身にもなってほしい。と、思ったのだけど、ナオヤくんは私の分まで色々と覚えていた。
「愛さんとも、よく食堂で会ったと記録されています。その隣には確か、あなたもいましたね」
「……そりゃあ、愛が行くところには、私も着いていかないと」
私は愛の側から離れることはできなかった。両親から愛を見ているようにといつも言われていた。それこそ産まれた時から。
刷り込みのように言われ続けてきて、それを疑問に思ったことなんて一度もなかった。
「そう言っていましたね。あの頃、愛は母親が作った弁当を持参し、あなたは別のものを購入していました」
「愛は……ほら、食事にも気を遣わないといけなかったから。お母さんは私にまで手が回らなかったの」
「今は、手が回ると?」
その言葉に、思わず呼吸を止めてしまった。何か言いたかったけれど、言わずに飲み込み、ただ視線だけナオヤくんに向けた。
ナオヤくんも、少しして、何か気付いたようだった。
「すみません。大変失礼なことを言いました」
「……わかってくれれば、いいよ。気をつけてね」
「はい。ただ……愛に関すること以外にも、またご迷惑をおかけするかもしれません」
「気をつけてって言ったそばから……」
「注意は十分にするつもりですが、その……後で説明します」
もしかして、ナオヤくん自身の生まれに関することで、何かあるんだろうか。
口をつぐんだのは、食堂で大行列ができている光景を見てしまったからだろう。
「問題ありません」
昼ご飯は食堂で、と言われて、私はお弁当を手にナオヤくんの隣を歩いた。どこの学校もお昼時の食堂は混雑するものだから、少なくとも転校してすぐはなかなかに茨の道だと思う。
そう言ったのだけど……
「ええ。母もそう言っていましたが、『尚也』はいつも食堂でその日その時食べたいパンやメニューを買っていました。果敢に挑むのは、非常に『尚也』らしい行いです」
「そう、ですか……」
付き合わされる身にもなってほしい。と、思ったのだけど、ナオヤくんは私の分まで色々と覚えていた。
「愛さんとも、よく食堂で会ったと記録されています。その隣には確か、あなたもいましたね」
「……そりゃあ、愛が行くところには、私も着いていかないと」
私は愛の側から離れることはできなかった。両親から愛を見ているようにといつも言われていた。それこそ産まれた時から。
刷り込みのように言われ続けてきて、それを疑問に思ったことなんて一度もなかった。
「そう言っていましたね。あの頃、愛は母親が作った弁当を持参し、あなたは別のものを購入していました」
「愛は……ほら、食事にも気を遣わないといけなかったから。お母さんは私にまで手が回らなかったの」
「今は、手が回ると?」
その言葉に、思わず呼吸を止めてしまった。何か言いたかったけれど、言わずに飲み込み、ただ視線だけナオヤくんに向けた。
ナオヤくんも、少しして、何か気付いたようだった。
「すみません。大変失礼なことを言いました」
「……わかってくれれば、いいよ。気をつけてね」
「はい。ただ……愛に関すること以外にも、またご迷惑をおかけするかもしれません」
「気をつけてって言ったそばから……」
「注意は十分にするつもりですが、その……後で説明します」
もしかして、ナオヤくん自身の生まれに関することで、何かあるんだろうか。
口をつぐんだのは、食堂で大行列ができている光景を見てしまったからだろう。
20
お気に入りに追加
4
あなたにおすすめの小説
序盤でボコられるクズ悪役貴族に転生した俺、死にたくなくて強くなったら主人公にキレられました。え? お前も転生者だったの? そんなの知らんし〜
水間ノボル🐳
ファンタジー
↑「お気に入りに追加」を押してくださいっ!↑
★2024/2/25〜3/3 男性向けホットランキング1位!
★2024/2/25 ファンタジージャンル1位!(24hポイント)
「主人公が俺を殺そうとしてくるがもう遅い。なぜか最強キャラにされていた~」
『醜い豚』
『最低のゴミクズ』
『無能の恥晒し』
18禁ゲーム「ドミナント・タクティクス」のクズ悪役貴族、アルフォンス・フォン・ヴァリエに転生した俺。
優れた魔術師の血統でありながら、アルフォンスは豚のようにデブっており、性格は傲慢かつ怠惰。しかも女の子を痛ぶるのが性癖のゴミクズ。
魔術の鍛錬はまったくしてないから、戦闘でもクソ雑魚であった。
ゲーム序盤で主人公にボコられて、悪事を暴かれて断罪される、ざまぁ対象であった。
プレイヤーをスカッとさせるためだけの存在。
そんな破滅の運命を回避するため、俺はレベルを上げまくって強くなる。
ついでに痩せて、女の子にも優しくなったら……なぜか主人公がキレ始めて。
「主人公は俺なのに……」
「うん。キミが主人公だ」
「お前のせいで原作が壊れた。絶対に許さない。お前を殺す」
「理不尽すぎません?」
原作原理主義の主人公が、俺を殺そうとしてきたのだが。
※ カクヨム様にて、異世界ファンタジージャンル表紙入り。5000スター、10000フォロワーを達成!
鞍替えした世界で復讐を誓う
駄犬
ライト文芸
「運命」を掛け違えたボタンみたく語り、矮小なものとして扱うような無神論者でもなければ、死の間際に神頼みするほど心身深くもなかった。それでも、身に降りかかる幸不幸を受け入れる際の一つのフィルターとして体よく機能させてきた。踏み潰されて枯れた路傍の花にも、「運命」を与えてやってもいいし、通り魔に腹部を刺されて夭折した一人の若者にも、「理不尽」を「運命」と言い換えてやればいい。世界を単一の物と見ずに、多層的な構造をしていると考えればきっと、「運命」を観測し得る。
この物語は、そんな一つの可能性に手を伸ばした一人の人間の話だ。
▼Twitterとなります。更新情報など諸々呟いております。
https://twitter.com/@pZhmAcmachODbbO
となりの席の変態さん
犬派のノラ猫
ライト文芸
のんびりとした休み時間
今日も今日とていつものように
君は俺に話し掛けてくる。
これは二人の秘密の雑談から
始まるすこし変わった彼女と俺との
青春の物語。
婚約破棄ですか。別に構いませんよ
井藤 美樹
恋愛
【第十四回恋愛小説大賞】で激励賞を頂き、書籍化しました!!
一、二巻、絶賛発売中です。電子書籍も。10月8日に一巻の文庫も発売されました。
皆様の応援のおかげです。ありがとうございます。
正直、こんな形ばかりの祝賀会、参加したくはありませんでしたの。
だけど、大隊長が参加出来ないのなら仕方ありませんよね。一応、これでも関係者ですし。それにここ、実は私の実家なのです。
というわけで、まだ未成年ですが、祝賀会に参加致しましょう。渋々ですが。
慣れないコルセットでお腹をギュッと締め付けられ、着慣れないドレスを着せられて、無理矢理参加させられたのに、待っていたは婚約破棄ですか。
それも公衆の面前で。
ましてや破棄理由が冤罪って。ありえませんわ。何のパーティーかご存知なのかしら。
それに、私のことを田舎者とおっしゃいましたよね。二回目ですが、ここ私の実家なんですけど。まぁ、それは構いませんわ。皇女らしくありませんもの。
でもね。
大隊長がいる伯爵家を田舎者と馬鹿にしたことだけは絶対許しませんわ。
そもそも、貴方と婚約なんてしたくはなかったんです。願ったり叶ったりですわ。
本当にいいんですね。分かりました。私は別に構いませんよ。
但し、こちらから破棄させて頂きますわ。宜しいですね。
★短編から長編に変更します★
書籍に入り切らなかった、ざまぁされた方々のその後は、こちらに載せています。
咲かない桜
御伽 白
ライト文芸
とある山の大きな桜の木の下で一人の男子大学生、峰 日向(ミネ ヒナタ)は桜の妖精を名乗る女性に声をかけられとあるお願いをされる。
「私を咲かせてくれませんか?」
咲くことの出来ない呪いをかけられた精霊は、日向に呪いをかけた魔女に会うのを手伝って欲しいとお願いされる。
日向は、何かの縁とそのお願いを受けることにする。
そして、精霊に呪いをかけた魔女に呪いを解く代償として3つの依頼を要求される。
依頼を通して日向は、色々な妖怪と出会いそして変わっていく。
出会いと別れ、戦い、愛情、友情、それらに触れて日向はどう変わっていくのか・・・
これは、生きる物語
※ 毎日投稿でしたが二巻製本作業(自費出版)のために更新不定期です。申し訳ありません。
日本はスーパーヒーローを求めているようです
町島航太
ライト文芸
日本全国に神出鬼没で現れる伝説のヒーローストロング・ソルジャー。彼が確認されなくなってから8年が過ぎ、日本は彼のいない時代に戻る。しかし、ある日を栄えに反社会グループの活動が活発になり、警察は手に負えなくなっていく。そんな中、新人刑事の森島茜はストロング・ソルジャーの力を借りるべく捜査を始める。
【完結】野良ネコと飼いイヌの関係
西東友一
ライト文芸
野良ネコのミーヤは飼いイヌのくせに良く脱走するタロウとよく遊んでいた。そんなある日、夕焼けに黄昏ているタロウがなかなか帰ろうとしないので、尋ねてみると、「オレ・・・帰るとこないねん」と呟いた。
夏休みの夕闇~刑務所編~
苫都千珠(とまとちず)
ライト文芸
殺人を犯して死刑を待つ22歳の元大学生、灰谷ヤミ。
時空を超えて世界を救う、魔法使いの火置ユウ。
運命のいたずらによって「刑務所の独房」で出会った二人。
二人はお互いの人生について、思想について、死生観について会話をしながら少しずつ距離を縮めていく。
しかし刑務所を管理する「カミサマ」の存在が、二人の運命を思わぬ方向へと導いて……。
なぜヤミは殺人を犯したのか?
なぜユウはこの独房にやってきたのか?
謎の刑務所を管理する「カミサマ」の思惑とは?
二人の長い長い夏休みが始まろうとしていた……。
<登場人物>
灰谷ヤミ(22)
死刑囚。夕闇色の髪、金色に見える瞳を持ち、長身で細身の体型。大学2年生のときに殺人を犯し、死刑を言い渡される。
「悲劇的な人生」の彼は、10歳のときからずっと自分だけの神様を信じて生きてきた。いつか神様の元で神様に愛されることが彼の夢。
物腰穏やかで素直、思慮深い性格だが、一つのものを信じ通す異常な執着心を垣間見せる。
好きなものは、海と空と猫と本。嫌いなものは、うわべだけの会話と考えなしに話す人。
火置ユウ(21)
黒くウエーブしたセミロングの髪、宇宙色の瞳、やや小柄な魔法使い。「時空の魔女」として異なる時空を行き来しながら、崩壊しそうな世界を直す仕事をしている。
11歳の時に時空の渦に巻き込まれて魔法使いになってからというもの、あらゆる世界を旅しながら魔法の腕を磨いてきた。
個人主義者でプライドが高い。感受性が高いところが強みでもあり、弱みでもある。
好きなものは、パンとチーズと魔法と見たことのない景色。嫌いなものは、全体主義と多数決。
カミサマ
ヤミが囚われている刑務所を管理する謎の人物。
2メートルもあろうかというほどの長身に長い手足。ひょろっとした体型。顔は若く見えるが、髪もヒゲも真っ白。ヒゲは豊かで、いわゆる『神様っぽい』白づくめの装束に身を包む。
見ている人を不安にさせるアンバランスな出で立ち。
※重複投稿作品です
※外部URLでも投稿しています。お好きな方で御覧ください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる