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猛攻編
1軍幼なじみの猛攻が始まる①
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『年末年始でそっち帰るから、飲みにでも行かね? やっと成人だしな』
県外の大学に行った幼なじみ・璃央からのメッセージだった。
返答にはものすごく迷った。
俺は陰キャのオタクで、璃央は1軍陽キャのイケメンだから。
あいつとは小学校から高校まで同じ学校。学校でのグループも部活も違うのに、特別な用がない限り毎日一緒に家まで帰った仲。小学校の集団下校の名残りが習慣になり、いつも2人で帰ってた。中学からは趣味が明確に違ってきたし、話す話題も困るしで、正直、別々に帰りたかった。平々凡々な俺なんかよりもパリピ軍団と話す方がおもしろいだろうに。璃央のことが嫌いってわけじゃないけど、やっぱり気ぃ使うからな……
でもあいつはやめようと言わないし、俺から言うにしてもなんて言えばいいか分からなくて。
結局高校の卒業式の日も、クラスの打ち上げ終わりに一緒に帰った。
「和真と一緒に帰るのも、これで最後か」
「だな」
「オレ不足になったらいつでも連絡してこいよ?」
そんな冗談を言われて、それっきり。こっちから連絡する用事はなかった。思い返せば璃央と一緒に帰る時間は、緊張したけど悪くはなかった。秘密の仲みたいな感じで。
それはそれとして。こいつと会うかだ。大学行って約2年。しばらく会ってないけど、絶対高校の時よりパリピ増してんだろ……気乗りしないけど、断る理由もないよなあ……なんか断ったら二度と会わないような気もするし。
『いいよ』と返信すると、すぐにメッセージが返ってきた。さすが陽キャ。
『28とかどう?』
28日……その日は推しソシャゲ【ライブ・ルセット(通称:ライルセ)】のライブ配信がある。キャラが3Dになって歌やダンスするやつ。友達の家に集まって、観賞会の予定だ。俺はめるちゃん(推し)に会うために、課題を終わらせたんだ!
『その日は予定ある』
『お前に予定あんのかよ』
『あるわ!』
くっそ失礼だな。俺にだって友達と遊ぶ約束くらいあるわ。でもこれで、会わなくて済むか? 璃央は予定詰まってそうだし。予定が合わなかった事を理由にすれば、気まずくなったりしないだろ。それとなく約束を無しにする方向で進めようかと思ったのに……
『じゃあ、お前に合わせる』
マジかよ。これじゃ断れない。そこまでする必要あるかぁ?
……仕方ない。腹を括ろう。
『30日なら』
『オッケ』
そこからはサクサク話が進んで、璃央が場所とか日時を決めてくれて、やりとりは終わった。
「はぁ……」
陽キャとメッセージでやり取りするだけでこんなに疲れるのに、久しぶりに対面して何話せばいいんだ。俺がオタクだってことは言ってないけど察してそう。バカにされるのも嫌だし、なるべくそっちの話題には持っていかずに、普通の会話をしないと……
*
そして訪れた当日。璃央が俺の家まで迎えに来て、居酒屋まで一緒に行く予定だ。
約束の時間の少し前に、インターホンが鳴った。
「よ、久しぶり」
「久しぶり……見た目すげぇ変わったな」
「まあお前とはしばらく会ってねーしな。どうだ、イケメン増してんだろ」
約2年ぶりに会った璃央は、髪をアッシュグレーに染めて、ピアス開けて、居酒屋に行くだけなのにデートかってぐらい服もオシャレで、絶対に関わりたくないタイプになっていた。ある意味予想通りではある。なんかこのテンションの人を相手にするのも久しぶりだな……
「うん。びっくりしたけど、似合ってる」
関わりたくないタイプだけど、その通りイケメンだからガチで似合ってる。感想をそのまま口にすると、璃央は得意げに胸を張った。その動作は少し子どもらしかった。
「はは、そうだろ。お前は変わってねーな」
「別にいいだろ。変わってなくても。バカにすんな」
「してねーよ。褒めてんの。ま、行こーぜ」
ほんとに褒められてるのか?
そんな璃央に対して、俺は色味のないコートにバッグ。髪も染めてないしアクセもつけてない。隣を歩くのに釣り合わなさすぎだろ。もう帰りてぇわ。心の中で弱音を吐きながら、璃央の隣を歩いた。
居酒屋に到着してからも、一応会話は途切れず続いた。久しぶりに会った分、互いの大学やバイトなどの当たり障りのない話で時間を潰すことができている。気を使いすぎて精神は疲弊しているが。もうこうなれば酒を飲んで乗り切るしかない。料理と酒が美味いのが救いだ。こいつ、店選ぶセンスあるな。
「そういやお前、彼女とかできた?」
会話の流れで、何気なく聞かれた。俺にそんなこと聞いて楽しいか……?
「別に」
「はははっ、そっか、そーだよな」
「笑うなよ……そういうお前はどうなんだ」
楽しそうに笑うな。陰キャのことバカにしやがって。質問を返すと、璃央は少し目を泳がせた。
「今はいねぇ」
「へえ、いるんだと思ってた」
「なんだよ、オレが遊び人みたいな言い方だな」
「璃央、モテるし」
「そりゃイケメンだしな」
ドヤ顔で自慢をされたが、本当にこいつの顔は良いし、反論する気にもならなかった。
そうして時間も経ち、腹いっぱいになったところで帰ることになった。
俺は完全に酔っ払ってまともに歩けなくなってしまい、店を出てから璃央におぶわれた。璃央だって同じくらい飲んだくせに、涼しい顔をしている。
「ベロベロだな。ま、お前酒弱そうだしなー」
「うるさい……」
「家までおぶってやるよ。寝てていいぞ」
「うん、ありがと……」
璃央、気がきくしわりと優しいんだよな。
とにかく、今日を乗り切れた。話題も尽きなかったし、趣味の話になって揶揄われたりしなくてよかった。終わってみれば、久しぶりにこいつと話せてよかったなって思う。最初はいやいやだったけど、また誘ってくれたら会おうかな。
規則的に揺れる背中が心地よくて、そのまま眠りについた。
「……警戒心なさすぎだろ」
*
ふわふわとした夢見心地の中、ドサ、とベッドに寝かせられた感触がした。部屋まで連れてきてくれたんだ。
「……和真、28日にオレの誘い断って、何してたんだ?」
朧げな意識の中、璃央の声が頭に響いた。
28日はライブ見て……
「……めるちゃんに……」
「は?」
「会った……」
「はあ?」
めるちゃん、可愛かったな……
ベッドが軋んだ。璃央の舌打ちが聞こえた気がした。
「誰だよ、それ。オレのことはなんとも思ってないくせに……」
顔を掴まれて、唇撫でられてる……?
「なあ、そいつとキスとかした?」
「ん……できねえよ……」
「じゃあ、オレが先にもらうわ」
ちゅっ……♡ ちゅう……っ♡
ん? なんだ、この音……この感触……え、口、吸われて……?
キス、されてる!?!?!?
「んっ!? ん、む~~~~っ!?」
意識が覚醒し、目を開けると璃央の顔が視界を埋め尽くしていた。なんで、なんでキスなんかされてんの!? しかも俺ファーストキスなんだけど!?
酒が回った身体で、なんとか肩を押し返すと、唇はゆっくり離れていった。開けた視界に広がったのは知らない部屋だった。俺の部屋でも璃央の部屋でもない。
「めるちゃんって、誰だよそれ」
「へ、めるちゃん? なっ、なんで、キス……!? てか、ここどこ……!?」
「ラブホ。もちろんお前は来たことねーよな、童貞くん。んなことより……」
のしかかられ、顎を掴まれた。璃央は見たことないぐらい怖い顔をしている。
「誰だって聞いてんだよ」
頭がパニックだ。ここはラブホのでっかいベッドの上だし、急にキスされたのも分からないし、こんなに怒られる訳も分からない。つかなんでめるちゃんのこと知ってんの!? まさか寝ぼけて口にしてた!? それでも説明なんてしたくない!
「い、言えない……」
「……チッ」
怒りを滲ませ、乱暴に璃央の舌が口の中に入ってくる。振り解く力もなくてされるがまま、貪られ、食われそうなキスをされた。
「オレの方が、先だったのに……っ!」
離れた唇から、怒ったような、悔しそうな悲しそうな、よく分からない呟きが漏れた。まじで意味が分からない。混乱して動けないでいると、頭の上でガチャ、と音がした。音の方を見上げると、いつのまにか両手に手錠をかけられていた。その手錠はヘッドボードに繋がれて、起き上がれない。
璃央は俺のズボンに手をかけた。
県外の大学に行った幼なじみ・璃央からのメッセージだった。
返答にはものすごく迷った。
俺は陰キャのオタクで、璃央は1軍陽キャのイケメンだから。
あいつとは小学校から高校まで同じ学校。学校でのグループも部活も違うのに、特別な用がない限り毎日一緒に家まで帰った仲。小学校の集団下校の名残りが習慣になり、いつも2人で帰ってた。中学からは趣味が明確に違ってきたし、話す話題も困るしで、正直、別々に帰りたかった。平々凡々な俺なんかよりもパリピ軍団と話す方がおもしろいだろうに。璃央のことが嫌いってわけじゃないけど、やっぱり気ぃ使うからな……
でもあいつはやめようと言わないし、俺から言うにしてもなんて言えばいいか分からなくて。
結局高校の卒業式の日も、クラスの打ち上げ終わりに一緒に帰った。
「和真と一緒に帰るのも、これで最後か」
「だな」
「オレ不足になったらいつでも連絡してこいよ?」
そんな冗談を言われて、それっきり。こっちから連絡する用事はなかった。思い返せば璃央と一緒に帰る時間は、緊張したけど悪くはなかった。秘密の仲みたいな感じで。
それはそれとして。こいつと会うかだ。大学行って約2年。しばらく会ってないけど、絶対高校の時よりパリピ増してんだろ……気乗りしないけど、断る理由もないよなあ……なんか断ったら二度と会わないような気もするし。
『いいよ』と返信すると、すぐにメッセージが返ってきた。さすが陽キャ。
『28とかどう?』
28日……その日は推しソシャゲ【ライブ・ルセット(通称:ライルセ)】のライブ配信がある。キャラが3Dになって歌やダンスするやつ。友達の家に集まって、観賞会の予定だ。俺はめるちゃん(推し)に会うために、課題を終わらせたんだ!
『その日は予定ある』
『お前に予定あんのかよ』
『あるわ!』
くっそ失礼だな。俺にだって友達と遊ぶ約束くらいあるわ。でもこれで、会わなくて済むか? 璃央は予定詰まってそうだし。予定が合わなかった事を理由にすれば、気まずくなったりしないだろ。それとなく約束を無しにする方向で進めようかと思ったのに……
『じゃあ、お前に合わせる』
マジかよ。これじゃ断れない。そこまでする必要あるかぁ?
……仕方ない。腹を括ろう。
『30日なら』
『オッケ』
そこからはサクサク話が進んで、璃央が場所とか日時を決めてくれて、やりとりは終わった。
「はぁ……」
陽キャとメッセージでやり取りするだけでこんなに疲れるのに、久しぶりに対面して何話せばいいんだ。俺がオタクだってことは言ってないけど察してそう。バカにされるのも嫌だし、なるべくそっちの話題には持っていかずに、普通の会話をしないと……
*
そして訪れた当日。璃央が俺の家まで迎えに来て、居酒屋まで一緒に行く予定だ。
約束の時間の少し前に、インターホンが鳴った。
「よ、久しぶり」
「久しぶり……見た目すげぇ変わったな」
「まあお前とはしばらく会ってねーしな。どうだ、イケメン増してんだろ」
約2年ぶりに会った璃央は、髪をアッシュグレーに染めて、ピアス開けて、居酒屋に行くだけなのにデートかってぐらい服もオシャレで、絶対に関わりたくないタイプになっていた。ある意味予想通りではある。なんかこのテンションの人を相手にするのも久しぶりだな……
「うん。びっくりしたけど、似合ってる」
関わりたくないタイプだけど、その通りイケメンだからガチで似合ってる。感想をそのまま口にすると、璃央は得意げに胸を張った。その動作は少し子どもらしかった。
「はは、そうだろ。お前は変わってねーな」
「別にいいだろ。変わってなくても。バカにすんな」
「してねーよ。褒めてんの。ま、行こーぜ」
ほんとに褒められてるのか?
そんな璃央に対して、俺は色味のないコートにバッグ。髪も染めてないしアクセもつけてない。隣を歩くのに釣り合わなさすぎだろ。もう帰りてぇわ。心の中で弱音を吐きながら、璃央の隣を歩いた。
居酒屋に到着してからも、一応会話は途切れず続いた。久しぶりに会った分、互いの大学やバイトなどの当たり障りのない話で時間を潰すことができている。気を使いすぎて精神は疲弊しているが。もうこうなれば酒を飲んで乗り切るしかない。料理と酒が美味いのが救いだ。こいつ、店選ぶセンスあるな。
「そういやお前、彼女とかできた?」
会話の流れで、何気なく聞かれた。俺にそんなこと聞いて楽しいか……?
「別に」
「はははっ、そっか、そーだよな」
「笑うなよ……そういうお前はどうなんだ」
楽しそうに笑うな。陰キャのことバカにしやがって。質問を返すと、璃央は少し目を泳がせた。
「今はいねぇ」
「へえ、いるんだと思ってた」
「なんだよ、オレが遊び人みたいな言い方だな」
「璃央、モテるし」
「そりゃイケメンだしな」
ドヤ顔で自慢をされたが、本当にこいつの顔は良いし、反論する気にもならなかった。
そうして時間も経ち、腹いっぱいになったところで帰ることになった。
俺は完全に酔っ払ってまともに歩けなくなってしまい、店を出てから璃央におぶわれた。璃央だって同じくらい飲んだくせに、涼しい顔をしている。
「ベロベロだな。ま、お前酒弱そうだしなー」
「うるさい……」
「家までおぶってやるよ。寝てていいぞ」
「うん、ありがと……」
璃央、気がきくしわりと優しいんだよな。
とにかく、今日を乗り切れた。話題も尽きなかったし、趣味の話になって揶揄われたりしなくてよかった。終わってみれば、久しぶりにこいつと話せてよかったなって思う。最初はいやいやだったけど、また誘ってくれたら会おうかな。
規則的に揺れる背中が心地よくて、そのまま眠りについた。
「……警戒心なさすぎだろ」
*
ふわふわとした夢見心地の中、ドサ、とベッドに寝かせられた感触がした。部屋まで連れてきてくれたんだ。
「……和真、28日にオレの誘い断って、何してたんだ?」
朧げな意識の中、璃央の声が頭に響いた。
28日はライブ見て……
「……めるちゃんに……」
「は?」
「会った……」
「はあ?」
めるちゃん、可愛かったな……
ベッドが軋んだ。璃央の舌打ちが聞こえた気がした。
「誰だよ、それ。オレのことはなんとも思ってないくせに……」
顔を掴まれて、唇撫でられてる……?
「なあ、そいつとキスとかした?」
「ん……できねえよ……」
「じゃあ、オレが先にもらうわ」
ちゅっ……♡ ちゅう……っ♡
ん? なんだ、この音……この感触……え、口、吸われて……?
キス、されてる!?!?!?
「んっ!? ん、む~~~~っ!?」
意識が覚醒し、目を開けると璃央の顔が視界を埋め尽くしていた。なんで、なんでキスなんかされてんの!? しかも俺ファーストキスなんだけど!?
酒が回った身体で、なんとか肩を押し返すと、唇はゆっくり離れていった。開けた視界に広がったのは知らない部屋だった。俺の部屋でも璃央の部屋でもない。
「めるちゃんって、誰だよそれ」
「へ、めるちゃん? なっ、なんで、キス……!? てか、ここどこ……!?」
「ラブホ。もちろんお前は来たことねーよな、童貞くん。んなことより……」
のしかかられ、顎を掴まれた。璃央は見たことないぐらい怖い顔をしている。
「誰だって聞いてんだよ」
頭がパニックだ。ここはラブホのでっかいベッドの上だし、急にキスされたのも分からないし、こんなに怒られる訳も分からない。つかなんでめるちゃんのこと知ってんの!? まさか寝ぼけて口にしてた!? それでも説明なんてしたくない!
「い、言えない……」
「……チッ」
怒りを滲ませ、乱暴に璃央の舌が口の中に入ってくる。振り解く力もなくてされるがまま、貪られ、食われそうなキスをされた。
「オレの方が、先だったのに……っ!」
離れた唇から、怒ったような、悔しそうな悲しそうな、よく分からない呟きが漏れた。まじで意味が分からない。混乱して動けないでいると、頭の上でガチャ、と音がした。音の方を見上げると、いつのまにか両手に手錠をかけられていた。その手錠はヘッドボードに繋がれて、起き上がれない。
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