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風邪を引いた由宇
14.不器用でも
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「気持ちが止めれなくて……気がついたときには由宇にキスをしており……」
「へぇ……」
「はい……ほんとにごめんなさい……」
玲依は俺にキスするまでの経緯をゆっくりと話しはじめた。着替えさせようとして興奮したとか、そんなことまで言わなくていいのに……聞いてるこっちの顔が赤くなる。
話終わるころ、ようやく涙が止まった。
「言ったら嫌われると思って、すぐに言えなかったんだ……許してとは言わないから……嫌わないで……由宇に無視されたら……ほんとに生命の危機です……ごめんなさい……」
玲依は俺の前に綺麗に土下座を披露した。
「さっきからそればっかだな……」
それを思いつめすぎて俺を見た途端泣き出したのか。こいつらしいというか……
はぁ、とため息をつくと玲依の体がビクッと震えた。
「土下座はいいから、顔あげろ」
「……うう……」
赤くなった目にはまた涙がたまっていた。
「宇多くんにも同じこと言われた……」
「お前、宇多にも土下座してんの……!?」
何が起こってたんだ、俺が倒れてる間……
玲依はそのまましゅんとしてチラチラと様子を伺い、俺の言葉を待っている。不安になってる犬かよ……
「もうじゅうぶんだから、謝らなくていい」
「えっ……!?」
玲依は正座のまま少しだけ背を伸ばした。
「いいの……?」
「……」
……どうしてか、玲依のことを嫌いになれなかった。知らない間にキスされたのに。そのせいで風邪うつってるくせに。
ここまで本気で謝られると、怒る気をなくしてしまう。それがこいつのいいところなのかもな……
「まあ……ちゃんと話してくれたし、昨日は世話になったし、雑炊美味かったし……それでチャラってことで……」
黙っておけばわからないのに全部正直に話して、なのに嫌われたくないなんて……真っ直ぐなのに、諦めが悪くて不器用なやつ。
「ほんとに、いいの? 俺のこと嫌いになってない?」
「何回も言わせるな! 許すって言ってん……」
言い切る前に、玲依に抱き寄せられた。あまりにも突然で逃げきれなかった。壊れものを扱うみたいに優しい手が背中にまわる。
「由宇……ありがとう……大好き……もう、由宇の嫌がることはしないから……」
耳もとで震えた声が響いた。それは今にも泣き出しそうな声だった。
嫌がること……か。
思わず玲依の頭を撫でてしまう。
「って、あっつ!?」
何やってんだ、俺は……!? と自分の行動にハッとしたと同時に触れた玲依の頭がものすごく熱いことに気づく。急いで頬に触れるが、どんどん玲依の力が抜けていく。
「でもちょっとぐらいごほうびは、ほしいかな……」
「そんなこと言ってる場合か!」
支えきれず、玲依はずるりと床に倒れた。
「玲依!?」
「はは……なんかあんしんして……ちから、ぬけ……」
「へぇ……」
「はい……ほんとにごめんなさい……」
玲依は俺にキスするまでの経緯をゆっくりと話しはじめた。着替えさせようとして興奮したとか、そんなことまで言わなくていいのに……聞いてるこっちの顔が赤くなる。
話終わるころ、ようやく涙が止まった。
「言ったら嫌われると思って、すぐに言えなかったんだ……許してとは言わないから……嫌わないで……由宇に無視されたら……ほんとに生命の危機です……ごめんなさい……」
玲依は俺の前に綺麗に土下座を披露した。
「さっきからそればっかだな……」
それを思いつめすぎて俺を見た途端泣き出したのか。こいつらしいというか……
はぁ、とため息をつくと玲依の体がビクッと震えた。
「土下座はいいから、顔あげろ」
「……うう……」
赤くなった目にはまた涙がたまっていた。
「宇多くんにも同じこと言われた……」
「お前、宇多にも土下座してんの……!?」
何が起こってたんだ、俺が倒れてる間……
玲依はそのまましゅんとしてチラチラと様子を伺い、俺の言葉を待っている。不安になってる犬かよ……
「もうじゅうぶんだから、謝らなくていい」
「えっ……!?」
玲依は正座のまま少しだけ背を伸ばした。
「いいの……?」
「……」
……どうしてか、玲依のことを嫌いになれなかった。知らない間にキスされたのに。そのせいで風邪うつってるくせに。
ここまで本気で謝られると、怒る気をなくしてしまう。それがこいつのいいところなのかもな……
「まあ……ちゃんと話してくれたし、昨日は世話になったし、雑炊美味かったし……それでチャラってことで……」
黙っておけばわからないのに全部正直に話して、なのに嫌われたくないなんて……真っ直ぐなのに、諦めが悪くて不器用なやつ。
「ほんとに、いいの? 俺のこと嫌いになってない?」
「何回も言わせるな! 許すって言ってん……」
言い切る前に、玲依に抱き寄せられた。あまりにも突然で逃げきれなかった。壊れものを扱うみたいに優しい手が背中にまわる。
「由宇……ありがとう……大好き……もう、由宇の嫌がることはしないから……」
耳もとで震えた声が響いた。それは今にも泣き出しそうな声だった。
嫌がること……か。
思わず玲依の頭を撫でてしまう。
「って、あっつ!?」
何やってんだ、俺は……!? と自分の行動にハッとしたと同時に触れた玲依の頭がものすごく熱いことに気づく。急いで頬に触れるが、どんどん玲依の力が抜けていく。
「でもちょっとぐらいごほうびは、ほしいかな……」
「そんなこと言ってる場合か!」
支えきれず、玲依はずるりと床に倒れた。
「玲依!?」
「はは……なんかあんしんして……ちから、ぬけ……」
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