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第1章〜神様になれるほど強いけど、ぐーたらな生活をしたい〜
疑惑
しおりを挟む「ヒヒヒッ騎士団長はお忙しい身ですので、代わってこの私があなたたちにいくつか質問をさせていただきますね。暫しお付き合いを。」
そう名乗り出たのは王族直属の長、そして宮廷魔術師でもあるアレスだ。
長い白髪に黒縁の眼鏡。
瞳は金色で、いかにも何かを企んでいそうな顔である。
彼はフヒヒと奇妙な笑い方をしていた。
騎士団長は事件が起こった北の森へ向かうため、すぐにライムたちと別れたのだった。
ちなみにピアノは「後で、また必ず会いましょう」と貴族っぽく振る舞いながら、馬車で王宮へ引き摺られて行った。
途中まではライムたちと一緒にいると言い張っていたのだが、後で面会できるのと引き換えに、一度帰ることを承諾したらしい。
それにしても……。
ライムはちらっとアレスの方を見た。
なんというか……気味がわるいわ。
まるで、何かを企んでいるような……?
「グループ試験を受けていた、カルデア自衛団候補のシオンだ。森から戻ってきた後の状況が知りたい」
学園の白い建物の一角の部屋でライムたちは、特別対策長と名乗るアレスと向かい合っていた。
ライムたち3人は緊張した面持ちで、割と良質なソファに腰掛けている。
シオンがまず名乗ってから、不明な点をアレスに問いかけたのだった。
「ヒヒ、おお、あの王国唯一の最強部隊を率いるカルデア自衛団の候補とは。余程能力がおありなのでしょう。シオンさん、森からは誰も帰還していないのです。わかるのは森を覆っている黒い結界だけ。移動用の魔法陣も機能せず、森へも干渉できない、困り果てていたところにあなたたちが帰還してきた、というわけですな」
「そうでありますか。しかし私たちは何も状況を把握していないのです……」
シオンが黒い雨が突如降ってきたことや、森に仕掛けてあるトラップ魔法陣が消えていたこと、原因が分からず突如起きたことであることなどをつらつらとアレスに伝えた。
ジュエルも後に続いて、発言する。
「同じく、グループ試験受験者、スフィル商会の長男ジュエルです……。おそらく黒い雨がなんらかの魔法であり、魔法陣を打ち消す効果があるのでは、と。僕たちは運良く移動用の魔法陣が濡れていなかったため、帰還することができました」
ーージュエル!!
私が魔法陣を修復できることを隠してくれてありがとう……!!
あとで、たくさん果物贈るから……!
さりげなくジュエルがライムの魔法を隠してくれたおかげで、ライムのとんでも魔法がバレることが防げたようだ。
ライムはジュエルにひたすら感謝の気持ちを送った。
アレスがふうむ……と考えた素振りを見せて、こう答えた。
「あなたたち誰かが、黒い雨を降らせた、というのは違いますか?」
「??!」
「何を言っている!検討外れもいいとこだ!もし、俺らのうちの誰かがやったとしても、こちらには戻ろうとはしないはず。なおかつ、俺も王女がグループ試験に参加しているなんて知らなかったんだぞ!」
シオンがガタンとソファから立ち上がり、怒ったように言葉を並べた。
「フヒヒ、冗談です」
「なっ……!!」
シオンは顔を真っ赤にしている。
おちょくられたように感じたのだろう。
本当に私たちが疑われている……?
いやあり得ない、それだけの理由がない。
「王女サマが試験に紛れ込んでいらっしゃったのは私も知りませんでした……。私も詰めが甘い……いえ、なんでもありません」
アレスは不自然にコホンと咳をして、ライムたちに再度向かい合った。
黒縁眼鏡から覗かせる金色の瞳がギラリと光る。
ライムたちに……ではなかった。
その目ははっきりとライムに向けられた。
「あなたの自己紹介がまだでしたね?」
一瞬の沈黙が流れる。
ライムは金色の瞳から視線を外すことができず、逃れられない状況を察した。
ーーこの人は何かを知っている……?
でも私たちは何も悪いことはしていない。
嘘は……ちょっとついてもらっちゃったけど、起きたことは事実だし、事の端末は全てシオンが話した。
怖がることなんて何もないはず……!
私だって神様見習いとわかるくらいの魔法は使っていない……よね。
少し迷って、ライムは口にした。
「私はーー」
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