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第1章〜神様になれるほど強いけど、ぐーたらな生活をしたい〜
再開!
しおりを挟む「そうか。そうだよな、初めて魔獣と対峙したんだろう?」
「ええ」
「そうか、わかった……」
あぁ、良かった。
彼は案外あっさりと承諾してくれた。
……慈悲の目でこちらを見ているけども、あの私の狼狽した様子を見ればそうだろう。
会話も切り上げて、早く帰ろう。
一緒のグループになる人にも申し訳ないけど、会わないで帰った方がよさそう。
……会ったら絶対に引き止められちゃうもんね。
ちらりと会場の出入り口を見たが随分人が多い。
隠れるところを探してから『存在稀釈』した方がいいかな。
そしたら『瞬間移動』で即帰宅しよう。
お母さんお父さん……期待してたのにごめんね。
私は臆病なのでお家に帰ります。
きょろきょろしながら考えていたら、目の前の彼が口を開いた。
「あんたのことちゃんと考えられなくて、申し訳ない。次は怖い思いさせないから。ちゃんと、守るからな」
「ええっ?」
「随分……怯えていたみたいだったな。すぐに気付かなくて、悪かった」
「あの、私は……」
驚いた顔で彼を見上げると、その表情は真剣そのものだった。
あれ、話が伝わっていないのだろうか。
いやいや、ここははっきりさせておかないと!
そう意気込んで口を開きかけた時、広場の入り口の方から響き渡る大きな声がした。
「いたいた!47番と48番の人っ!!」
向こうから2人の男の子と女の子が走ってくる。
おっとっとー……。
お家に帰るタイミングが……。
男の子の方は、白髪でマッシュルームカット、眠たそうに半分閉じている瞳は綺麗なライムグリーンだ。
小柄でサイズがなかったのか萌葱色のコートはぶかぶかだ。
私より年下かな。
女の子の方はセミロングの金髪にぱっちりとした薄紫色の瞳。
今の大きな声は彼女からだった。
おしとやかそうに見えるけど、意外とハキハキしているのかもしれない。
ブラウンの可愛らしいコートを着ていて、身長は高く胸も大きい……。
わあすごいなー。
「突然で悪いが、2人にお願いがある。俺と一緒にこいつを守ってほしい!!」
彼はトンっと私の背中を押した。
「ひょえ!」
ちょっ、ちょっと待って。
私は次の試験を受けるなんて、一言も……。
訂正しようとするが、金髪の女の子がにっこり笑顔になった。
あっ、ほんとにちょっと待って……。
「うん!いいよ!!私はピアノ。ピノって呼ばれてる」
即答ー!
優しさが滲みる!!
「シオンだ!助かるぜ!」
「何か訳ありなの? ああ、僕の名前はジュエルだよ」
少し遅れてきた白髪のジュエルという男の子が、ちらちらとこちらを見てきた。
すかさずシオンが説明する。
「この子はまだ戦闘経験がないらしいんだ。さっきもかなり怯えててな……。可哀想だろ……。だから、俺たちで助けてやらなくてはと思ってな!」
「まぁ! では作戦会議しなくちゃね!」
「協力するよ」
3人は目を合わせて、頷き合っている。
勘弁してほしい。
悪気はないしとっても良い人たち。
うん……とっても良い人たちね。
私は目の前が真っ白になった。
グループ試験の内容は、4人1組で森の中の薬草を一定数取ってくるというもの。
しかし森の中には、ガルガラ程の魔獣はいないものの小さな魔獣がいて、しかもトラップだらけだ。
グループ試験と言う通り、初めて会った者同士でどこまで連携がとれるか。
1人でも突破できるだろうが、薬草をとるのに時間もかかる。
効率的にトラップを回避しながら、薬草を採取する必要があるのだ。
……ちなみに私は手を顎に添えてどうやって事を起こさずに、お家に帰るかを考えていた。
いっそのこと、遠方に魔法を使っちゃって混乱に乗じて逃げようか……。
いやそれだと、シオンたちが気づいてが騒ぎが大きくなるわね。
……じゃあ、シオンたちに任せて魔法を使わないで乗り切るっていうのはどうかしら。
試験合格に協力できないのは申し訳ない、けど……。
決めた。
本当に魔法が必要な時は慎重に。
なるべく魔法は使わない。
「よしっ!!絶対にライムを守り切り、俺たちで合格するぞーーっ!」
「「おおーー!!」」
き、気合いがすごい……!
それもそうよね。
……これからの人生がかかっているんだものね。
「お、お~」
弱々しく拳を合わせ、私たちは蒼い移動用魔法陣の上に足を踏み入れた。
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