義妹の策略で婚約破棄された高嶺の花は、孤高の王太子に溺愛される。

胡桃

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第一章

42.王太子の目論見ー対決編ー

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「それは一体、何故ですか?」

「私の口から答えても良いが……。それより、二人は心当たりがあるはずだが、何か言うことはないのか?」

 アルベルトは、目を細めてライラとルシアを見据える。

「なっ、し、知りませんわ!!」

「そ、そうよ! 私とお母様が窃盗なんて、するはずないじゃない!!」

「……では、こちらに見覚えは?」

 知らないと言い切る二人に敢えて触れず、アルベルトは背後の騎士に手振りで指示を出し、テーブルの上にいくつかの証拠品を並べさせた。

「!! こ、これは、私が以前セレーネに贈った髪留めではありませんか!?」

 ルドルフの目を引いたのは見るも無惨に踏みにじられ、壊された銀細工の髪留めであった。
 流石のルドルフも、これを覚えていたのかとアルベルトは内心驚いた。

「スノーベル侯爵、間違いないか?」

「はい、間違いなく私が購入し、セレーネに贈ったものです。彼女の死後、見当たらなかったので、とうに捨てられたものだとばかり思っておりましたが……何故このようなことに? もしやセレーネが……?」

 セレーネが怒りに任せて破壊したと想像したのか、ルドルフは顔を引きらせた。

「いや、これはセレーネ夫人が破壊したのではない。カトレア嬢の証言によると、セレーネ夫人が亡くなった後、そちらのライラ・モストーンによって、セレーネ夫人の持ち物を全て奪われ、破棄されたとのことだが、貴殿はご存知か?」

「えっ? いえ、初めて聞きました。セレーネの部屋を改装する前に、彼女の持ち物はカトレアが全て整理し、グランシア公爵家へ送るか本人が使うかしているものとばかり……ああ、そういえば、先月カトレアの衣装等を回収した際に予想より遥かに少なくて驚いたような……」

「回収? グレース公爵家子息との婚約解消の際、返納する結納金に充てるため、貴殿が全て売ったと聞いているが……」

「いいえ、一つも売っていません。確かにあの時は突然の婚約破棄に腹が立つ余り、カトレアに対し酷い言葉を投げつけましたが……結納金は全額を私が返納しましたし、衣装類を回収したのは、婚約破棄の要因となったルシアに対する虐めへの罰が目的だっただけで、全てそのまま保管し、侍女長エリーゼに適切な管理をするよう命じてあります。彼女はセレーネと共にこの屋敷に来ましたから、カトレアも懐いてたようですし、最も適任かと……」

 ルドルフはそこで一旦口を閉ざす。
 そして、少し考える素振りを見せた後、再び口を開いた。

「カトレアのドレスと装飾品のほとんどがグランシア公爵からの贈り物であることは、流石の私も知っています。全て高級店が取り扱う受注生産品で、店の刻印やグランシア公爵家の紋章が入っているものばかりです。中には、亡父が初孫の誕生に張り切って買い与えたものもありましたし、そのようなものを安易に売れるはずがないでしょう? 私も罪人にはなりたくありませんから……」

「そうか……では、こちらの箱とブレスレットを含めたこれらの宝飾品に見覚えは?」

 アルベルトはルドルフの話を受け入れ、証拠品の方へ話を戻した。

「……この箱は、確か衣装を回収した際に、カトレアが返してくれと言ったため、ライラがカトレアに返したはずですが……宝飾品の方は知りませんね」

「では、そちらの二人は?」

 ルドルフの答えにアルベルトは頷くと、ライラとカトレアを見据える。

「知りませんわ、何ですの? その質素な宝飾品は……」

「私も知りません!」

「……これらの宝飾品は、王都の中心街にある、ゴールドフラワー宝飾品店で販売されていたものだ。そちらの二人は、この店をよく利用していると聞いた。本当に知らないのか?」

 否定する二人に、アルベルトは入念に確認する。

「知りませんわ」

「私も知りません」

「そうか……では、スノーベル侯爵、こちらを確認してもらえるだろうか?」

 アルベルトは、ブレスレットの内側にある刻印を示した。
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