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第一章
37.気づいたときにはもう遅い
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ライモンドがカトレアに会って話がしたいと望んでいることを告げられたカトレアは、少し悩んだ末に、アルベルトが同席するのなら会っても構わないと決断した。
そして、その日の授業が終わった後、三人は生徒会執行部の部室へ集った。――たった一月前、カトレアが心に深い傷を負った、その場所に。
「カトレア嬢――否、スノーベル侯爵家令嬢殿……此度は本当に申し訳ないことをした。いくら謝ったところで決して赦されないことをしたということは重々承知しているが、どうしてもきちんと貴女に謝罪をしたくて、アルベルト殿下に話を通してもらったのだ……」
ライモンドはきっちり頭を下げ、謝罪した。
カトレアは、そんなライモンドを戸惑った様子で見つめ、やがて意を決したように居住まいを正す。
「……顔を上げてください、グレース公爵家子息様。謝罪は受け取ります。あの日貴方が仰られた言葉を全て許すとは言えませんが……私は、貴方の婚約者であった約半年間――確かに、貴方をお慕いしておりました」
「っ!」
カトレアの告白を聞いたライモンドは、悲しそうに表情を歪めた。
当時、カトレアの本心を全く見抜けなかった己の見る目のなさ――不甲斐なさに、何故彼女を信じられなかったのかと、怒涛のような後悔が押し寄せてきた。
「……私は幼少の頃から、母の病や境遇のこともあって、感情を抑える癖がついていました。そのため、自身の本音を表現するのは苦手で……それを言い訳にして、きちんとお伝えできなかったのは、私自身に非があることです。本当にごめんなさい。ですから、貴方が私のことを信用できなかった気持ちも理解しておりますし、逆の立場でしたら私も疑ってかかったと思います」
カトレアは、そこまで言うと、一旦口を閉ざした。
隣で黙って見守っているアルベルトの顔をチラッと窺ってから、再びライモンドへ視線を向ける。
「ですが、今はもう、貴方への思慕も未練も何一つ残っていません。――アルベルト様が、私を信じてくださると……そばにいると仰ってくださいましたから。私は、その想いに応えたいと――いえ、応えると決めましたから」
「!!」
カトレアの言葉に驚いたのはアルベルトだけであり、ライモンドは苦笑して頷いた。
「知っている。君の自然な笑顔を引き出すことができたのは、アルベルト殿下ただ一人――俺には半年掛かっても全くできなかった。半年前、裏庭で君と初めて逢い、そのとき見かけた君の笑顔をもう一度見たいと思って、父に頼み込んでスノーベル侯爵の元へ君との縁談を持ち込んでもらったというのに、俺は君が安らげる場所にはなれなかった。もう一度、俺に挽回の機会をくれとは、言えやしない。離れてみて……第三者の目で見て、ようやく君の本心を見抜けるようになった俺には、そんな虫の良いことは言えない……」
ライモンドは泣き笑いのような表情を浮かべた。
「……これ以上はもう言い訳がましくなるだけだな。スノーベル侯爵家令嬢殿、本日は時間をいただき、感謝する。アルベルト殿下も、この場に御同席くださりありがとうございました。――今後は他者の言葉に惑わされることなく、己の目でしっかりと見据え判断するよう、重々留意いたします」
「……ああ」
アルベルトが応じると、ライモンドは一礼して部室を出ていった。
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