義妹の策略で婚約破棄された高嶺の花は、孤高の王太子に溺愛される。

胡桃

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第一章

32.崩れつつある悪魔の策略④

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[ルシア視点]


 ライモンドと王都へ出かけた翌日、ルシアが学園に登校すると、学園内がアルベルトとカトレアの話題で持ちきりになっていた。

 (は? 何よ、この騒ぎ……)

 ルシアとライモンドは昨日、宝飾品店で買い物を済ませた後はどこにも寄らずに帰宅したため、王都に現れたアルベルトとカトレアの姿を見ていない。
 勿論、二人が宝飾品店を出た後、程なくしてアルベルトとカトレアが同じ店を訪れたということも知らない。
 そして、ルシアは学園に着くまでこの噂を知らなかった。
 もし昨夜のうちにこのことを知っていたなら、ルシアは真相を確かめるべく屋敷でカトレアに接近していたであろう。

 (アルベルト様とカトレアが宝飾品店を巡っていた? それも仲睦まじい様子で?)

 ルシアは、通りすがりに漏れ聞こえてくる会話を聞きながら、足早に教室へと向かった。
 そして、隣の教室――カトレアが在籍する教室の前に人だかりがあり、そこにいる者たちが見ているのが教室内にいるカトレアであることに気づいた。

「……ライモンド様から婚約破棄をされてまだ一月しか経っていないのに、もう次の男性に鞍替えするだなんてはしたないわ」

 人だかりにいる者たちが誰も自分を見ていないことを確認したルシアは、顔を伏せ通りすがりのふりをしてボソッと囁いた。
 それを耳にした者が辺りを見渡す前に、ルシアは何事もなかったように己の教室へ入っていった。
 ルシアのこの一言により、ライモンドに同情する者とカトレアに怒りを覚える者が増え、ますます喧騒が大きくなる。

 (……まだ足りないわ)

 ルシアは、カトレアからアルベルトを奪うための策を練るべく、考えを巡らせた。
 アルベルトにはライモンドのときのように容易に近づくことはできないが、彼はどこにいても生徒たちの注目の的であるため、彼がよく現れる場所には心当たりが多い。
 そのどこかに罠を張れば、アルベルトが掛かるだろうとルシアは高を括り、内心でほくそ笑む。

 (フフ……必ずアルベルト様を私のものにしてみせるわ)

 思わず高笑いしそうになり、微かにひくつく頬を堪えながら、ルシアは己の席に腰を下ろした。

 すぐそばに、その横顔を見つめる眼差しがあることに気づかないまま――
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