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第一章

28.貴方の言葉が私の心を救う

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 アルベルトとカトレアが二人で王都の店々を巡っていたという目撃情報は、あっという間に学園中に広まった。
 中には、たった一月でライモンドからアルベルトに鞍替えした尻軽女という品のない言葉まで飛びっていたが、昨日の別れ際に聞いたアルベルトの言葉がカトレアの心を守ってくれたため、悲観することはなかった。

『君の答えがどちらであったとしても、僕が君の味方であることは変わらない。何があっても僕はいつでも君の隣にいるし、もし離れなければならないことがあったとしても、君が困っていたら必ず助けに行く。そして、僕は君に対して嘘はつかないし、隠し事もしない。どんな些細なことでも僕は、自分の意思は自分の言葉で君に伝える。だから、もしも誰かが僕の気持ちや考えを決めつけて代弁するようなことを言ったとしても、それは僕の本心ではないということをわかっていてほしい』

 アルベルトは、この先起こりうる可能性を考え、先手を打ってカトレアに伝えた。
 カトレアが、周囲からの余計な横槍でアルベルトの立場を気遣い身を引いてしまわないように。

『周囲の心ない言葉に惑わされず、君は君の望むまま、前へ進んでくれ。僕はそんな君について行くよ。それから、僕の手が必要なときは、いつでも呼んで。どんな些細なことでも、遠慮は必要ないからね。僕は必ず君の元へ行くから――』

 馬車に乗り込むカトレアの左手の小指に、アルベルトは小さな石がついた細身の指輪を通した。

『勝手に着けて申し訳ない。これは緊急事態を知らせるための魔導具なんだ。この石を左右どちらかに回すと、他者には認識できないほど微量の魔力が僕の持つ魔導具へ飛ばされるようになっている。例え地下だろうと水中だろうと、どこにいても必ず届くから、このまま肌身離さず持っていてくれ。大仰に思うかもしれないが、君を守るための備えはいくつあっても足りないくらいだと僕は思う。何故なら君は、とても魅力的だからね』

 最後に手の甲に唇を寄せられ、カトレアは頬を真っ赤に染めた。

 (いけない……そんなことまで思い出さなくて良いのよ……)

 カトレアは小さく首を振って、回想を無理やり終わらせると、さりげなく左手の小指に目を向けながら、この指輪を守り通さなければと固く誓った。
 
 (私は私の幸せだけを考えて生きる。誰に何を言われても良い。アルベルト様がそばにいてくれるから……)

 カトレアは、いつかアルベルトの想いに応えたいと思い始めていた――
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