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第一章
19.背後に忍び寄る悪魔の足音
しおりを挟む[ルシア視点]
カトレアに無視されたことに苛立ち、何か意趣返しをしたいと考えたルシアは、カトレアを追って昇降口に向かった。
その後ろから、困惑した様子のライモンドが追いかけるが、ルシアは見向きもしない。
ようやくカトレアの後ろ姿を視界に捉え、ルシアはひっそりとほくそ笑んだ。
(ふふ……何が良いかしら?)
どういう趣向にしようかと考えていると、カトレアに近づく人物がいることに気づいた。
(え?)
その人物が、グロリオーサ王国王太子アルベルトであることに気づいたルシアは、一体どういうことかと訝しむ。
「あれは、アルベルト殿下か? 体調不良ということで帰宅したと聞いていたが……」
「え?」
(どういうこと? いつの間にカトレアはアルベルト様に取り入ったの?)
アルベルトとカトレアは少し言葉を交わした後、連れ立って昇降口を出ていった。
ルシアは驚きのあまり一歩も動けず、ただ呆然と二人を見送った。
◇ ◇ ◇
[アルベルト視点]
王との謁見を済ませたアルベルトは、その足で王立学園へ戻った。
丁度、下校時刻になっていた学園では生徒たちがゾロゾロと帰宅の途についている。
(少し遅かったか……?)
アルベルトは馬車留めへ向かう生徒たちの間をすり抜け、カトレアの姿を探した。
そして、昇降口に入ったところでカトレアを見つけた。
「カトレア嬢」
「……アルベルト殿下?」
キョトンとした顔でアルベルトを見返すカトレアに、アルベルトは足早に近づいた。
「すまない、これから少し時間をもらえるだろうか?」
「え? はい、大丈夫です」
「ありがとう。では、ついて来てくれ」
カトレアが迷うことなく同意すると、アルベルトはエスコートするようにカトレアを連れて昇降口を離れた。
このとき、視界の端にルシアとライモンドが映ったが、アルベルトは一瞥もしなかった。
そして、学園の馬車留めではなく、正門の外へとカトレアを連れ出すと、そこに待たせてあった王宮の馬車へと導く。
「あの、殿下? これからどちらへ行かれるのですか?」
カトレアは促されるまま馬車に乗ると、向かい合わせに座ったアルベルトへ問いかける。
「何も説明しないまま連れ込んでごめん。これから君には父に会ってもらう」
「えっ?」
「先程見せてもらった純金製のペンダントの意味を、父が――国王陛下が知っているんだ」
「え……?」
「ごめんね、今はまだ、僕の口からは説明できないんだ。でも、安心して。僕は君の味方だから。何があっても、僕が君を守るよ」
「は、い……」
カトレアは混乱しつつも、小さく頷いた。
この後、とんでもない事実を知ることになるとは思いもせずに――
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