義妹の策略で婚約破棄された高嶺の花は、孤高の王太子に溺愛される。

胡桃

文字の大きさ
上 下
6 / 58
第一章

03.壊された大切な思い出の花

しおりを挟む

 本来なら、生徒会執行部の部室は、生徒会役員以外の使用を禁じている。
 ただし、許可さえ取り付ければ、生徒会役員が空き時間に私的利用することは珍しくないので、生徒会副会長であるライモンドが利用することは納得できるだろう。
 しかし、生徒会役員ではないルシアが先に部室内にいたことは、どう考えてもおかしいとカトレアは考えた。

「……ライモンド様、お話とは一体何でしょうか?」
 
 おかしいとは思うものの、この場でルシアと揉めることは避けたいと考えるカトレアは、ルシアの存在を意識しないようにして静かにライモンドへ問い掛けた。
 ライモンドはゆっくり扉から離れると、ルシアの隣に立つ。

 (え……?)

 何故、己の婚約者であるライモンドがルシアの隣に立っているのか、カトレアには理解できない。
 しかし、これから聞かされるであろう話は、きっとカトレアを脅かす内容なのだと直感で気付く。
 
「カトレア嬢。お前は、以前より義妹であるルシアに対し、酷い虐めを繰り返していると聞いた。それは本当か?」

「え……?」

 カトレアはライモンドの言葉が、聞いたそばから耳を通り抜けていくような錯覚を覚えた。
 そして、ライモンドがその言葉を放つと同時に、ルシアがビクッと大袈裟に肩を震わせ、俯く瞬間に唇の端を持ち上げたことに気づいてしまった。

 (ルシア……あなたは一体、どれだけのものを私から奪えば気が済むの?)

「ライモンド様。私は義妹を虐めるだなんて、そのようなことはしていません」

 カトレアは動揺を押し隠し、静かに答えた。

「白々しい嘘を言うな! ルシアは先程、裏庭で泣きながら探し物をしていた。理由を問うと、ルシアがスノーベル侯爵から贈られた髪留めを、お前に奪われ、取り返そうとしたら、廊下の窓から放り捨てられたと答えた。これを見てもまだ言い逃れをするつもりか!?」

 ライモンドは激昂しながらそう言うと、白いハンカチに包んであった、壊れた髪留めをカトレアに突きつけた。
 その髪留めに見覚えがあったカトレアは、その変わり果てた姿に酷く動揺する。

 (どうして、これがここにあるの……?)
 
 何故なら、その髪留めは母が生前大切にしていた父からの唯一の贈り物だった――
しおりを挟む
感想 25

あなたにおすすめの小説

魅了が解けた貴男から私へ

砂礫レキ
ファンタジー
貴族学園に通う一人の男爵令嬢が第一王子ダレルに魅了の術をかけた。 彼女に操られたダレルは婚約者のコルネリアを憎み罵り続ける。 そして卒業パーティーでとうとう婚約破棄を宣言した。 しかし魅了の術はその場に運良く居た宮廷魔術師に見破られる。 男爵令嬢は処刑されダレルは正気に戻った。 元凶は裁かれコルネリアへの愛を取り戻したダレル。 しかしそんな彼に半年後、今度はコルネリアが婚約破棄を告げた。 三話完結です。

悪役令嬢は永眠しました

詩海猫
ファンタジー
「お前のような女との婚約は破棄だっ、ロザリンダ・ラクシエル!だがお前のような女でも使い道はある、ジルデ公との縁談を調えてやった!感謝して公との間に沢山の子を産むがいい!」 長年の婚約者であった王太子のこの言葉に気を失った公爵令嬢・ロザリンダ。 だが、次に目覚めた時のロザリンダの魂は別人だった。 ロザリンダとして目覚めた木の葉サツキは、ロザリンダの意識がショックのあまり永遠の眠りについてしまったことを知り、「なぜロザリンダはこんなに努力してるのに周りはクズばっかりなの?まかせてロザリンダ!きっちりお返ししてあげるからね!」 *思いつきでプロットなしで書き始めましたが結末は決めています。暗い展開の話を書いているとメンタルにもろに影響して生活に支障が出ることに気付きました。定期的に強気主人公を暴れさせないと(?)書き続けるのは不可能なようなのでメンタル状態に合わせて書けるものから書いていくことにします、ご了承下さいm(_ _)m

【一話完結】断罪が予定されている卒業パーティーに欠席したら、みんな死んでしまいました

ツカノ
ファンタジー
とある国の王太子が、卒業パーティーの日に最愛のスワロー・アーチェリー男爵令嬢を虐げた婚約者のロビン・クック公爵令嬢を断罪し婚約破棄をしようとしたが、何故か公爵令嬢は現れない。これでは断罪どころか婚約破棄ができないと王太子が焦り始めた時、招かれざる客が現れる。そして、招かれざる客の登場により、彼らの運命は転がる石のように急転直下し、恐怖が始まったのだった。さて彼らの運命は、如何。

だから聖女はいなくなった

澤谷弥(さわたに わたる)
ファンタジー
「聖女ラティアーナよ。君との婚約を破棄することをここに宣言する」 レオンクル王国の王太子であるキンバリーが婚約破棄を告げた相手は聖女ラティアーナである。 彼女はその婚約破棄を黙って受け入れた。さらに彼女は、新たにキンバリーと婚約したアイニスに聖女の証である首飾りを手渡すと姿を消した。 だが、ラティアーナがいなくなってから彼女のありがたみに気づいたキンバリーだが、すでにその姿はどこにもない。 キンバリーの弟であるサディアスが、兄のためにもラティアーナを探し始める。だが、彼女を探していくうちに、なぜ彼女がキンバリーとの婚約破棄を受け入れ、聖女という地位を退いたのかの理由を知る――。 ※7万字程度の中編です。

【完結】聖女ディアの処刑

大盛★無料
ファンタジー
平民のディアは、聖女の力を持っていた。 枯れた草木を蘇らせ、結界を張って魔獣を防ぎ、人々の病や傷を癒し、教会で朝から晩まで働いていた。 「怪我をしても、鍛錬しなくても、きちんと作物を育てなくても大丈夫。あの平民の聖女がなんとかしてくれる」 聖女に助けてもらうのが当たり前になり、みんな感謝を忘れていく。「ありがとう」の一言さえもらえないのに、無垢で心優しいディアは奇跡を起こし続ける。 そんななか、イルミテラという公爵令嬢に、聖女の印が現れた。 ディアは偽物と糾弾され、国民の前で処刑されることになるのだが―― ※ざまあちょっぴり!←ちょっぴりじゃなくなってきました(;´・ω・) ※サクッとかる~くお楽しみくださいませ!(*´ω`*)←ちょっと重くなってきました(;´・ω・) ★追記 ※残酷なシーンがちょっぴりありますが、週刊少年ジャンプレベルなので特に年齢制限は設けておりません。 ※乳児が地面に落っこちる、運河の氾濫など災害の描写が数行あります。ご留意くださいませ。 ※ちょこちょこ書き直しています。セリフをカッコ良くしたり、状況を補足したりする程度なので、本筋には大きく影響なくお楽しみ頂けると思います。

【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?

アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。 泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。 16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。 マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。 あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に… もう…我慢しなくても良いですよね? この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。 前作の登場人物達も多数登場する予定です。 マーテルリアのイラストを変更致しました。

悪意のパーティー《完結》

アーエル
ファンタジー
私が目を覚ましたのは王城で行われたパーティーで毒を盛られてから1年になろうかという時期でした。 ある意味でダークな内容です ‪☆他社でも公開

父が再婚しました

Ruhuna
ファンタジー
母が亡くなって1ヶ月後に 父が再婚しました

処理中です...