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第一章
03.壊された大切な思い出の花
しおりを挟む本来なら、生徒会執行部の部室は、生徒会役員以外の使用を禁じている。
ただし、許可さえ取り付ければ、生徒会役員が空き時間に私的利用することは珍しくないので、生徒会副会長であるライモンドが利用することは納得できるだろう。
しかし、生徒会役員ではないルシアが先に部室内にいたことは、どう考えてもおかしいとカトレアは考えた。
「……ライモンド様、お話とは一体何でしょうか?」
おかしいとは思うものの、この場でルシアと揉めることは避けたいと考えるカトレアは、ルシアの存在を意識しないようにして静かにライモンドへ問い掛けた。
ライモンドはゆっくり扉から離れると、ルシアの隣に立つ。
(え……?)
何故、己の婚約者であるライモンドがルシアの隣に立っているのか、カトレアには理解できない。
しかし、これから聞かされるであろう話は、きっとカトレアを脅かす内容なのだと直感で気付く。
「カトレア嬢。お前は、以前より義妹であるルシアに対し、酷い虐めを繰り返していると聞いた。それは本当か?」
「え……?」
カトレアはライモンドの言葉が、聞いたそばから耳を通り抜けていくような錯覚を覚えた。
そして、ライモンドがその言葉を放つと同時に、ルシアがビクッと大袈裟に肩を震わせ、俯く瞬間に唇の端を持ち上げたことに気づいてしまった。
(ルシア……あなたは一体、どれだけのものを私から奪えば気が済むの?)
「ライモンド様。私は義妹を虐めるだなんて、そのようなことはしていません」
カトレアは動揺を押し隠し、静かに答えた。
「白々しい嘘を言うな! ルシアは先程、裏庭で泣きながら探し物をしていた。理由を問うと、ルシアがスノーベル侯爵から贈られた髪留めを、お前に奪われ、取り返そうとしたら、廊下の窓から放り捨てられたと答えた。これを見てもまだ言い逃れをするつもりか!?」
ライモンドは激昂しながらそう言うと、白いハンカチに包んであった、壊れた髪留めをカトレアに突きつけた。
その髪留めに見覚えがあったカトレアは、その変わり果てた姿に酷く動揺する。
(どうして、これがここにあるの……?)
何故なら、その髪留めは母が生前大切にしていた父からの唯一の贈り物だった――
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