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第一章
02.幸福はいつも長続きしない
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ご指摘くださった方、ありがとうございますm(_ _)m
~*~*~*~*~*~
――一ヶ月前。
グロリオーサ王立学園の図書室にて、カトレアは窓から差し込む穏やかな陽射しを浴びながら、のんびりと読書をしていた。
三年前、セレーネが他界して間もなく、父――ルドルフが後妻とその娘を迎え入れたあの日から、カトレアは心休まるときがないような日々を送っている。
何故なら、継母ライラと義妹ルシアの暴挙によって、カトレアの生活は脅かされているから。
ライラとルシアは、スノーベル侯爵家へ入った途端、我が物顔で屋敷中を荒らしていった。
前妻セレーネの痕跡を消すため、セレーネが過ごした部屋を容赦なく改装し、セレーネが嫁入りの際に持ち込んだ道具や衣装は全て破棄して――
そんな風にセレーネの痕跡が消えていく度、カトレアは自分の居場所も消えていくような気がしていた。
そして、いつか家を追い出されるのではないかという不安が尽きないカトレアにとって、何者にも邪魔されないこの静かなひとときはとても大切だった。
(お母様……)
カトレアはふと視線を上げ、窓の外を見つめた。
病床に就き、窓の外を眺めていた母――セレーネの儚げな姿が甦る。
あのとき、母は何を思っていたのだろう?
いつまでも帰らない父――夫を待っていたのだろうか?
カトレアはいくら考えても答えの出ない問いを心の中で繰り返した。
そして自分は、セレーネのように生涯をかけて誰かを愛することはできるのだろうかと、そんなことを思った。
「カトレア嬢。少し聞きたいことがある。ついて来い」
不意に姿を現した、グレース公爵家子息ライモンドは、カトレアの返事を待たずに腕を掴んで立たせると、そのまま図書室の外へと連れ出した。
(ライモンド様? 一体どうしたのかしら?)
カトレアとライモンドが婚約関係を結んだのは、ちょうど半年前のことだった。
ライモンドが才色兼備であるカトレアを見初め、告白をする前に婚約を打診した。
当初、ルドルフはライモンドからの婚約の打診を快く思っていなかったが、グレース公爵家から提示された結納金の金額に目が眩み、己にとって厄介者でしかないカトレアを望まれる通りにグレース公爵家へ嫁がせれば自身の格も上がるだろうという安易な考えで飛びついた。
こうしてカトレアとライモンドの婚約は成立したが、カトレアは父の思惑を知らないまま、徐々にライモンドに惹かれつつあった。
「入れ」
ライモンドに連れられるまま辿り着いたのは、グロリオーサ王立学園高等部生徒会執行部の部室である。
いささか乱暴に室内へと押し入れられ、カトレアは戸惑ったが、それが表に出ることはないため、ライモンドは気づかない。
「お義姉様……」
ライモンドが扉を閉め、密室になった空間に、怯えたような表情浮かべるルシアの姿があった――
~*~*~*~*~*~
本日(2/1)に限り、
14:30/15:30/16:30/19:00/20:00/21:00(計6回)
上記の時間に続話を投稿します。
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