偽りの世界R

カラスヤマ

文字の大きさ
上 下
5 / 11

傷⑤

しおりを挟む
『メイドちゃん。私ね。大人が大嫌いなの』


『なんで大人が嫌いなんですか?』


『平気で嘘をつくから。私を捨てた親もそうだったし。許せないの』


『………お嬢様』



メイドちゃん。


なんであんなに悲しそうな顔をしたの?




……………………。


………………。


…………。




「ぅ……」


「大丈夫? 疲れてるみたいだから、もう帰ったほうが良いよ」


「……うん」




公園の入口で、男の子は一度振り返り



「ありがとう。お姉ちゃんが僕を助けてくれたんでしょ? じゃあね、バイバイ! また明日」


「…………」



ありがとう?


私が、アナタやアナタの大切なママを苦しめていたのに?



ありがとう……ありがとう…ありがとう。

ありがとう? ありがとう?? う~ん。



悩んでいたら、夜。私の悩みを象徴するような淡い夜だった。私は、口笛を吹いて人間を今も苦しめている元凶を公園に呼び出した。


バイ菌を撒き散らして、人間を『悪い風邪』にした黒いバッタ。



草むらから現れたその姿は、全くの別物になっていた。



「モンスターみたい」



人間の果てのない欲を餌にして、ブクブク太った醜い体に変異している。


主である私まで、その毒で犯そうとするバッタを無理やり捕まえて、元の潰れた姿に戻した。




これで人間を苦しめていた病気も治るはず。




「……痛いなぁ」




暴れたバッタに噛まれて、両手が傷だらけになっていた。



「……こんなボロボロの手じゃ、プリンが食べれないよ。…………ほんと」



人間なんか、大キライ。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

魔獣だらけの“深い森”でまったりする

イエルスク
ファンタジー
“深い森”は内陸部との境界域、魔獣がうろうろする場所だ。ハンター職を選んだ俺は、スキルを活用し“深い森”でのキャンプ生活と温泉をまったりと堪能していた。ある日、スカウトされてギルド所属の探査士に転職することに。そして内陸部の神殿調査に駆り出された。 内陸部は古文書の世界、更に怪しい魔獣がうじゃうじゃいた。その上、魔族まで参戦するの?  まあいいか、まとめてボルヴァン製ラッフィナイフの餌食にしてやる。

金眼のサクセサー[完結]

秋雨薫
ファンタジー
魔物の森に住む不死の青年とお城脱走が趣味のお転婆王女さまの出会いから始まる物語。 遥か昔、マカニシア大陸を混沌に陥れた魔獣リィスクレウムはとある英雄によって討伐された。 ――しかし、五百年後。 魔物の森で発見された人間の赤ん坊の右目は魔獣と同じ色だった―― 最悪の魔獣リィスクレウムの右目を持ち、不死の力を持ってしまい、村人から忌み子と呼ばれながら生きる青年リィと、好奇心旺盛のお転婆王女アメルシアことアメリーの出会いから、マカニシア大陸を大きく揺るがす事態が起きるーー!! リィは何故500年前に討伐されたはずのリィスクレウムの瞳を持っているのか。 マカニシア大陸に潜む500年前の秘密が明らかにーー ※流血や残酷なシーンがあります※

黒白英雄戦記

優希ヒロ
ファンタジー
転生したら、スキルなしとして生まれ変わった。 スキルなし故に全てを奪われた。 絶望に堕ちた時、神は言った。 「未来を見て、何を望む?」 「僕は…。俺は全てを…。」

少し残念なお嬢様の異世界英雄譚

雛山
ファンタジー
性格以外はほぼ完璧な少し残念なお嬢様が、事故で亡くなったけど。 美少女魔王様に召喚されてしまいましたとさ。 お嬢様を呼んだ魔王様は、お嬢様に自分の国を助けてとお願いします。 美少女大好きサブカル大好きの残念お嬢様は根拠も無しに安請け合い。 そんなお嬢様が異世界でモンスター相手にステゴロ無双しつつ、変な仲間たちと魔王様のお国を再建するために冒険者になってみたり特産物を作ったりと頑張るお話です。 ©雛山 2019/3/4

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

異世界勇者~それぞれの物語~

野うさぎ
ファンタジー
 この作品は、異世界勇者~左目に隠された不思議な力は~の番外編です。 ※この小説はカクヨム、なろう、エブリスタ、野いちご、ベリーズカフェ、魔法のアイランドでも投稿しています。  ライブドアブログや、はてなブログにも掲載しています。

魔獣奉賛士

柚緒駆
ファンタジー
砂漠の巨大帝国アルハグラを支配する冷酷な王ゲンゼルは、東の果て、氷の山脈に棲む魔獣ザンビエンに、己の姫リーリアを生け贄として捧げる事を決めた。姫を送り届ける役目には、三十人の傭兵達と年老いた魔獣奉賛士が一人。それ以外の奉賛隊はアルハグラの民から選ばれる。孤児として育ったランシャは、報奨金目当てに奉賛隊に参加した。一方隣国ダナラムは、奉賛隊を壊滅すべく秘密裏に聖滅団を差し向ける。

処理中です...