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③嫌な予感
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僕は、昔から『運』を自分の体に蓄えることが出来た。脂肪のように。さらに、これはまだ誰にも言っていないけど、もう1つだけ隠していることがある。
それは、また今度話そうと思う。
「さっきから、一人でぶつぶつ何言ってんの? キモいんだけど」
「………キモいって世界で一番嫌いな言葉だ。ところで、怪我とかない? 大丈夫?」
「うん。大丈夫。アイツさぁ………。ダーリンが、やっつけたの?」
「いや~~~。人の命を弄ぶアイツに天罰が下っただけじゃね?」
「なんだ、その顔……。顎を伸ばすな! 腹立つ。ってか、急に雷が落ちるなんて明らかに変じゃん。何か、したでしょ? 私に隠し事しないでよ。可愛い彼女でしょ?」
「君は、ただの友達です。彼女ではありません」
「またまたぁ~。照れちゃってぇ」
ベタベタ甘えてくるネムを引き剥がし、立ち尽くしている奴隷二人に近づいた。二人は、主の変わり果てた姿にかなり動揺していた。
「アナタ達は、自由です。もう奴隷じゃない」
二人は、長年忘れていた自分の足で歩くと言うことを思い出し、僕に一度だけ頭を下げると足早にこの場を去った。
「はぁ………疲れたなぁ」
「今夜の夕飯、何?」
「食材買う金ないなぁ。どうしよっか?」
「この貧乏人っ!!」
「お前が言うなっ!!」
やっと。
悪夢の『運試し』が、終わった。
深夜。
カビた布団に横になると、すぐに疲労が睡魔を連れてきて、そのまま意識を失った。
『運』をかなり消費したからなぁ。ざっと、十年分の運を………。
使っ……。
た…………。
朝。と言うか、もう昼になっていた。
空腹で目が覚め、起き上がる。いつものように近所の不味い弁当屋で売れ残りを貰おうと外に出た。
「……………」
静かだった。
見上げると、若い竜が気持ち良さそうに空を旋回していた。僕と目が合うと、慌てて逃げた。
「……………猫以外の動物には、嫌われるんだよなぁ。なぜか」
商店街には、誰もいない。
嫌な予感がして、友達の家に走った。
「いな…ぃ………」
焦りと不安。
その時、気づいた。いつもは立入禁止になっている超高層タワー入口のゲートが開いていることに。厳つい銃を持った警備兵も見当たらない。
入口からチラッと見えたタワー内部は、初めて見る白さで、激しく輝き、ゴミの中で暮らしている僕からしたら、まさに天国のようだった。
無意識に体が、中へ中へと吸い込まれていく。
でもーーー。
何となく、分かっていた。この中は、天国なんかじゃない。むしろ、その逆。
そう、分かっていたのに気づいたらタワーの中で思い切り新鮮な空気をスーハースーハー。
呑気にそんなことしている間に入口は固く閉ざされ、もう出ることが出来なくなっていた。
「やっ…べ」
ねっとりと絡み付くような誰かの視線を感じる。
悪魔が、僕を品定めしているに違いない。
それは、また今度話そうと思う。
「さっきから、一人でぶつぶつ何言ってんの? キモいんだけど」
「………キモいって世界で一番嫌いな言葉だ。ところで、怪我とかない? 大丈夫?」
「うん。大丈夫。アイツさぁ………。ダーリンが、やっつけたの?」
「いや~~~。人の命を弄ぶアイツに天罰が下っただけじゃね?」
「なんだ、その顔……。顎を伸ばすな! 腹立つ。ってか、急に雷が落ちるなんて明らかに変じゃん。何か、したでしょ? 私に隠し事しないでよ。可愛い彼女でしょ?」
「君は、ただの友達です。彼女ではありません」
「またまたぁ~。照れちゃってぇ」
ベタベタ甘えてくるネムを引き剥がし、立ち尽くしている奴隷二人に近づいた。二人は、主の変わり果てた姿にかなり動揺していた。
「アナタ達は、自由です。もう奴隷じゃない」
二人は、長年忘れていた自分の足で歩くと言うことを思い出し、僕に一度だけ頭を下げると足早にこの場を去った。
「はぁ………疲れたなぁ」
「今夜の夕飯、何?」
「食材買う金ないなぁ。どうしよっか?」
「この貧乏人っ!!」
「お前が言うなっ!!」
やっと。
悪夢の『運試し』が、終わった。
深夜。
カビた布団に横になると、すぐに疲労が睡魔を連れてきて、そのまま意識を失った。
『運』をかなり消費したからなぁ。ざっと、十年分の運を………。
使っ……。
た…………。
朝。と言うか、もう昼になっていた。
空腹で目が覚め、起き上がる。いつものように近所の不味い弁当屋で売れ残りを貰おうと外に出た。
「……………」
静かだった。
見上げると、若い竜が気持ち良さそうに空を旋回していた。僕と目が合うと、慌てて逃げた。
「……………猫以外の動物には、嫌われるんだよなぁ。なぜか」
商店街には、誰もいない。
嫌な予感がして、友達の家に走った。
「いな…ぃ………」
焦りと不安。
その時、気づいた。いつもは立入禁止になっている超高層タワー入口のゲートが開いていることに。厳つい銃を持った警備兵も見当たらない。
入口からチラッと見えたタワー内部は、初めて見る白さで、激しく輝き、ゴミの中で暮らしている僕からしたら、まさに天国のようだった。
無意識に体が、中へ中へと吸い込まれていく。
でもーーー。
何となく、分かっていた。この中は、天国なんかじゃない。むしろ、その逆。
そう、分かっていたのに気づいたらタワーの中で思い切り新鮮な空気をスーハースーハー。
呑気にそんなことしている間に入口は固く閉ざされ、もう出ることが出来なくなっていた。
「やっ…べ」
ねっとりと絡み付くような誰かの視線を感じる。
悪魔が、僕を品定めしているに違いない。
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