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14 出会い

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夢を見た。いつも見る怖い夢ではなく、とても懐かしく………良い夢だった。

朝起きて夢から覚めると、なんだか……こう…………。胸がジンとした。僕は、またあの夏祭りの夜を思い出す。

神様に初めて会った夜。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

「そろそろ帰るよ。母さんが心配するからさ」

「えっ、もう帰るのか? 花火だってこれからだぞ」

屋台で順番待ちをしているタカシにサヨナラし、僕は家に帰るふりをしてタカシにばれないように神社に向かった。神社は山の奥にあって、なかなか人も来ない。

「……………」

誰もいなかった。ちょうど良い。一人になりたかったから。

夜空の星を数えるのに飽き、持っていたりんご飴の棒をゴミ箱に投げ捨てた。

「そろそろ、帰ろう」

やけに大きな独り言。

今夜は、この地区の夏祭り。女性の甲高い笑い声を背中で聞きながら、神社を後にした。

その時ーーーーー。



「……遊ぼ?」

声がした。小さい声だった。振り返るが、誰もいない。ただ、蛍が一匹飛んでいるだけ。

「この蛍の姿。驚いた? すごいでしょ~」

可愛い蛍は、僕の周りをグルッと一周すると肩にピタッと止まった。

「とても不思議だけど………。じゃあ……さ。一緒に花火を見よう。まだ始まったばかりだから」

「うん」

これが、誰かのイタズラでもかまわない。僕はただ、この蛍ともっと長く一緒にいたかった。

肩に蛍を乗せたまま、花火が見える河原まで行った。河原には、人がいっぱいで座れる場所がなかった。

赤、青、黄色……。

いろんな色が複雑に混ざりあい、目の前で弾けている。

「きれいだね。宝石みたい」

「うん」

蛍の光は、花火に負けないくらい僕には輝いて見えた。

「キミは、この町好き?」

「昔は好きだったけど……。今は、そうでもない」

「ふ~ん。私は、この町が大好きだよ。山も川も綺麗だし。美味しい食べ物もいっぱいあるしね」

急に涙が出そうになった。理由は、分からない。

「どうしたの?」

「なんでもない。……なんでもないよ」

どうしてこんなに悲しいのかな。

「大丈夫?」

「大丈夫だよ。ごめん」

「……………」

花火が終わるアナウンスと共に人が川原から動き始めた。二十分もすると僕たち以外誰もいなくなった。

「また会える?」

なるべく笑顔で話しかけた。

「分からない」

「そっ…か………」

最後のほうは、涙声になっていた。

「ごめんなさい。今日だって、パパにうんとお願いして、ようやく。特別に今夜だけ時間もらえたから。わたし………。実は神様なの。まだまだ見習いだけどね。だから、あんまり人間とは仲良く出来ないの」

神様だと名乗る蛍は、たぶん。涙がこぼれないように夜空を見ていたんだと思う。

そんな気がした。

「ありがとう。こんなに私のことを想ってくれて。また会えるよ。きっと。あなたは、特別だから」

僕の頬に優しく触れ、離れていく。

「もう時間みたい。パパが呼んでる。行かなくちゃ……。さようなら、ハクシくん」

「待って! まだ話したいことがあるんだ。まだ、」

蛍の光を追いながら、暗い林道を走った。神社に戻るとオレンジに輝く光の粒が、天から降ってきた。それが、フワッと舞い始める。僕の周りを。

あたたかい雪のようだった。その光から神様の声が聞こえた。

「今日は、楽しかったよ。キミに会えて本当に良かった。去年の夏祭り、覚えてる? 屋台の側でさ、捨てられた三匹の金魚の為に泣いてくれたよね。今、その金魚ちゃん。天国の湖で元気に泳いでるよ」

神様の声を聞いてると、自然と涙が溢れてきた。
最後に、僕は一番気になっていたことを聞いてみた。

「次は、人間の姿で会える?」


「かもね~」

突然、左の頬にキスされた。ビクッとして振り向くと白い衣を纏った銀髪の少女が、僕を見ながら微笑んでいた。

「……きれ…い」

「ありがとう。キミに言われると照れちゃう……」

瞬きすることさえ勿体ない。そんな奇跡的な美しさ。しばらく思考が停止。その後、すぐに手をのばしたけど女の子は幻のように僕の前から消えてしまった。
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