上 下
11 / 39

11 ◯◯◯家

しおりを挟む
神様を家に呼び、前から気になっていたことを聞いてみた。

「あの、さ………。僕の親のことなんだけど。どこに行ったの? もう何週間……いや、もっと…………長く見てない。おかしいだろ、覚えていないなんて。どうせ、神様が関わってるんでしょ?」

「それを知ったら、あなたは……」

今まで見たことのない寂しい顔で、僕を見つめる神様。そのキレイな両目からは、今にも涙が溢れそう。

卑怯。
そんな顔されたらさ………。もう、何も言えない。

「神様が言いたくなったら、教えてよ。ふぅ~~、あ~~~。久しぶりに二人でゲームする? 菓子とか買ってさ、朝までやろうぜ」

「ハクシ………。私を許して」

聞こえない振り。

「聞こえない振りしないで」

「あのさ。とりあえず、キスしても良い?」

「フフ……。ハクシって、たまにスゴいこと言うよね。神に欲情するなんて、良い度胸してる。まぁ、でもいいよ。君は特別だから」

彼女を失いたくなかった。親の話を聞くことで今の二人の関係が無になってしまうなら、知らなくても良い。

とりあえず、今はーーーー。


◆◆◆◆◆◆【◯◯◯家】◆◆◆◆◆◆

この家に比べたら、牢屋の方がまだ温かい。

本気でそう思う。

昔から、我が家には母が決めたいくつかのルールが存在していて。母の言うことは絶対。反論は許されない。前に一度、父が母の態度に軽く注意をしたことがあった。


「………………」

その後すぐ、父は行方不明に。

世間的には、行方不明。でも実際は、今もこの家の庭で腐敗を続けている。そんな異常事態にもかかわらず、『特別な教育』を受けていた僕と妹は、父が悪いことをしたから母に罰せられたとしか思わなかった。


父がいない、母と子の貧乏な生活。
新聞配達、飲食店などのアルバイトに精を出す毎日だった。


ある日。バイトとつまらない授業で疲れきった僕を母が心配して。


「大丈夫?」

「うん。大丈夫」

「嘘………。疲れた顔してるよ?」

「……………」

雪のように白い母の顔。


「もう一人減れば、生活も少しは楽になるんじゃない?」

「いやっ!! 僕なら大丈夫だから。バイトだって、今以上に頑張るし。大丈夫だから」

「道子を台所に連れてきなさい」

「母さんっ! 妹は関係ない」

「返事は?」

「……はぃ」


…………………………。
……………………。
………………。


その晩。庭に死体が増えた。
僕が、父のすぐそばに埋めた。


母をーーーーー。


「ねぇ、お兄ちゃん。これからは、二人で力を合わせて頑張ろうね!」

「あぁ……」


僕は今、母以上の狂人と二人で暮らしている。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

婚約者すらいない私に、離縁状が届いたのですが・・・・・・。

夢草 蝶
恋愛
 侯爵家の末姫で、人付き合いが好きではないシェーラは、邸の敷地から出ることなく過ごしていた。  そのため、当然婚約者もいない。  なのにある日、何故かシェーラ宛に離縁状が届く。  差出人の名前に覚えのなかったシェーラは、間違いだろうとその離縁状を燃やしてしまう。  すると後日、見知らぬ男が怒りの形相で邸に押し掛けてきて──?

ほんとうに、そこらで勘弁してくださいっ ~盗聴器が出てきました……~

菱沼あゆ
キャラ文芸
 盗聴器が出てきました……。 「そこらで勘弁してください」のその後のお話です。

【完結】亡き冷遇妃がのこしたもの〜王の後悔〜

なか
恋愛
「セレリナ妃が、自死されました」  静寂をかき消す、衛兵の報告。  瞬間、周囲の視線がたった一人に注がれる。  コリウス王国の国王––レオン・コリウス。  彼は正妃セレリナの死を告げる報告に、ただ一言呟く。 「構わん」……と。  周囲から突き刺さるような睨みを受けても、彼は気にしない。  これは……彼が望んだ結末であるからだ。  しかし彼は知らない。  この日を境にセレリナが残したものを知り、後悔に苛まれていくことを。  王妃セレリナ。  彼女に消えて欲しかったのは……  いったい誰か?    ◇◇◇  序盤はシリアスです。  楽しんでいただけるとうれしいです。    

【完結】婚約破棄されたので、引き継ぎをいたしましょうか?

碧桜 汐香
恋愛
第一王子に婚約破棄された公爵令嬢は、事前に引き継ぎの準備を進めていた。 まっすぐ領地に帰るために、その場で引き継ぎを始めることに。 様々な調査結果を暴露され、婚約破棄に関わった人たちは阿鼻叫喚へ。 第二王子?いりませんわ。 第一王子?もっといりませんわ。 第一王子を慕っていたのに婚約破棄された少女を演じる、彼女の本音は? 彼女の存在意義とは? 別サイト様にも掲載しております

今更気付いてももう遅い。

ユウキ
恋愛
ある晴れた日、卒業の季節に集まる面々は、一様に暗く。 今更真相に気付いても、後悔してももう遅い。何もかも、取り戻せないのです。

婚約者に消えろと言われたので湖に飛び込んだら、気づけば三年が経っていました。

束原ミヤコ
恋愛
公爵令嬢シャロンは、王太子オリバーの婚約者に選ばれてから、厳しい王妃教育に耐えていた。 だが、十六歳になり貴族学園に入学すると、オリバーはすでに子爵令嬢エミリアと浮気をしていた。 そしてある冬のこと。オリバーに「私の為に消えろ」というような意味のことを告げられる。 全てを諦めたシャロンは、精霊の湖と呼ばれている学園の裏庭にある湖に飛び込んだ。 気づくと、見知らぬ場所に寝かされていた。 そこにはかつて、病弱で体の小さかった辺境伯家の息子アダムがいた。 すっかり立派になったアダムは「あれから三年、君は目覚めなかった」と言った――。

少女探偵

ハイブリッジ万生
キャラ文芸
少女の探偵と愉快な仲間たち

私の周りの裏表

愛’茶
キャラ文芸
市立桜ノ小路女学園生徒会の会長は、品行方正、眉目秀麗、文武両道、学園切っての才女だった。誰もが憧れ、一目を置く存在。しかしそんな彼女には誰にも言えない秘密があった。

処理中です...