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11 ◯◯◯家
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神様を家に呼び、前から気になっていたことを聞いてみた。
「あの、さ………。僕の親のことなんだけど。どこに行ったの? もう何週間……いや、もっと…………長く見てない。おかしいだろ、覚えていないなんて。どうせ、神様が関わってるんでしょ?」
「それを知ったら、あなたは……」
今まで見たことのない寂しい顔で、僕を見つめる神様。そのキレイな両目からは、今にも涙が溢れそう。
卑怯。
そんな顔されたらさ………。もう、何も言えない。
「神様が言いたくなったら、教えてよ。ふぅ~~、あ~~~。久しぶりに二人でゲームする? 菓子とか買ってさ、朝までやろうぜ」
「ハクシ………。私を許して」
聞こえない振り。
「聞こえない振りしないで」
「あのさ。とりあえず、キスしても良い?」
「フフ……。ハクシって、たまにスゴいこと言うよね。神に欲情するなんて、良い度胸してる。まぁ、でもいいよ。君は特別だから」
彼女を失いたくなかった。親の話を聞くことで今の二人の関係が無になってしまうなら、知らなくても良い。
とりあえず、今はーーーー。
◆◆◆◆◆◆【◯◯◯家】◆◆◆◆◆◆
この家に比べたら、牢屋の方がまだ温かい。
本気でそう思う。
昔から、我が家には母が決めたいくつかのルールが存在していて。母の言うことは絶対。反論は許されない。前に一度、父が母の態度に軽く注意をしたことがあった。
「………………」
その後すぐ、父は行方不明に。
世間的には、行方不明。でも実際は、今もこの家の庭で腐敗を続けている。そんな異常事態にもかかわらず、『特別な教育』を受けていた僕と妹は、父が悪いことをしたから母に罰せられたとしか思わなかった。
父がいない、母と子の貧乏な生活。
新聞配達、飲食店などのアルバイトに精を出す毎日だった。
ある日。バイトとつまらない授業で疲れきった僕を母が心配して。
「大丈夫?」
「うん。大丈夫」
「嘘………。疲れた顔してるよ?」
「……………」
雪のように白い母の顔。
「もう一人減れば、生活も少しは楽になるんじゃない?」
「いやっ!! 僕なら大丈夫だから。バイトだって、今以上に頑張るし。大丈夫だから」
「道子を台所に連れてきなさい」
「母さんっ! 妹は関係ない」
「返事は?」
「……はぃ」
…………………………。
……………………。
………………。
その晩。庭に死体が増えた。
僕が、父のすぐそばに埋めた。
母をーーーーー。
「ねぇ、お兄ちゃん。これからは、二人で力を合わせて頑張ろうね!」
「あぁ……」
僕は今、母以上の狂人と二人で暮らしている。
「あの、さ………。僕の親のことなんだけど。どこに行ったの? もう何週間……いや、もっと…………長く見てない。おかしいだろ、覚えていないなんて。どうせ、神様が関わってるんでしょ?」
「それを知ったら、あなたは……」
今まで見たことのない寂しい顔で、僕を見つめる神様。そのキレイな両目からは、今にも涙が溢れそう。
卑怯。
そんな顔されたらさ………。もう、何も言えない。
「神様が言いたくなったら、教えてよ。ふぅ~~、あ~~~。久しぶりに二人でゲームする? 菓子とか買ってさ、朝までやろうぜ」
「ハクシ………。私を許して」
聞こえない振り。
「聞こえない振りしないで」
「あのさ。とりあえず、キスしても良い?」
「フフ……。ハクシって、たまにスゴいこと言うよね。神に欲情するなんて、良い度胸してる。まぁ、でもいいよ。君は特別だから」
彼女を失いたくなかった。親の話を聞くことで今の二人の関係が無になってしまうなら、知らなくても良い。
とりあえず、今はーーーー。
◆◆◆◆◆◆【◯◯◯家】◆◆◆◆◆◆
この家に比べたら、牢屋の方がまだ温かい。
本気でそう思う。
昔から、我が家には母が決めたいくつかのルールが存在していて。母の言うことは絶対。反論は許されない。前に一度、父が母の態度に軽く注意をしたことがあった。
「………………」
その後すぐ、父は行方不明に。
世間的には、行方不明。でも実際は、今もこの家の庭で腐敗を続けている。そんな異常事態にもかかわらず、『特別な教育』を受けていた僕と妹は、父が悪いことをしたから母に罰せられたとしか思わなかった。
父がいない、母と子の貧乏な生活。
新聞配達、飲食店などのアルバイトに精を出す毎日だった。
ある日。バイトとつまらない授業で疲れきった僕を母が心配して。
「大丈夫?」
「うん。大丈夫」
「嘘………。疲れた顔してるよ?」
「……………」
雪のように白い母の顔。
「もう一人減れば、生活も少しは楽になるんじゃない?」
「いやっ!! 僕なら大丈夫だから。バイトだって、今以上に頑張るし。大丈夫だから」
「道子を台所に連れてきなさい」
「母さんっ! 妹は関係ない」
「返事は?」
「……はぃ」
…………………………。
……………………。
………………。
その晩。庭に死体が増えた。
僕が、父のすぐそばに埋めた。
母をーーーーー。
「ねぇ、お兄ちゃん。これからは、二人で力を合わせて頑張ろうね!」
「あぁ……」
僕は今、母以上の狂人と二人で暮らしている。
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