理想的な夫婦

カラスヤマ

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⑫オマケ

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夕飯後。

「何か面白い番組あった?」

テレビを見ていたら、洗い物を終えたモモちゃんが僕の横に来た。二人で仲良くソファーに横並びに座る。


「今、格闘技の祭典やってるよ。そういえば、モモちゃんも格闘技好きでしょ?」

「うん! 大好きっ!! 血湧き肉躍るぅ」

しばらく見ていると、横から舌打ちが聞こえ始めた。

「チッ……。あ~!  そこはもっとたたみ掛けないと!!」

「…………」

「あのさぁ。そ、ほんっ、そういう余計なパフォーマンス、ほんっと要らないから!」

「モモちゃん?」

「ってかさぁ! はぁ~」

「ソファーを殴らないで」

鼻息が荒い。目が血走っており、少し恐かった。モモちゃんは、CM中も試合内容に対して、あれこれ文句を言っていた。

そういえば勝負事になるとモモちゃんの性格が変わるんだった。だいぶ悪い方にーー。

「タツ君。私とスパーリングして?」

「んぇ!? スパーリング?  モモちゃんと?」

「うん。軽くでいいからさ。早く立って」

それから三十分。妻との謎のスパーリングが始まった。仕方ないので、モモちゃんのパンチを軽く受け流していた。

「殴ってきてよ! タツ君も」

「いや、あの……」

「お願い~」

アライグマのように僕におねだりしてきた。仕方ないので、力を加減しながらモモちゃんの体に拳を繰り出す。

「バカにしてるんですか?  女だと思って」

「………分かったよ」

少しイラッとした為、加速させた。

意外にもモモちゃんは、僕の動きについてきた。もしかしたら、学生時代に女子ボクシングをかじってたのかな?

パツっ!

「あっ! ごめん。少し当たっちゃった」

「………っ…」

静かに僕から離れるとソファーの上に三角座りで拗ねてしまった。

「モモちゃん?」

「来世まで許さないから……」

涙目で睨んできた。

「面倒臭いな、なんか!」

「…………どうせ私なんて…面倒臭い苔女ですよ~」

ぶつぶつ言いながら、モモちゃんはパジャマ姿でどこかに出かけてしまった。

………………………………。
…………………………。
…………………。

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

「タツ君」

巨大なマンションを振り返る。
さっきは、悪いことしちゃった……。タツ君の大好きな餅アイス買って許してもらおう。私は、コンビニまで走った。

明るいコンビニ入口横に髪が鮮やかな男が数人いて、ギャーギャー騒いでいた。

「ねぇねぇ~、可愛いねぇ。俺らと遊ばない?」

「……遊ばない」

「いいじゃん、いいじゃん、いいじゃんかよ~」

邪魔で仕方ない。死なない程度に眠ってもらおっかな。

痩せた男の一人に肩を触られた時。

「蟻が」

男の体が数メートル吹き飛んだ。口と鼻、両方から血を流し、気絶していた。前歯が数本、行方不明に。

「大丈夫?」

タツ君が、私の肩の埃を払っていた。珍しく少し怒っている。私ほどではないけどなかなかのパンチ力。

「大丈夫……です…」

「心配だったから、来ちゃった」

照れ臭そうに笑っていた。

怒りを露に、私達を取り囲む男三人。

「あ、靴紐が解けてるよ?」

「ん?」

タツ君が下を向いた瞬間に私の猫パンチで男三人を吹き飛ばした。加減したけど、それでも前歯全てが行方不明になってしまった。

「あれ? アイツら、どうした?」

「勝手に仲間割れして全滅したみたい。バカだよね~」

「そうなんだ。コンビニで何か買ってく?」


完全に仲直りした私達。マンションに帰り、コンビニで買った餅アイスをアニメを見ながら二人で食べた。

「「 美味しいね~ 」」
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