殺し屋しかいない世界

カラスヤマ

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SとM

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ずっと彼と一緒に暮らしてきた古城に初めての客を連れてきた。

「今日からあなたは、羽臼 楓じゃなくてこっちの世界でハウスとして生きるんです。二度と元の世界には戻れないかもしれない。……それでも、大丈夫?」

「はい! 大丈夫です。お兄ちゃんが私を助けてくれたから。だから、今度は私が彼を助けます!」

私は、両手でハウスの顔を固定すると、そっとキスをした。ハウスは、驚いた顔をした後、茹でダコのように顔が真っ赤になる。

「い、い、いっ、なんで!!」

「私は、口移しでしか魔力を相手にあげられないから……。いきなりで、ごめんね。時間がなくて。今、キミに私の力をすべて移した。身体能力は、人間の力を遥かに越えたはずだよ。その力を上手く利用して、王様の娘に気に入られなさい」

「王様の娘?」

「とっても残酷で、狡猾。嫌な女だよ。彼は、いずれソイツと結婚し、盲目の王になる。それが嫌なら、白銀の城に今も幽閉されてる彼をあなたが異世界に逃がしなさい。さっきの魔法の力で、ゲートはいつでも開けるはずだから。彼が、度々記憶を無くすことも忘れないでね」

「……彼を逃がした後、どうするんですか?」

「王の娘を殺しなさい。本当に彼を解放するには、もうそれしかない。異世界に逃がすのは、時間稼ぎでしかないから。ただ……。一番厄介なのは………。あの女には、なぜか魔法が全く通用しないことなんだよね。私ですら、触れることさえ出来なかった。だから魔法でどれだけ能力強化しても、あなたにも娘は殺せない。方法があるとしたら……娘を殺せる、そんな狂人、悪魔を探して連れてくるしかない」

「分かりました。あなたは、これからどうするんですか?」

女の子の頭をナデナデする。
私の心配までしてくれる、とっても優しい子。でもね、ハウス。その優しさは、これからは命取りだよ。

目的を達成する為には、もっともっともっともっともっともっともっともっーーーーーーーと残酷にならなくちゃ。

………………………………。
………………………。
…………………。

城の周囲を娘が指揮する兵隊蟻に囲まれた。礼儀を知らないゴミ。私は、お別れのキスをするとハウスを隠し部屋から外に逃がした。


ーーーーーーーーーーーーーー

鎧を着たウジ虫。

「魔女、ナタリ・グリムだな。王命により、お前を投獄する。さぁ、両手を前に出せ。早くしろ!!」

「………どうせさぁ、生きたまま火あぶりでしょ? 無意味な魔女裁判なんか必要ない。最後くらい自分で決めるって」

私は、最後の力で、地獄の黒炎を口から吐き出すと部屋全体に撒き散らした。

「やめろっっ!!」


ズダダダダダダダッッ。

安い銃で穴が空いた腹や手足からも炎が噴き出す。

全身が、黒い炎に嬲られる。


『どうか、私の分まで幸せになって下さいね』


ダンッッ!!

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