6 / 18
異世界 一日目
しおりを挟む
店長らしきオヤジに飲食代金分を働くように言われた私達は、閉店後に店内の掃除をしていた。
「あのさぁ、そこまだ汚れてるんですけどぉ。適当にやらないでくださぁい」
ベチィ!!
さっきまで愛想の良かった猫耳娘が、今は女王様のように『私にだけ』あたりが強い。細い鞭でことあるごとに尻を叩かれる。
「痛っ……。分かりました。ってか、エムはどこですか? さっきから姿が見えないけど」
「今、姉さんはまかないを食べてるよ。人の心配は良いから、まず手を動かして」
姉さん?
「はぃ……」
一時間後。
ようやく掃除が終わった報告に行くと、エムと猫耳娘は仲良く談笑していた。
「掃除終わりました。はぁ~、エム……。そろそろ帰ろう」
「うん。分かったぁ」
「えぇ!? 姉さん、もう行っちゃうんですか? もう少しゆっくりしていけば良いのに」
エムにくっつく猫耳娘。本当に猫のようにゴロゴロ甘えた声を出していた。
「ん?」
なんだろう……。
やけに外が騒がしい。様子を見に行くと店の扉をどんどん叩きながら騒いでいる近所迷惑な男が二人いた。
柄の悪そうな連中だった。どこの世界にも似たような奴はいるらしい。
走ってきた猫耳娘は、陰から眺めていた私を突き飛ばし、彼らに頭を下げて必死に何かを謝っていた。
話している内容から察すると、どうやら彼らは金貸しで集金に来た。金がないことが分かると、古臭いやり方なんだけど。猫耳娘を連れていこうとしている。………時代劇じゃあるまいし。
別に恩があるわけじゃないから、放っておこうと思った。それに下手に目立ちたくもないし。
「どぅりゃあぁあ!」
飛び蹴りを派手にくらわすエム。小さなエムだが、力比べなら大の大人三人分は軽くある。
ぼろぼろの男達は、慌てて逃げていく。
「あまり目立たない方が良いよ。ここは、私達の住む世界とは違うんだから」
「はいはい。でも、殺さないだけマシじゃん」
店を後にした私達は、今夜泊まる宿を探すことにした。後ろから、ダッシュで私達を追ってきた猫耳娘。
「はぁ………はぁ…………ぁ。と、泊まる場所、探してるんです? それなら、私の家に来ませんか? 少し狭いですけど姉さん一人なら何とかなりますし」
いや、ワタシ八?
「いいの? 助かるよ。ありがとう、ネコちゃん」
私達は、猫耳娘の家に泊まることにした。ちゃんと私が寝る場所も用意してくれた。床に。かなり薄い布団も貸してくれた。
日付が変わる少し前ーーーー。
私とエムは、猫耳娘を起こさないように静かに部屋を抜け出した。
「な~んだ。考えることは一緒か」
「リサのそういうところ好きぃ!」
「しぃ、静かに。起きちゃうよ」
子悪党のアジトへゴー!!
腐った魚をさばく。一匹ずつ。確実に。
「またお前らか! いったい、何しに来たっ!! こんなことしてただで済むと」
「うるさいよ、お前」
「粛清~、粛清~」
誰もいなくなり、静かになったアジトを漁る。借用書他、すべての記録を燃やした。建物も含めて。
「猫への恩返し、完了っ!!」
「ぁ~眠い。帰って二度寝しよう」
「くっついて寝たい。ギュッ、ギュッ~てしながら……。ダメ?」
「ダメ」
「お前のそういうところ大嫌いだよ」
そんなこんなで異世界一日目が無事終了した。
「あのさぁ、そこまだ汚れてるんですけどぉ。適当にやらないでくださぁい」
ベチィ!!
さっきまで愛想の良かった猫耳娘が、今は女王様のように『私にだけ』あたりが強い。細い鞭でことあるごとに尻を叩かれる。
「痛っ……。分かりました。ってか、エムはどこですか? さっきから姿が見えないけど」
「今、姉さんはまかないを食べてるよ。人の心配は良いから、まず手を動かして」
姉さん?
「はぃ……」
一時間後。
ようやく掃除が終わった報告に行くと、エムと猫耳娘は仲良く談笑していた。
「掃除終わりました。はぁ~、エム……。そろそろ帰ろう」
「うん。分かったぁ」
「えぇ!? 姉さん、もう行っちゃうんですか? もう少しゆっくりしていけば良いのに」
エムにくっつく猫耳娘。本当に猫のようにゴロゴロ甘えた声を出していた。
「ん?」
なんだろう……。
やけに外が騒がしい。様子を見に行くと店の扉をどんどん叩きながら騒いでいる近所迷惑な男が二人いた。
柄の悪そうな連中だった。どこの世界にも似たような奴はいるらしい。
走ってきた猫耳娘は、陰から眺めていた私を突き飛ばし、彼らに頭を下げて必死に何かを謝っていた。
話している内容から察すると、どうやら彼らは金貸しで集金に来た。金がないことが分かると、古臭いやり方なんだけど。猫耳娘を連れていこうとしている。………時代劇じゃあるまいし。
別に恩があるわけじゃないから、放っておこうと思った。それに下手に目立ちたくもないし。
「どぅりゃあぁあ!」
飛び蹴りを派手にくらわすエム。小さなエムだが、力比べなら大の大人三人分は軽くある。
ぼろぼろの男達は、慌てて逃げていく。
「あまり目立たない方が良いよ。ここは、私達の住む世界とは違うんだから」
「はいはい。でも、殺さないだけマシじゃん」
店を後にした私達は、今夜泊まる宿を探すことにした。後ろから、ダッシュで私達を追ってきた猫耳娘。
「はぁ………はぁ…………ぁ。と、泊まる場所、探してるんです? それなら、私の家に来ませんか? 少し狭いですけど姉さん一人なら何とかなりますし」
いや、ワタシ八?
「いいの? 助かるよ。ありがとう、ネコちゃん」
私達は、猫耳娘の家に泊まることにした。ちゃんと私が寝る場所も用意してくれた。床に。かなり薄い布団も貸してくれた。
日付が変わる少し前ーーーー。
私とエムは、猫耳娘を起こさないように静かに部屋を抜け出した。
「な~んだ。考えることは一緒か」
「リサのそういうところ好きぃ!」
「しぃ、静かに。起きちゃうよ」
子悪党のアジトへゴー!!
腐った魚をさばく。一匹ずつ。確実に。
「またお前らか! いったい、何しに来たっ!! こんなことしてただで済むと」
「うるさいよ、お前」
「粛清~、粛清~」
誰もいなくなり、静かになったアジトを漁る。借用書他、すべての記録を燃やした。建物も含めて。
「猫への恩返し、完了っ!!」
「ぁ~眠い。帰って二度寝しよう」
「くっついて寝たい。ギュッ、ギュッ~てしながら……。ダメ?」
「ダメ」
「お前のそういうところ大嫌いだよ」
そんなこんなで異世界一日目が無事終了した。
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説
【完結】捨てられ正妃は思い出す。
なか
恋愛
「お前に食指が動くことはない、後はしみったれた余生でも過ごしてくれ」
そんな言葉を最後に婚約者のランドルフ・ファルムンド王子はデイジー・ルドウィンを捨ててしまう。
人生の全てをかけて愛してくれていた彼女をあっさりと。
正妃教育のため幼き頃より人生を捧げて生きていた彼女に味方はおらず、学園ではいじめられ、再び愛した男性にも「遊びだった」と同じように捨てられてしまう。
人生に楽しみも、生きる気力も失った彼女は自分の意志で…自死を選んだ。
再び意識を取り戻すと見知った光景と聞き覚えのある言葉の数々。
デイジーは確信をした、これは二度目の人生なのだと。
確信したと同時に再びあの酷い日々を過ごす事になる事に絶望した、そんなデイジーを変えたのは他でもなく、前世での彼女自身の願いであった。
––次の人生は後悔もない、幸福な日々を––
他でもない、自分自身の願いを叶えるために彼女は二度目の人生を立ち上がる。
前のような弱気な生き方を捨てて、怒りに滾って奮い立つ彼女はこのくそったれな人生を生きていく事を決めた。
彼女に起きた心境の変化、それによって起こる小さな波紋はやがて波となり…この王国でさえ変える大きな波となる。
【完結】父が再婚。義母には連れ子がいて一つ下の妹になるそうですが……ちょうだい癖のある義妹に寮生活は無理なのでは?
つくも茄子
ファンタジー
父が再婚をしました。お相手は男爵夫人。
平民の我が家でいいのですか?
疑問に思うものの、よくよく聞けば、相手も再婚で、娘が一人いるとのこと。
義妹はそれは美しい少女でした。義母に似たのでしょう。父も実娘をそっちのけで義妹にメロメロです。ですが、この新しい義妹には悪癖があるようで、人の物を欲しがるのです。「お義姉様、ちょうだい!」が口癖。あまりに煩いので快く渡しています。何故かって?もうすぐ、学園での寮生活に入るからです。少しの間だけ我慢すれば済むこと。
学園では煩い家族がいない分、のびのびと過ごせていたのですが、義妹が入学してきました。
必ずしも入学しなければならない、というわけではありません。
勉強嫌いの義妹。
この学園は成績順だということを知らないのでは?思った通り、最下位クラスにいってしまった義妹。
両親に駄々をこねているようです。
私のところにも手紙を送ってくるのですから、相当です。
しかも、寮やクラスで揉め事を起こしては顰蹙を買っています。入学早々に学園中の女子を敵にまわしたのです!やりたい放題の義妹に、とうとう、ある処置を施され・・・。
なろう、カクヨム、にも公開中。
愚かな父にサヨナラと《完結》
アーエル
ファンタジー
「フラン。お前の方が年上なのだから、妹のために我慢しなさい」
父の言葉は最後の一線を越えてしまった。
その言葉が、続く悲劇を招く結果となったけど・・・
悲劇の本当の始まりはもっと昔から。
言えることはただひとつ
私の幸せに貴方はいりません
✈他社にも同時公開
(完結)私は家政婦だったのですか?(全5話)
青空一夏
恋愛
夫の母親を5年介護していた私に子供はいない。お義母様が亡くなってすぐに夫に告げられた言葉は「わたしには6歳になる子供がいるんだよ。だから離婚してくれ」だった。
ありがちなテーマをさくっと書きたくて、短いお話しにしてみました。
さくっと因果応報物語です。ショートショートの全5話。1話ごとの字数には偏りがあります。3話目が多分1番長いかも。
青空異世界のゆるふわ設定ご都合主義です。現代的表現や現代的感覚、現代的機器など出てくる場合あります。貴族がいるヨーロッパ風の社会ですが、作者独自の世界です。
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
王が気づいたのはあれから十年後
基本二度寝
恋愛
王太子は妃の肩を抱き、反対の手には息子の手を握る。
妃はまだ小さい娘を抱えて、夫に寄り添っていた。
仲睦まじいその王族家族の姿は、国民にも評判がよかった。
側室を取ることもなく、子に恵まれた王家。
王太子は妃を優しく見つめ、妃も王太子を愛しく見つめ返す。
王太子は今日、父から王の座を譲り受けた。
新たな国王の誕生だった。
悪役令嬢の世直し奮闘記 ~お願いだから皆会話して~
ケチャップかみ
ファンタジー
乙女ゲーの悪役令嬢に転生してしまったチビ少女が、死にたくないから原作を変えようと頑張った。
けど、原作ラストのパーティの流れは変えられず婚約破棄からの幽閉。
に、なると思われたがなんか原作にいないアインハルト嬢のおかげで助かった。
助かったは、いいけどこの娘、会話がまったく成立しない困った令嬢で、なんか流され流されで、世直しするはめになった。
なんで???
私はいけにえ
七辻ゆゆ
ファンタジー
「ねえ姉さん、どうせ生贄になって死ぬのに、どうしてご飯なんて食べるの? そんな良いものを食べたってどうせ無駄じゃない。ねえ、どうして食べてるの?」
ねっとりと息苦しくなるような声で妹が言う。
私はそうして、一緒に泣いてくれた妹がもう存在しないことを知ったのだ。
****リハビリに書いたのですがダークすぎる感じになってしまって、暗いのが好きな方いらっしゃったらどうぞ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる