【R18】豹変年下オオカミ君の恋愛包囲網〜策士な後輩から逃げられません!〜

湊未来

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満たされない幸福 ※

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ぴちゃぴちゃと響く水音が脳を犯していく。

ーーー私は狂ってしまったのか………

元彼との行為を気持ち良いと感じた事はなかった。確かに直接与えられる愛撫に濡れる事はあっても脳が痺れるような快楽を感じた事などなかったのだ。

「………うっ…あぁっ………」

目の前の彼が漏らすくぐもった声を聴くたび、奥底が疼いて仕方ない。
愛撫を与えているのは確かに私だ。彼は指一本私に触れていない。私に触るのを嫌悪するかのように。

しかし、逃げられるのに逃げようとしない彼の行動は矛盾している。本当に嫌なら突き飛ばして逃げればいいのに、睨むだけで何の行動も起こさない。女の私には彼を押さえつけるだけの力はないのに。

だからこそ無言の免罪符を手に入れた私の行動はエスカレートしていく。

あのゾクゾクするような屈辱に濡れた瞳に貫かれたい。支配しているようで、彼の強い瞳に支配される不思議な感覚が私に愉悦を与えていた。

「貴方は被害者よね………
寂しい女の慰みモノになるのだから。
その屈辱に濡れた瞳。好きよ」

顎に手を添え、指先で彼の唇をなぞる。薄い唇が僅かに開き真っ白な歯が僅かに覗く。歯列を指先で撫でればゆっくりと開いていく唇に深く唇を合わせ、舌先をスルッと滑り込ませる。歯列をなぞり、逃げる舌を追いかけ無理矢理絡めれば、含み切れない唾液が顎を伝い首筋を流れていく。

ーーー彼はどこまで我慢出来るのかしら?

下腹部に当たる男性器はスラックスの下で明らかに自己主張をしている。
ベルトのバックルに手をかけ外すと、ファスナーをジリジリとゆっくり降ろす。
下着に隠されたそれを手のひらで優しく押しつぶせば、合わせた唇からくぐもった声が響く。

「ねぇ………
好きでもない女からの愛撫ですら感じてしまう貴方は負けを認めて降伏するしかないんじゃない?快楽に身を任せた方が楽になれる。だって貴方は私に襲われているだけ。被害者なんだもの」

耳元で囁く私の声は悪魔の呟き。しかし、頑な彼の心は折れない。きっと彼は私を嫌悪している事だろう。

嫌いな女からの愛撫にも感じてしまう未熟な身体が愛おしい。

ーーーさて、どちらが先に根をあげるか?

彼が私を襲えば私の勝ちだ。だから欲望を煽ってやる。

欲望に負け、嫌悪する女を襲う肉食獣のような彼に犯されたい。私をほっして欲しい。

それが寂しい私の望み………

下着を降ろせば、硬度を増した屹立が飛び出してくる。

「………ふふ…若いって良いわね」

長大で脈打つ起立はグロテスクで可愛らしさのカケラもないが、手を添え、先端を口に咥えればビックっと反応し、さらに硬度を増す姿はなんだか愛おしい。薄ら生える陰毛から先端に向け舐め上げれば、耐え切れず漏れた低い喘ぎ声に背中がゾクっとする。流石に全ては含む事は出来ない。舌を鈴口に絡ませ刺激すれば口内に独特な苦味が広がり、添えた両手で扱き上げればさらに屹立は硬度を増していった。

猫がミルクを飲む時のようなぴちゃぴちゃと響く水音と艶めいた喘ぎ声が混ざり合い、その場の空気が淫靡なモノへと変わっていく。

増していく官能………

………一瞬だった。

急な浮遊感と反転した視界に彼に担ぎ上げられたと知る。揺れる視線の先に真っ白な天井を見つけ、バフっと投げ落とされた先がベットの上だと気づく間もなく、のし掛かって来た彼に唇を塞がれていた。

両手をシーツに固定され、歯列をこじ開け侵入した彼の舌に口腔を犯される。
噛みつくようなキスに口内が切れたのか、鉄錆味の唾液が広がった。

「煽ったのはお前だからな………」

早急な手つきで、ワンピースの裾をたくし上げられ、ストッキングを破られ下着を引き下ろされる。

口にコンドームを咥え封を切った彼の姿に僅かな違和感を覚えるが次に起こった衝撃に、そんな違和感も霧散してしまう。

下腹部に感じる痛みを凌駕する壮絶な快感。疼き続けた最奥に撃ち込まれた強烈な刺激に蜜道が歓喜に震える。

痛みと共に与えられる快楽は私が望んだもの。元彼に捨てられポッカリ空いた穴を埋めてくれる筈の狂おしいまでに、私に向けられた欲望。

しかし、心は満たされない。

始めから分かっていた。

誰に元彼を重ねた所で心は満たされない。

激しく揺さぶられ与えられる快楽とは裏腹に冷えていく心。

ーーー罰なのだ………

彼を騙し、彼の純粋な心を弄んだ私に対する罰なのだ。

だったら最後まで酷い女であるべきだ。

心優しい彼が心底嫌う悪女で………

「………ははっ!」

「何がおかしい………」

怒りを宿した瞳で睨まれる。

「私の勝ちね。嫌だ嫌だと言いつつ、結局貴方は欲望に負けたのよ………」







目を覚ませば隣はもぬけの殻だった。窓から差し込む陽の光が身体を包み、少しだけ気分が晴れるような気がした。

ーーー最後まで彼の名前を知る事も、私の名前を問われる事もなかったなぁ。

一夜のアバンチュールは苦い想いだけを私に残す結果となった。

純粋な彼を傷つけた罪悪感と、騙してまで欲した幸福感を得られぬ絶望を胸に、30歳を迎えた朝は過ぎていく。

ーーー彼とはもう会うことはないだろう………











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