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心が泣いている ※

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「おぉぉぉぉ、お待ちください!! カイン様、私は男です! 早まってはいけません!!!!」

 シーツへと縫いつけられたリリアが叫ぶ。しかし、悲しいかなリリアの叫びは、黒い笑みを浮かべ己を見下ろすカインには届かない。

 ひぇぇぇぇ、カイン様が黒い。黒すぎるぅぅぅ。

 リリアの前では誠実な態度を崩さなかったカインの本性を垣間見て、リリアの背が震える。
 隠された本性を見たリリアが固まっている間に、手際よく彼女の両手首を紐で結び、ベッドヘッドに繋いだカインがニッコリと笑む。

『どこから持ってきたんだよぉ、そのひも』と、そんなどうでもいい事を考えてしまうくらいには、リリアの頭は混乱していた。

「これで、準備万端だね。じゃあ、尋問を始めよっか。怪しい侍従殿」

 黒い笑みを浮かべたカインが、リリアを見下ろしにじり寄る。そして、首元までキッチリしめたタイに手をかけるとシュッと解かれてしまった。

「あっ……」

「どうしたの? 侍従殿。タイを解いただけで、そんな怯えないでよ」

 美しい笑みを浮かべ、優しい声で紡がれる言葉はいつもと同じなのに、シャツのボタンをプツッ、プツッと外していくカインの行動が、リリアの恐怖を煽る。

「侍従殿は、なぜ執務室に侵入したのかな? 誰かの差し金だったりするのかな?」

「ち、違います!」

 間髪入れずに発したリリアの言葉にカインが胡乱な視線を投げる。疑われているのは明白だ。
 ただ、下手に言い訳を重ねれば、自分の首をしめかねないと理解しているリリアは口をつぐむしかない。

「これだけでは口を割らないようだねぇ。仕方ない、続きをしようか」

 艶然たる笑みを浮かべ見下すカインの指先がリリアの唇をひと撫でした次の瞬間、唇を塞がれていた。

 驚きでわずかに開いた唇の隙間をぬいカインの舌が差し込まれる。歯列をこじ開け口内深く分け入った舌が驚きで固まったリリアの舌に絡みつき、次の瞬間には離れていく。

 二人の唇を繋ぐ銀色の糸が切れて、消える。
 
 じゅるっと響かせ離れていくカインの唇を唖然と見つめることしか出来ないリリアの胸がズキリっと痛む。

 カイン様とのキス。なんで……

 ジクジクと痛み続ける心の意味をリリアは理解出来ない。

 呆然と宙を見上げるリリアの首筋に与えられたヌルッとした刺激と、ピリッとした痛みに意識が跳ねる。
 首筋に顔を埋めたカインの舌が、真っ白なリリアの柔肌を喰み、舐め上げたのだ。

「ひゃぁっ、あぁぁぁ……」

「男のくせに、ずいぶんと可愛い声を出すんだね。侍従殿は快感に弱いようだ」

 首筋を舐められ、吸われ、リリアの奥深くで官能の炎が灯る。しかし、性の知識に乏しいリリアは、その炎がいずれ燃え上がり、己を苦しめることになるということも理解出来ていなかった。

「男も女も感じる場所は同じなんだよ。首筋に、鎖骨、そして……」

 悪戯な指先が首筋を通り鎖骨を撫で下りていく。そして、シャツの上から胸を突かれたとき、身体がビクッと跳ねた。

「おや? おかしなこともあるもんだね」

 ボタンがゆっくりと外されていく。そして肌けられたシャツの間から現れたのは、紛れもない女の膨らみ。動きにくいからとサラシを巻かずに侍従に化けたのが仇になった。

 薄手のシュミーズのみでは胸の膨らみを隠し切れない。

「これはこれは、侍従に化けた男装令嬢だったとは。ますます、怪しいなぁ。これは、じっくりと尋問しないといけないみたいだね」

「――――、ひっ!! いっ、あぁぁ……、あっ……」

 シュミーズがたくし上げられ、まろやかな乳房が顕になってもリリアは動くことが出来ない。逃げねばと考えることすら頭が拒否しているかのように、身体が動かない。

 リリアの頭の中で回るのは『なんで、なんで……』という疑問符ばかりだった。

 そんな思考の渦に飲み込まれたリリアの思考をカインへと向けされるかのごとく与えられた強すぎる刺激にリリアの唇から甲高い悲鳴があがる。
 両の乳房の頂、主人の意思を無視し立ち上がった赤色の果実をいっぺんに捻り潰され、引っ張られたのだ。

 リリアの身体が跳ね、なまめかしくも艶かしい声が空虚な宙へと散る。

「あぁぁ、こんなに伸びて可哀想に」

 無情なる声が響くと同時に、カインの舌に赤い実は摘まれ、舐められ痛みと共に燃え上がった炎に身が焼かれる。

 ジンジンと疼く最奥、そしてジュっと溢れ出した愛液が下着を濡らし、ズボンに染みをつくる。
 
「あぁぁ、いやぁぁ。無理なのぉぉ」

 込み上げた涙が頬を伝い、首筋を落ちていく。涙の雫を舐めとる行為にも快感を拾い始めた身体は簡単に陥落した。

 そんなリリアの痴態を眺め、カインの瞳が欲望のほむらを宿しギラついた。

「あぁ~、そうそう。女性は武器を胎内に隠す事があるそうだねぇ。襲われたら危険だし調べる必要があるね」

 カインの仄暗い瞳を見上げたリリアは息をのむ。 

 そこには、優しいカインはいなかった。
 そこにいるのは、欲望を隠しもしない一人の男。

 怖いと慄くと同時に感じた仄暗い喜びは、ずっと欲しいと願いながらも得られなかったカインから向けられる情欲だった。

 リリアのズボンに手をかけたカインによって下着を脱がされ、両脚の太ももとふくらはぎを紐で結び脚を開いた状態で固定されてしまう。しかし、リリアは抵抗しなかった。

 リリアの喉がゴクリっと鳴る。

「カイン様……、こんな格好、イヤ」

「ダメだよ。万が一暴れられたら危険だからね。尋問の時は相手の動きを制限するのは鉄則だよ。あぁ~、さっきの刺激で感じてしまったのかな?」

 唐突に訪れた強すぎる刺激に蜜道が蠢く。

「愛液があふれてくる」

 カインはリリアのピタリと閉じた二つの花弁をスッと撫で上げ、流した愛液を手にとるとリリアの目の前へとかかげた。

 リリアの胸元に、愛液がポタポタと滴る。

「では、身体検査を始めようか」

 意地悪くあがったカインの口角を見て、リリアの心が震える。そこには、カインから施される行為に期待しているリリアがいた。

 愛液を滴らせたカインの指がゆっくりと落ちていき、その様を目で追っていたリリアの心臓が疾走していく。そして、『消えた……』と思った瞬間に響いた淫靡な音に耳を侵され、思考は焼き切れた。

 二つの花弁を縦横無尽に動き回る指に、絶え間なく響く水音が徐々にリリアを追いつめていく。
 しかし、何かが足りない。
 悪戯に動かされるカインの指で、リリアの官能は確実に高められているはずなのに、満足出来ない。

 もっと……、もっと……
 あぁぁ、欲しい。もっと、欲しい……

 リリアの腰が揺れる。
 そんな彼女の痴態を見下ろすカインをリリアは無意識に誘う。
 
「あぁぁ、なんてはしたない侍従なんだろうね。私の指の動きに合わせて腰が揺れているよ。淫らなダンスを踊って、男をたぶらかすつもりだったのかな?」

「たぶら、かす……、なんて、……しない」

「どうかなぁ。今の君の格好は実に扇状的だ。ほらっ……、今もそうやって愛液を垂れ流し男を誘う」

 蜜口でうごめくカインの指がリリアのか細い吐息が吐き出されるタイミングをつき、一気に挿入された。何物も受け入れたことのないリリアの蜜道は、カインの指を拒むかのように締めつける。 

「なかなかに、狭いなぁ。もっと拡げないと調べられないかぁ」

「――――っひ!! はぁぁぁぁ……」

 蜜道をこじ開けるように内壁を擦り上げられ、リリアの口から悲鳴があがる。痛みと圧迫感にリリアが鳴けば、それを紛らわせるかのように、包皮から顔を覗かせる蜜芽をなぶられる。ジュブジュブと淫雛な音を響かせ動かされるカインの指は一本だったのが、いつの間にか二本へと増え、時折り指を開かれ中をのぞかれる。緩急をつけたカインの指の動きに翻弄され、リリアは叫声を吐くことしか出来なくなっていた。

「ここからでは、中が良く見えないなぁ。もっと奥に隠していないか、調べる必要がありそうだ」

 無情な言葉とともに、赤く熟れた蜜芽を甘噛みされたリリアの身体を強烈な快感が駆け抜ける。それと同時に胎内で動いていた指がいっきに引き抜かれた瞬間、リリアは飛沫を吹き上げ果てていた。

 放心状態のリリアをカインは上から見下ろし、耳元でささやく。

「上手に逝けたみたいだね。快楽の底へ突き落としたら、君はすべてを吐いてくれるのかな……」

 カインはトラウザーズの前を寛げると立ち上がった剛直を蜜壺に当てがう。その瞬間、リリアの心が悲鳴をあげた。

「いやぁ!!!! ヤメてぇぇぇぇぇ……」

 リリアの大絶叫にカインの動きが止まる。
 リリアの心が泣いていた。

 カイン様は、私以外の人も平気で抱けるの?
 そんなの……、嫌よ……
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