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第7章 それぞれの未来【ミリア視点】
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しおりを挟む「マダムのドレスショップに注文の品を取ってきて貰いたい?」
「えぇ…そうよ。近々、王城で晩餐会が開かれるのよ。まぁ~晩餐会って言っても立食形式のパーティーみたいなものよ。陛下や王妃様と親しい関係の貴族が招待されているらしいのよ。
そのパーティーで着るドレスに合わせた小物をマダムのお店に頼んだの。それが出来上がったみたいだから取りに行って来てくれるかしら?」
マダムのドレスショップにはベイカー公爵家でエリザベス様に仕えていた時からよく行っていたので、場所も勝手もよく分かっている。
………気難し屋で有名なマダムの店には慣れた者でないと対応できないしね………
当時からマダムに気に入られていた私は何の問題もない。
「わかりました。今から取りに向かいますわ。」
「それと…この手紙必ずマダムに渡して貰いたいのだけど頼めるかしら?」
エリザベス様が手に持ったシュバイン公爵家の紋章で封蝋された手紙を受け取る。
「では、こちらの手紙は直接マダムにお渡し致します。」
私はシュバイン公爵家の馬車に揺られマダムの店にやって来た。
「ミリア!久しぶりね。ルカ様と来店して以来ね~
今日はエリザベス様のお遣いなの?
………貴方シュバイン公爵家に仕える事になったの?」
「ご無沙汰してましたマダム。今はシュバイン公爵家でエリザベス様付き侍女として働いております。今後もお邪魔するかと思いますがよろしくお願い致します。」
「もぉ~やだぁ………相変わらず堅いんだから!時間はあるんでしょ!わたくしのお茶に付き合いなさいよ‼︎」
相変わらずのマダムに自然と笑みが溢れてしまう。
「わかりました。お付き合い致しますわ。………あっ!その前にエリザベス様からお手紙をお預かりしてまして………」
私はマダムにエリザベス様からお預かりした手紙を手渡す………
「エリザベス様から手紙だなんて珍しいわね………」
その場で開封し手紙を読み始めたマダムの瞳が驚愕に見開かれる………
………いったい何が書いてあったのだろう………
「………ふふふ…エリザベス様も粋な事をなさいますわ………
ミリアお茶にしましょう~♪」
私はご機嫌なマダムに連れられお店の奥にあるマダムの私室へ向かった。
「ねぇ~ミリア…その後ルカ様との仲は進展したのかしら?」
唐突に聞かれたマダムからの質問に飲んでいた紅茶を吹き出しそうになった。
「えっ‼︎………どうしてですか………?」
意味ありげなマダムの目線にドギマギしてしまう………
「だってルカ様の為にミリアを着飾り送り出した身としては気になるじゃない。
ルカ様のあの態度はミリアに恋する男そのものだったしねぇ~
ルカ様とは恋人になったのかしら?」
………マダムの追求に話さざるおえなくなる………
「ルカとは友達です!恋人ではありません………」
「でも告白くらいはされたんじゃないの?」
私はとうとうルカとのやり取りを全て話す事になってしまった。
「………そうなの…ミリアはルカ様との未来へも踏み出す勇気がないのね………
まぁ…故郷を離れて右も左も分からない新天地に飛び込むのはかなり勇気がいる事よねぇ~
愛する人の願いなら頑張れる事でも、好きかどうかも分からない人の誘いじゃ踏み切るのも難しいわね。」
「………もしもの話ですが………
自分には愛する人がいて、その人には政略結婚予定の婚約者がいるとします。
愛する人も自分の事を愛してくれています。ふたりには身分差があり、政略結婚を壊す力もありません。それでも相手は信じて待って欲しいと言います。
………マダムならどうしますか?」
「………とても難しい質問ね………
そうねぇ~わたくしなら愛する人の事を信じると思うわ。
だって、信じずに離れてしまったら一生後悔すると思うから………
愛する人を信じて裏切られ後悔するより、信じずに後で信じてあげれば良かったと後悔する方がよっぽど辛いわ。
それに愛する人が政略結婚で不幸になったなんて聞いた日には耐えられそうにないわね。」
………政略結婚で不幸になる可能性………
私はリドル様とルティア王女とのお茶会があった日を思い出していた。
とても聡明で品のある可愛らしいルティア王女………
ふたりのお茶会はとても楽しそうに進んでいたように思う………
でもあの頃はリドル様が私を好きだったなんて知らなかった。
リドル様とルティア王女が結婚する未来では、私への恋心なんて忘れてリドル様は笑っているのだろうか………
………リドル様の手を取る勇気もない私が考えても仕方ない事だわ………
その後のマダムとのお茶会は和やかに進み、夜会ドレス用の小物を受け取り馬車に乗り込む。
「ミリア待ってちょうだい。エリザベス様にこの手紙を渡して欲しいの」
わざわざエントランスへ見送りに出て来たマダムからエリザベス様への手紙を渡される。
「エリザベス様にご注文確かに賜りましたと伝えてちょうだいね。」
………エリザベス様からのマダムへの手紙は何かの注文依頼だったのね………
「わかりました。では失礼致します。」
私を乗せた馬車はマダムに見送られ、シュバイン公爵家への帰路へついた。
『今度王城で夜会が開かれます。当日、わたくしの侍女のミリアがマダムのドレスショップへ助けを求め伺う可能性があります。………あくまでも可能性であって本当に伺う事になるかは当日までわかりません。その日は、ミリアにとって自身の人生の分岐点になるでしょう………
マダムお願いがあります。ミリアが訪れたら誰よりも美しい女性にドレスアップしてあげて欲しいのです。
………自身の幸せを勝ち取れる美しく、妖艶で、強い女性へと………
ミリアに合うドレスと小物の製作も一緒にお願い致します。
夜会まであと数日しかありません。急なお願いで大変申し訳ありませんが、ミリアの人生をかけた大勝負………
協力して頂きとうございます………』
………人生をかけた大勝負………
私はエントランスから去り行く馬車を見送りながらエリザベス様からの手紙を思い返していた。
あの娘はどんな未来を選ぶのかしら………
私はとびっきり素敵なドレスの製作に取り掛かるためエントランスを後にした。
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