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第7章 それぞれの未来【ミリア視点】

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~ルカ視点~

『ミリアを手に入れた方が勝ち』ですか………

「ルカ様…何か楽しい事でもありましたか?」

副官のルドルフが聞いてくる………
気づかない内に笑っていたようだ。

「………いや…楽しい事などない………
ただ、リザンヌ王国の操り人形だとばかり思っていたルティアが歯向かう真似をしてきたのが意外でね………」

私達がリザンヌ王国のクーデターを制圧し、王宮に踏み込んだ時も阿鼻叫喚する城の者達をよそにルティアだけは落ち着いていた。初めて言葉を交わした時は恐怖心から萎縮していると思っていたが、今ならわかる………あれは全てを諦めていた目だった………………

「あの方も一国の王女………
虐げられていた環境から抜ければ本来の威厳を取り戻すのも当然かと思います。
仮にも貴方様の妹君です。内に秘めた輝きははかり知れない………
だからグルテンブルク王国に臨まれたのでしょう。
………あのハインツ様が欲しいと思った方………
リザンヌ王国は逸材を手放したのかもしれませんね。」

ルドルフの嫌味に苦い気持ちになる。
この男はグルテンブルク王国からルティア王女を所望された時、最後まで手放す事を反対していた。
諜報部門のまとめ役でもあるルドルフはルティアにイアンがずっと接触していた事を知り、ルティアの価値に気付いていたのだろう。
まぁ…今となってはあとの祭りだが………

「………そんな事よりミリアの行方はわかったのか?」

「えぇ…もちろん。今はシュバイン公爵家に滞在しております。数日前にベイカー公爵家のリドル様所有のタウンハウスから連れ出されました。」

ウィッチ男爵家からミリアが消えた時には流石に焦ったが、優秀な間諜がリドルのタウンハウスに監禁されたミリアの情報をもたらした。

監禁しなければミリアの気持ちを繋ぎ止めておけないリドルの不甲斐なさに溜飲が下がる。

結局シュバイン公爵家へ逃げられたところを見るとリドルとミリアの関係は上手くいっていない………

シュバイン公爵家へ移った今、ミリアの警備は手薄になっている筈だ。これから幾らでも接触する機会はあるだろう。

ルティアが何を仕掛けてくるかは知らないが運はこちらに味方している。
あとはミリアにリドルとの未来はない事をすり込めば上手くいく。




………数日後………

私室にてゆっくり過ごしていた私に待望の情報がもたらされた………

『ミリア様がジュエリーショップに一人でいらしゃいました。』

リックベン商会の傘下のジュエリーショップにミリアが現れたという。

私が到着するまでミリアを足止めしているとの事で、急ぎ馬車に乗り向かう。

店内に足を踏み入れた私は久々に見たミリアに胸が締めつけられる………

………もうすぐ私だけのものになる………

ショーケースを覗いていたミリアに後ろから近づき声をかける。
本当は抱き締めたかったが我慢する………
欲望のまま突き進めば上手くいくものもいかなくなる………

ネックレスのメンテナンスをしてもらっているというミリアを無理矢理連れ出しカフェに入った。




「………リドル様とは………………
わたくしが一方的に好きだっただけよ。
あの方はもうすぐ他の女性と婚約されるわ………」

やはりミリアの想い人はリドルだった………

「ミリアは…まだリドル様の事を忘れられないの?」

「………そうね…あの方とは幼少期からの長い付き合いなの………
昔からずっと好きだった………
簡単には忘れられないでしょうね。」

ミリアのリドルに対する深い想いを知り嫉妬で目の前が赤く染まる………
………あの男には絶対に渡さない………

今後もシュバイン公爵家で働き続けるというミリアに畳み掛ける。

「私は貴方が傷つくのを黙って見ていられない………
貴方の心が私にないのはわかっています。でも貴方が辛い人生を選ぼうとしているなら、私が貴方の人生を変えてみせる。
どうかお願いです。私の手をとってください………ミリア………
貴方を絶対に幸せにします………
今はリドル様を好きでも構いません。いつか私を好きにさせてみせますから。」

ミリアの表情が変わっていく………
どうやら私の言葉が少なからずミリアの心に響いたようだ………
あとひと押しだ………

ミリアの手を掴みカフェを出た私はジュエリーショップへ戻ってきた。

仕上がったネックレスを見たミリアの表情が辛そうに歪む。

………ネックレスひとつでミリアの心を乱す事が出来るリドルに怒りがわく………

私はミリアに渡すために以前から頼んでおいたアメジストのネックレスを手に取り目の前に掲げる。

貴方の心を乱す存在は私であって欲しい………

ミリアの手の中にあるネックレスの箱を閉め、アメジストのネックレスをミリアにつける。

私は貴方に一生の愛を誓う………

「………ミリア…愛しています………」

私の瞳の色と同じアメジストにキスを落とす。

ミリアの愛が私に向かうよう願いながら………







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