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第7章 それぞれの未来【ミリア視点】
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しおりを挟む~エリザベス視点~
『親愛なるエリザベス様へ
ミリアの最初で最後のお願いでございます。どうかわたくしをリドル様のタウンハウスから連れ出し、匿って頂きとうございます………』
まったく…お兄様はいったい何をやらかしたのかしら!
せっかく領地にミリアを呼び出し、二人きりにさせてあげたというのに………
本当、嫌になっちゃうわ………
ミリアからの手紙を受け取った私は直ぐに行動を起こすべく執事を呼び出し、リドルお兄様のタウンハウスに行く準備をするように伝えた。
………数刻後………
タウンハウスへ着いた私は、執事や侍女頭の制止を無視しミリアのいる私室に行きミリアを連れ出す事に成功した。
まぁ~タウンハウス内を大声でミリアを探したのは淑女としていかがなものかと思ったが仕方ない。
久々に見たミリアは気落ちしているようだったが、そこは追々元気を取り戻せばよい。
タウンハウスからミリアを連れ出した私はその足でシュバイン公爵家へ戻って来た。
「エリザベス様…わたくしをタウンハウスから連れ出して頂きありがとうございました。今ウィッチ男爵家へ戻れば、リドル様に連れ戻される可能性が高いです。しばらくシュバイン公爵家で匿って頂けないでしょうか?」
まぁ…ミリアがウィッチ男爵家へ帰ってもリドルお兄様が本気でウィッチ男爵に詰め寄ればミリアを渡すしかないわよね………
お兄様のミリアへの執着を考えれば、絶対に連れ戻すわよ………
「ミリア大丈夫よ。もちろんそのつもりだからね。数日はシュバイン公爵家の生活に慣れてもらって、落ち着いて来たらわたくし付きの侍女になってもらおうと思っているんだけどいいかしら?」
「エリザベス様付きの侍女にしてもらえるのですね!なんとお礼申し上げたらよいか………
またエリザベス様のお世話が出来るなんて…夢みたいです………」
涙目のミリアに手を握られ、こちらまで嬉しさで泣きたくなってしまう。
本当にこのままミリアにシュバイン公爵家で働いてもらいたいわぁ………
「いいえ…ミリアにはリドルお兄様のことで沢山迷惑をかけたみたいだし………
わたくしもリドルお兄様の口車に乗せられて領地にミリアを呼び出した手前、今回の件申し訳ないと思っているの。
まさかお兄様がミリアをタウンハウスに監禁するとは思わなくて………
………お兄様は昔からずっとミリアの事が好きだったみたいね………
わたくしもミリアとは長い付き合いだし、姉のように慕っているの………
出来れば二人に結婚してもらいたいと思っていたのも事実よ。
ミリアは、もうリドルお兄様との未来は考える気がないの?
わたくしね…ずっと二人を見てきて、ミリアもリドルお兄様のことが好きなんじゃないかって思っていたの………
違うかしら?」
ソファに座ったミリアが俯く………
「エリザベス様………
わたくしもリドル様の事を愛していました。たぶん物心ついた時からずっと………」
「だったら何故リドルお兄様の気持ちに応えないの?」
「愛だの恋だのに夢中になれる年齢ではないのです………
そしてリドル様もわたくしも貴族社会という柵から抜け出す事は出来ません。
お互いが愛し合っていても結婚出来ない事の方が多いです。愛する方と結婚出来る事は奇跡なんです………
わたくしは貴族社会の身分差を打ち破ってリドル様を奪い取る勇気はありません。それが答えです。
リドル様は、相応しい身分の令嬢と結婚なさる方がよろしいのです。」
やはりミリアはルティア王女殿下とリドルお兄様の婚約話を知っているのね………
二人は愛し合っているのに離れようとしている。そんなの絶対にダメよ………
どうにかしなければ………
「………ミリアの気持ちはわかったわ。リドルお兄様が落ち着いてもミリアがわたくしの侍女としてシュバイン公爵家へ残りたいならそれでもいいからね。
ハインツ様にはわたくしから話しておくから今日はゆっくり休んで。」
私は執事を呼びミリアにシュバイン公爵家で生活するに当たり必要な事を説明し、客間に案内するよう指示し、ミリアを託す。
執事に連れられ部屋から退出するミリアを見送ると、机の中から一通の手紙を取り出す………
『エリザベス様、先日はベイカー公爵家でのお茶に誘って頂きありがとうございました。大変楽しい時間を過ごす事が出来ました。また、ミリア様と二人だけで会うため協力頂けるとの事有り難く思っております。つきましては、一つお願いがございます。もしミリア様と接する機会がありましたら、わたくしの事を悪女としてミリア様に吹き込んで頂けないでしょうか?エリザベス様からお聞きしたミリア様の性格を考えますと、ミリア様にわたくしが悪女と植えつける事が、最終的にはミリア様の気持ちをリドル様へ向ける鍵となります。とても嫌な事をお願いしまして申し訳ありませんが、よろしくお願い致します。』
ルティア王女殿下はミリアの頑なな気持ちをどう変えさせるつもりなのかしら………?
………悪女として風潮して欲しいだなんて………
まぁ…わたくしはルティア王女に協力するだけだわ………
リドルお兄様に任せていても上手く行くとは思えないしね………
「エリザベス…ただいま………」
「あっ!ハインツ様…お帰りなさいませ。お迎えに上がらず申し訳ありませんでした。」
考え事をしていてハインツ様が入って来たのにも気づかなかった………
「執事から聞いたけど、ミリアをリドル殿の元から連れ出したんだってね。
………エリザベスはミリアをどうするつもりなのかな?」
「しばらくシュバイン公爵家でミリアを匿うつもりです。今ウィッチ男爵家へ帰したらリドルお兄様に連れ戻されてしまいますから………
こちらで匿う間は、わたくし専属の侍女をしてもらおうと思ってます。
ハインツ様に相談せずに事を起こしてしまい申し訳ありませんでした。
ミリアをシュバイン公爵家へおいて頂けますか?」
「…もちろんエリザベスの好きにしたらいいよ………
ところでエリザベスは、リドル殿とミリアを結婚させたくて動いていたのではなかったの?」
「もちろん今でもミリアにはリドルお兄様と結婚してもらいたいわ。
でもお兄様に任せていたら上手く行くものも失敗しそうなんだもの………」
私はハインツ様に近づき抱きつく………
「………ねぇ………ハインツ様…………
ルティア王女殿下は、どうやってルカ王太子を説得するのかしら…?
ハインツ様はどう思われますか?」
「………う~ん…難しい問題だね………
ただ…ルティア王女殿下はルカ王太子にケンカを売ったみたいだね………」
「えっ⁈ケンカですの?」
「………そう…何か勝負を仕掛けたみたいだ………
ルティア王女殿下はとても頭の良い方だから、勝算があるんだよ。エリザベスもルティア王女殿下に協力するつもりなんだろう?」
「えぇ………」
「エリザベスがルティア王女殿下に協力すれば全て上手く行くんじゃないかな………
鍵を握るのはミリアの行動だろうね………
果たしてミリアはリドル殿を選ぶのか………
それともルカ王太子を選ぶのか………」
ハインツ様は私が知らない情報も把握されているのだろう………
私がルティア王女殿下に協力する事でミリアがリドルお兄様を選ぶ事に繋がるなら何でもしよう………
「………ハインツ様はわたくしに協力してくださるでしょう?」
「それは私の愛する奥さん次第かなぁ~」
私はハインツ様の頬を包み込みキスを仕掛けた。
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