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第6章 鎖を断ち切るために【ルティア&イアン編】
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しおりを挟むルカ王太子との会談後、ベイカー公爵家のリドル様とお会いし、ルカ王太子を出し抜くため協力関係を求めたあの日から数週間が経っていた。
あの日以降、特にルカ王太子からのアクションはなくレッシュ公爵家で穏やかな日々を過ごす事が出来ていた。
今日も朝から書籍室に籠り読書に没頭していた私だったが………
………この体勢はいかがなものか………
私はただ今絶賛困惑中だ………
「………あのぉ…イアン………
そろそろお膝から降りたいのだけど………」
「どうして?何か困る事でもあるの?」
「だってこの姿勢じゃ本が読みづらいわ………」
私はイアンに後ろから腰に手を回され膝の上に乗せられていた。
………いつもはここら辺でやめてくれるのに………
今日のイアンは何だかご機嫌ナナメのようだ。
「…イアン………どうしたの?
何だかさっきから変よ………」
「………いや…別に………
いつもと変わらないと思うけど………」
「………」
これは昨晩リドル様とレストランで夕食を一緒にしたのが気に食わないのね。
私とリドル様がルカ王太子を欺くため定期的に会っているのが不満らしい。
リドル様と出かけた翌日はいつにも増して私と密に接したがる。
………イアンも私と一緒で不安なんだわ………
イアンに独占される日は私にとって少しの恥ずかしさとたくさんの幸せに包まれる特別な時間だった。
だから強く拒否出来ないのよね………
「………イアン…私がリドル様と昨晩会っていたのがイヤだったの?
でも仕方ないのよ………
ルカ王太子を騙すためには定期的に会わなきゃ………
でも…私が愛しているのはイアンだけよ………
それだけは忘れないで………」
「……そんな事はわかっているんです!
でも…心が納得しない………
もっと側でルティアを感じていたい………
ルティアから僕にキスしてくれますか?」
「えっ‼︎わたくしからですの⁇
………そんなの恥ずかし過ぎて無理………」
「では…ずっとお膝の上から降ろしません!」
イアンの腰を抱く力が強くなる………
「ま…待って!わかったから………」
私は恥ずかしさを堪えイアンの唇に軽いキスを落とす………
「ルティア…そんなんじゃ足りない………」
止まらなくなったイアンにいつの間にかソファへ押し倒され深いキスをされる………
ほとんど抵抗出来なくなった私は、悪戯を仕掛けられながら昨晩のリドル様との夕食での会話や過度に接触していないかなど根掘り葉掘り聞かれ、全て暴露するハメになった。
イアンとの攻防の結果、クタクタになりソファに突っ伏した私は、そんな私を離さず抱きしめてソファに横になりご満悦そうなイアンになされるがまま身を任す他なかった。
………嫉妬したイアンは本当にタチが悪いわぁ………
でもそんなイアンを見たいと思っている私が一番タチ悪いのよねぇ………
諦めの境地の私は大きなため息をついた。
………数日後………
ルティア王女宛にリドルからの招待状が届いた。
『ベイカー公爵家領地の別邸に招待したいのですが、いかがでしょうか?
王都には貴方を追い回すハエもいるかと思います。
ベイカー公爵領地であれば、煩いハエも追っては来れないでしょう。
ルティア王女殿下のプライベートを守れるだけの警備体制も万全です。
息抜きにぜひベイカー公爵領地へお越しください。貴方様の大切な方と一緒に………』
その手紙には訪問日時が決められていた。
………どういう事かしら?
私とイアンの二人を招待するという意味よね………
リドル様には私の愛する人が誰かは教えていない。
私はこの招待状の意味をはかりかね、イアンに手紙を見せることにした。
「…リドル殿はルティア王女の好きな男が誰なのかを確かめたいのだろう………
まぁ………いいさ………
僕も一度リドル殿と話をしておきたかったしね………
ルティ一緒にベイカー公爵領地へ行ってみよう。」
私は一抹の不安を胸にイアンの言葉に頷いた。
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