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第5章 忘れられない想い【ミリア&リドル編】
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しおりを挟む~リドル視点~
………眠ったか………?
背後から抱きしめているので本当に眠ったのかは分からないが、大人しく俺の腕の中に囲われているミリアを見ると堪らなくなる。
今までにない近い距離にミリアがいる………
俺は行動を起こして良かったと心底思えた。
ミリアに振られてからの俺の行動は早かった………
エリザベスに手紙を送り、ミリアを呼び出す算段を考え、ベイカー公爵領での狩りに利用していた山小屋を急ぎ改装し、二人が長期間快適に過ごせるだけの設備を整えた。
あの地域は森が鬱蒼としていて野生動物の宝庫だ。昔から狩りに行っていた俺はあの地域の森に土地勘はあるが、知らない者が森に入れば間違いなく遭難する。
そんなところに建つ山小屋は、ミリアを監禁するにはもってこいの場所だった。
何も知らないミリアが山小屋の扉を開けたとき、自然と笑みが溢れた。
………ルカに連れ去られる前にミリアを手元に囲い込めた事実に………
俺を見て目を丸くし驚いていたミリアが逃げ出そうとしたところを抱き締め、しっかり釘をさすことも忘れなかった。
………俺の許可なく此処から逃げ出すことは不可能だということを………
最後は諦めたのか家の中へ大人しく入ってくれた。
それにしても…ひとつしかないベットを見て百面相するミリアは可愛かった………
あんな調子では男とふたり一緒のベットで寝たこともないだろう………
思いの他、ルカとの関係が進んでいない事実に小躍りしたい程嬉しかった。
予想外の連続で疲れた顔をしているミリアを気遣い夕飯は俺が作ることを申し出た。
全く料理をした事はなかったが、毎日シェフが作った料理を見て食べている訳だし何とかなるだろうと安請け合いをしてしまった。
…まぁ………結果として………
悲惨な食べ物が出来上がった訳だが………
あんなに料理が難しいものだとは知らなかった。包丁ひとつまともに使えなかった。
あの悲惨な料理を目の前にミリアに説教された時は昔に戻れたようで、怒られながら不謹慎にも嬉しさが込み上げてきた。
その後…あの悲惨な食べ物がミリアの手によって魔法のように美味しい料理に早変わりした時はビックリした。
俺に背を向けキッチンに立つミリア………
非日常の空間で俺のためだけに料理を作っている………
このままずっとふたりだけで暮らしたいと思った。
美味しそうな匂いに誘われてフラフラとキッチンへ向かいミリアに近づく。
抱きしめたいのを堪え、背後から手元を覗き込む………
肩を震わせ俺に来るなと言うミリアの耳が真っ赤に染まっていた………
………少しは俺の事を意識してくれていたのだろうか………
ミリアが作り直してくれた料理はどれも本当に美味かった。公爵家で食べる贅を尽くした料理では味わえない優しい味がした。これが市井の者達が食べている家庭料理というものか………
気づいたら夢中で食べ進めていた。優しく俺を見つめるミリアの視線に幸せを感じながら………
夜も更け先に風呂に入った俺に続きミリアも浴室に向かった。
ベットでミリアが出てくるのを待っていた俺は、いつまで経っても出て来ないミリアが心配になってくる………
倒れている可能性も考え、不謹慎だと思いつつも浴室に続く扉を開けた俺の胸にミリアが倒れ込んできた。
頬を真っ赤に染め、濡れ髪のミリアは壮絶な色気を纏っていた………
爽やかな石鹸の香りとミリア自身が放つ匂い立つ色香が混ざり独特な香りが俺の理性を揺さぶる。
俺は焼き切れそうな理性を何とか繋ぎ止めミリアをそっと引きはがす。
このまま離れたくなくてミリアの髪を拭いてあげる事を口実に、ベットに腰掛け背後から抱き込む。
ミリアの髪を拭きながら更に匂いたつ香りに理性が焼き切れた………
俺はミリアを押し倒し激しいキスを落としていた………
抵抗せずなされるがままのミリアに俺の欲望が先に進めと訴えかける。
………ミリアを俺だけのものにしてしまいたい………
息も絶え絶えに肩で息をするミリアを見て少し理性が戻ってくる。
………このまま突き進めば手に入るものも入らなくなってしまう………
俺は最後の理性を総動員しミリアを引き剥がした。
俺の腕の中には愛してやまないミリアがいる………
………俺に残された時間はあと一週間………
一週間後にはベイカー公爵家から迎えが来ることになっている。
それまでにミリアの頑なな心を変えさせなければならない………
俺は腕の中のミリアを起こさないように優しく抱きしめ、寝られない一夜を過ごした。
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