58 / 92
第5章 忘れられない想い【ミリア&リドル編】
13
しおりを挟む~リドル視点~
………眠ったか………?
背後から抱きしめているので本当に眠ったのかは分からないが、大人しく俺の腕の中に囲われているミリアを見ると堪らなくなる。
今までにない近い距離にミリアがいる………
俺は行動を起こして良かったと心底思えた。
ミリアに振られてからの俺の行動は早かった………
エリザベスに手紙を送り、ミリアを呼び出す算段を考え、ベイカー公爵領での狩りに利用していた山小屋を急ぎ改装し、二人が長期間快適に過ごせるだけの設備を整えた。
あの地域は森が鬱蒼としていて野生動物の宝庫だ。昔から狩りに行っていた俺はあの地域の森に土地勘はあるが、知らない者が森に入れば間違いなく遭難する。
そんなところに建つ山小屋は、ミリアを監禁するにはもってこいの場所だった。
何も知らないミリアが山小屋の扉を開けたとき、自然と笑みが溢れた。
………ルカに連れ去られる前にミリアを手元に囲い込めた事実に………
俺を見て目を丸くし驚いていたミリアが逃げ出そうとしたところを抱き締め、しっかり釘をさすことも忘れなかった。
………俺の許可なく此処から逃げ出すことは不可能だということを………
最後は諦めたのか家の中へ大人しく入ってくれた。
それにしても…ひとつしかないベットを見て百面相するミリアは可愛かった………
あんな調子では男とふたり一緒のベットで寝たこともないだろう………
思いの他、ルカとの関係が進んでいない事実に小躍りしたい程嬉しかった。
予想外の連続で疲れた顔をしているミリアを気遣い夕飯は俺が作ることを申し出た。
全く料理をした事はなかったが、毎日シェフが作った料理を見て食べている訳だし何とかなるだろうと安請け合いをしてしまった。
…まぁ………結果として………
悲惨な食べ物が出来上がった訳だが………
あんなに料理が難しいものだとは知らなかった。包丁ひとつまともに使えなかった。
あの悲惨な料理を目の前にミリアに説教された時は昔に戻れたようで、怒られながら不謹慎にも嬉しさが込み上げてきた。
その後…あの悲惨な食べ物がミリアの手によって魔法のように美味しい料理に早変わりした時はビックリした。
俺に背を向けキッチンに立つミリア………
非日常の空間で俺のためだけに料理を作っている………
このままずっとふたりだけで暮らしたいと思った。
美味しそうな匂いに誘われてフラフラとキッチンへ向かいミリアに近づく。
抱きしめたいのを堪え、背後から手元を覗き込む………
肩を震わせ俺に来るなと言うミリアの耳が真っ赤に染まっていた………
………少しは俺の事を意識してくれていたのだろうか………
ミリアが作り直してくれた料理はどれも本当に美味かった。公爵家で食べる贅を尽くした料理では味わえない優しい味がした。これが市井の者達が食べている家庭料理というものか………
気づいたら夢中で食べ進めていた。優しく俺を見つめるミリアの視線に幸せを感じながら………
夜も更け先に風呂に入った俺に続きミリアも浴室に向かった。
ベットでミリアが出てくるのを待っていた俺は、いつまで経っても出て来ないミリアが心配になってくる………
倒れている可能性も考え、不謹慎だと思いつつも浴室に続く扉を開けた俺の胸にミリアが倒れ込んできた。
頬を真っ赤に染め、濡れ髪のミリアは壮絶な色気を纏っていた………
爽やかな石鹸の香りとミリア自身が放つ匂い立つ色香が混ざり独特な香りが俺の理性を揺さぶる。
俺は焼き切れそうな理性を何とか繋ぎ止めミリアをそっと引きはがす。
このまま離れたくなくてミリアの髪を拭いてあげる事を口実に、ベットに腰掛け背後から抱き込む。
ミリアの髪を拭きながら更に匂いたつ香りに理性が焼き切れた………
俺はミリアを押し倒し激しいキスを落としていた………
抵抗せずなされるがままのミリアに俺の欲望が先に進めと訴えかける。
………ミリアを俺だけのものにしてしまいたい………
息も絶え絶えに肩で息をするミリアを見て少し理性が戻ってくる。
………このまま突き進めば手に入るものも入らなくなってしまう………
俺は最後の理性を総動員しミリアを引き剥がした。
俺の腕の中には愛してやまないミリアがいる………
………俺に残された時間はあと一週間………
一週間後にはベイカー公爵家から迎えが来ることになっている。
それまでにミリアの頑なな心を変えさせなければならない………
俺は腕の中のミリアを起こさないように優しく抱きしめ、寝られない一夜を過ごした。
2
お気に入りに追加
720
あなたにおすすめの小説
【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる
三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。
こんなはずじゃなかった!
異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。
珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に!
やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活!
右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり!
アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

立派な王太子妃~妃の幸せは誰が考えるのか~
矢野りと
恋愛
ある日王太子妃は夫である王太子の不貞の現場を目撃してしまう。愛している夫の裏切りに傷つきながらも、やり直したいと周りに助言を求めるが‥‥。
隠れて不貞を続ける夫を見続けていくうちに壊れていく妻。
周りが気づいた時は何もかも手遅れだった…。
※設定はゆるいです。
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?
アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。
泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。
16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。
マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。
あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に…
もう…我慢しなくても良いですよね?
この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。
前作の登場人物達も多数登場する予定です。
マーテルリアのイラストを変更致しました。

【 完結 】「平民上がりの庶子」と言っただなんて誰が言ったんですか?悪い冗談はやめて下さい!
しずもり
恋愛
ここはチェン王国の貴族子息子女が通う王立学園の食堂だ。確かにこの時期は夜会や学園行事など無い。でもだからってこの国の第二王子が側近候補たちと男爵令嬢を右腕にぶら下げていきなり婚約破棄を宣言しちゃいますか。そうですか。
お昼休憩って案外と短いのですけど、私、まだお昼食べていませんのよ?
突然、婚約破棄を宣言されたのはチェン王国第二王子ヴィンセントの婚約者マリア・べルージュ公爵令嬢だ。彼女はいつも一緒に行動をしているカミラ・ワトソン伯爵令嬢、グレイシー・テネート子爵令嬢、エリザベス・トルーヤ伯爵令嬢たちと昼食を取る為食堂の席に座った所だった。
そこへ現れたのが側近候補と男爵令嬢を連れた第二王子ヴィンセントでマリアを見つけるなり書類のような物をテーブルに叩きつけたのだった。
よくある婚約破棄モノになりますが「ざまぁ」は微ざまぁ程度です。
*なんちゃって異世界モノの緩い設定です。
*登場人物の言葉遣い等(特に心の中での言葉)は現代風になっている事が多いです。
*ざまぁ、は微ざまぁ、になるかなぁ?ぐらいの要素しかありません。
僕は君を思うと吐き気がする
月山 歩
恋愛
貧乏侯爵家だった私は、お金持ちの夫が亡くなると、次はその弟をあてがわれた。私は、母の生活の支援もしてもらいたいから、拒否できない。今度こそ、新しい夫に愛されてみたいけど、彼は、私を思うと吐き気がするそうです。再び白い結婚が始まった。
あなたが選んだのは私ではありませんでした 裏切られた私、ひっそり姿を消します
矢野りと
恋愛
旧題:贖罪〜あなたが選んだのは私ではありませんでした〜
言葉にして結婚を約束していたわけではないけれど、そうなると思っていた。
お互いに気持ちは同じだと信じていたから。
それなのに恋人は別れの言葉を私に告げてくる。
『すまない、別れて欲しい。これからは俺がサーシャを守っていこうと思っているんだ…』
サーシャとは、彼の亡くなった同僚騎士の婚約者だった人。
愛している人から捨てられる形となった私は、誰にも告げずに彼らの前から姿を消すことを選んだ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる