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第5章 忘れられない想い【ミリア&リドル編】
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しおりを挟む本当に結婚してからもエリザベス様に振り回されているなんて…私もどうかしてるわぁ………
ウィッチ男爵家に横付けされた豪華な馬車に乗りながら、私は苦笑をもらしていた。
…エリザベス様も私宛の手紙と馬車を同時によこすなんて………
お会いしたら説教しなきゃ気が済まないわ!
私はベイカー公爵家を去る時、エリザベス様に何も伝えなかった事に罪悪感をおぼえていた。
こうして非常識な要求に応えてしまったのも、エリザベス様に対する罪悪感からだった。
車内から見える景色を眺めていると、今までエリザベス様のお供で行っていたベイカー公爵領別宅への道と違う事に気づく。
………この景色…見たことないわ………
ベイカー公爵家が治める領地は広大で15年仕えていた私ですら知らない土地は沢山ある。
手紙にも新しく家を手に入れたような事が書いてあったから、そこに向かっているのよね…?
私が乗る馬車は、どんどんと森の中を進んでいく………
鬱蒼と生える森を進むにつれ、だんだん不安になってくる………
………こんな森の中にエリザベス様が手に入れた家があるの?
心配になった私が御者に声をかけようとした時、ゆっくりと馬車が止まった。
馬車から降り、見た場所には太陽の光が散々と降り注ぎ、綺麗なお花畑の中にある可愛らしい家が建っていた。
………なんだか物語りに出てきそうな家だわ………
御者に家の中にてエリザベス様がお待ちだと告げられた私は、家の扉に近づきノックをする。
『トントン』
『ガチャ………』
私は扉を開けて出て来た人物に驚いて立ちつくす………
「………リドル様………なぜここに?」
「エリザベスを使ってミリアをここに呼び出したのは俺だよ。
………ようこそミリア………
俺に何も言わずにベイカー公爵家を出て行くなんて酷いじゃないか………」
………黒い笑顔をたたえたリドル様に気圧され後ずさる………
………逃げなきゃ…囚われてしまう………
私はリドル様に背を向け乗ってきた馬車を探して走り出そうとして、抱きすくめられた。
「………ミリア…乗って来た馬車を探しているの?
………逃す訳ないじゃないか………
ミリアは誰も来ない此処で、俺と二人きりで暮らすんだよ………」
耳元で囁かれる言葉にふるえる………
「………リドル様…冗談はやめてください!中にエリザベス様がいらっしゃるのでしょ?二人して私を揶揄なんてひどいですよ………」
「………エリザベスかい?…もちろん此処にはいないよ。それに冗談ではないから………
ミリアが私との結婚を承諾するまで、此処からウィッチ男爵家へは帰してあげない。この家には使用人もいないから、ずっと二人きりだ。食料だけは、沢山あるからしばらくは暮らしていける。
俺も一時期騎士団に入隊していたおかげで、一人で生きていけるだけの生活能力はあるから何の問題もない。」
「………しかし、リドル様がベイカー公爵家へ戻らなければ皆様に心配をかけます………」
私はリドル様の気が変わるように言葉を紡ぐ………
「執事のアーサーには当分帰って来ない事は伝えてある。何より父上からも好きにやれば良いと言われているから俺がいなくても誰も心配しない。
もちろんウィッチ男爵にもミリアはベイカー公爵家の侍女に復帰したと伝えてあるので心配はいらないよ。」
「………私がいなくなっても誰も心配しないと言う事はわかりました。
しかし、リドル様にはルティア王女がいるではありませんか!
こんな事して後でルティア王女に気づかれでもしたら婚約話に影響します。」
「………ルティア王女ねぇ………
彼女には想い人がいてね…俺とは全く結婚するつもりはないよ………
だから、今回の事を知っても何も思わないさ………」
………ルティア王女には想い人がいる………?
一国の王女が好きな気持ちだけで結婚出来る訳ないじゃない!
「まぁ…何を言ってもミリアは此処で暮らすしかない………
俺との結婚をゆっくり考えるといいよ。
………先に言っておくけど、此処から逃げようと思っても無駄だから………
一番近い町まで馬車でも1時間以上かかる上に、この森は入り組んでいて知っている者以外は迷って此処に辿り着けない。森を知らない者が迷えば、必ず遭難すると有名な場所だから、ミリアも無闇に森に入らないようにね。」
最後は私が逃げないように脅してくる………
私は諦めの境地でリドル様に手を引かれ家の中に入った。
家の中に入った私は室内を見まわす………
玄関を入ると直ぐにリビングとなっている様だ。部屋の真ん中に丸いテーブルが置かれ、可愛らしい椅子が二脚置かれている。部屋の奥はキッチンになっていて、使いやすそうな洗い場とコンロがついていた。
「この奥に貯蔵庫があるから日持ちのする野菜や乾燥肉なんかが入っている。
新鮮な野菜は家の裏の小さな畑で賄えるよ。」
私はリビングを案内されながら、数ヶ月二人だけで過ごせるだけの物品が用意されている現状にリドル様の本気を感じとる。
………これは…本気で逃して貰えないかもしれないわ………
リビングから続く階段を上ると二階は、ベットルームになっていた。
………えっ⁈ベットがひとつしかないけど………
………あの奥の扉が、もうひとつの寝室なのよ………
私は期待をこめて扉を開け放つ………
………そこは…お風呂場だった………
「……くくっ………ミリア………
寝室はココだけだよ………」
私の背後で笑いを噛み殺しながらリドル様が言う。
「………わ…わたくしリビングで寝ますわ!」
近づいてきたリドル様に背後から抱きしめられる………
「そんな事…俺が許す訳ないじゃないか………
どうせ結婚するんだし、一緒に寝よう………ミリア………」
私の耳元でリドル様の低音ボイスが響く
………このまま気を失いたいわぁ………
「………ダダダメ…ですわ………
未婚の男女ですし………一緒のベットで寝るなんて…破廉恥ですぅ………」
「………破廉恥って………どれだけウブなんだよぉ………」
「へぇ⁈」
目の前には顔を覆い肩を震わすリドル様がいる。
「………くくっ………
俺の理性が保つ間は襲わないから大丈夫だ………」
………それって全く大丈夫じゃない気がするけど………
急展開過ぎてもう考えたくない~
私はひとつのベットを見ながら考える事を放棄した………
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