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第5章 忘れられない想い【ミリア&リドル編】

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~リドル視点~

「リドル様…別室にてエリザベス様がお待ちですがいかが致しましょうか?
お話したい事があるようですが………」

「…エリザベスは今ベイカー公爵家に来ているのか?」

「………えぇ。先ほどまで庭の四阿でミリアとお茶をしながら話をしていたようですよ。」

執務室のソファに腰掛け青い花が生けられた花瓶を眺めてミリアの事を考えていた俺にアーサーが声をかける。

………あまり会いたくない………
どうせミリアの事を色々言われるに決まっている………
まだ、ミリアが俺の専属侍女を辞めた事は知られていないと思うが………

「………わかった。エリザベスと会うよ。」




アーサーに別室に案内された俺は、すごい剣幕のエリザベスと相対する事となった。

「どういう事ですの‼︎リドルお兄様!
ミリアがお兄様の専属侍女を辞めたと聞きましたが⁈
いったいお兄様は何をモタモタしてらっしゃいますの‼︎‼︎」

………ミリアが専属侍女を辞めていた事はすでにバレていた………

「………いやぁ………私が辞めさせた訳ではなくて………ミリアから辞めたいと………」

「わたくしはそんな事を聞きたいのではありません!お兄様の事を話す時の哀しそうなミリアの表情………
何があったのですか?
ミリアを悲しませる事になったら直ぐにシュバイン公爵家へ連れて行くと申しましたよね‼︎」

「エリザベス!待て………本当にはやまるな‼︎
ミリアとの事はどうにかするつもりだ………
しかし…色々な事が重なり上手く行かないんだよ………」

俺は初めてエリザベスの前で弱音を吐いてしまった。

………ミリアを振り向かせる手立てがないのだ………



「お兄様らしくありませんわ………
社交界では右に出る者がいないプレイボーイぶりですのに………」

「……プレイボーイって………
別に私は女性皆に分け隔てなく接しているだけで………
まぁ、どちらにしろ好きな女性には全くスマートに接せないが………
ミリアが、私の専属侍女になってから少しずつ打ち解けていたんだ。
それなのに父上から、ルティア王女の婚約者候補に決まったと聞き、今までの計画が全て台無しになった。
ミリアに婚約者候補になったことを告げずに関係を深めていく訳にもいかず、ミリアにその事を伝えてから、打ち解けてきた関係が元の侍女と主人に戻ってしまったんだよ。」

………そう…あの時から全てが上手く行かなくなってしまった………

「そうでしたの………
………お父様も余計な事をしてくださいましたね………
わたくしのミリア幸せ計画を邪魔するなんて!今度お会いした時にとっちめてあげましょ‼︎」

俺の前では、怒り心頭のエリザベスが持っていた扇子を折ったところだ………
エリザベスを愛してやまない父上に対するエリザベスの制裁を思い、俺は心の中で合掌するしかなかった。



「それよりも………ルカ・リックベンの方が厄介だ………
エリザベスは、ルカ・リックベンを知っているか?ミリアの昔馴染みのようなんだが………」

「ルカ・リックベン?聞いたことありません………
リックベン商会なら知っていますが………
シュバイン公爵家もいくつかの店を贔屓にしていたはずです。
その商会と関係がありますの?」

「ルカ・リックベンは、その商会の商会長をしている。サラサラの銀髪で紫の瞳の美丈夫だが、妙な迫力のある男なんだ。
どうもミリアとは昔馴染みの様で、最近よくミリアに会いに来ている。
………ミリアを奪うと俺に先制布告してきた………」

「………それで、ミリアはその男と頻繁に会っているのですか?」

「使用人仲間の間では、ふたりは恋仲だと言われている………
そう思われても仕方ないほど、ルカはミリアに会いに来るし、何回か街に一緒に出掛けてもいる。」

「………なんですのそれ………
お兄様、完全に負けてますわね………
ミリアがその男の手に落ちるのも時間の問題ですわね。
だって………お兄様の事を話すミリアは辛そうですもの………
まぁ、わたくしはミリアが幸せになるならルカ様でも全然構いませんが………」

………ここでエリザベスにも見捨てられたら本当にミリアとの接点がなくなってしまう………

「エリザベスそう言うな。ミリアが私と結婚した方が、お前も気兼ねなくミリアに会えるじゃないか。」

「………まぁ………それもそうよね~
………ふふふ………お兄様、協力してあげますわ。領地の別宅にミリアを誘い出してあげましょう~♪
今度失敗しましたら許しませんからね!」

上手くエリザベスをこちら側に引き止められた様だ………


「それよりもルカ・リックベン………強敵ですわね………
………ルカ………銀髪の美丈夫………紫の瞳………
お兄様…わたくし最近、その方にお会いしたかもしれませんわ………
わたくしがお会いしたのは、街ではなく王城ですが………ハインツ様に紹介されましたの。リザンヌ王国の王太子殿下でしたが………」

………やはり………

ルカ・リックベンは、リザンヌ王国の王太子なのかもしれない。
そしてハインツ殿がこの婚約騒動にも関わっているのかもしれない………

ハインツ殿………また厄介な方と繋がっているのかルカ・リックベンは………

「エリザベス………
本気で私に協力する気があるなら、ハインツ様とルカ王太子の関係を探ってみてくれ。今回の婚約騒動にはハインツ殿も一枚噛んでいる………」

「………ハインツ様でもミリアの幸せを潰す者は許さなくてよ!
お兄様…大丈夫ですわ。ハインツ様には、きっちりルカ王太子との関係聞き出しますから………」

ミリアの事になると怖くなるエリザベスを見て敵に回さずに済みホッとするリドルであった。
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