44 / 92
第5章 忘れられない想い【ミリア&リドル編】
1
しおりを挟む~リドル視点~
ルティア王女とのお茶会の翌日………
俺は執事のアーサーから衝撃的な事実を聞かされる事となった。
『ミリアより申し出がありました。
リドル様の専属侍女を辞めたいそうです………』
ミリアとの関係は最悪のものになっていたが、責任感の強いミリアが自ら辞めると言うとは思っていなかった。
アーサーの話では、ベイカー公爵家の侍女として働き続ける事は了承したらしいが、このままではいつ辞めてルカ・リックベンの処へ行ってしまうかわからない。
ミリアが俺の侍女を辞めて数週間が経った………
毎日の顔を合わせていたのが嘘のように、あの日以来ベイカー公爵家内でミリアと会うことはなくなった。
本当にまだ働いているのか不安になるほどに………
アーサーにミリアが今何をしているのか問いただしたところ、新人メイドの教育係りをしているとの事だった。
15年ベイカー公爵家に勤めているミリアは使用人の間でも一目置かれている人物で、将来的には侍女頭を任せたいと考えているとアーサーは言っていたが………
………ミリアは、俺と結婚するのだから侍女頭になどなるはずないのだが………
いまだにミリアを諦められない俺はウジウジと考えてしまう………
ミリアとの未来はあるのだろうか………
しかし………最も憂慮すべき懸案事項はルティア王女とのことだ………
結局あのお茶会でルティア王女の本心を聞き出すことは出来なかった。
ルティア王女さえ婚約者にレッシュ公爵家のイアンを選んでくれさえすれば、心おきなくミリアに猛アタックを仕掛けられるのに………
………王命とはいえ、何故こちらに拒否権がないのだ!
ルティア王女の気持ち次第で天国にも地獄にもなる今の状況がもどかしい………
俺が手をこまねいている間にも、ルカがミリアとの距離を縮めているかと思うと怒りで腹わたが煮えくりかえる。
………くっそ……何か手はないのか‼︎
数日後………
一通の手紙が俺の元へ届けられた。
『リドル様の大切なメイドの事でお話があります。
ふたり切りでお会いしたいのです。
了承してくださるなら、秘密が守れる場所を手配頂きたい。
お返事お待ちしております。』
………ルティア王女からの手紙だった。
あのお茶会で俺がミリアを見つめていたのに気づかれていたようだ。
大切な話ねぇ………
ルティア王女の誘いは、俺にとって吉と出るのか凶とでるのか………
確か………街にある劇場………
あそこの個室なら秘密を守れるだろう………
何しろ良くも悪くも貴族達の密会の場所だからなぁ~
俺は執事のアーサーを呼び出し、街の劇場の個室観覧席を手配するように申しつけた。
そして当日………
先に劇場の個室観覧席に入っていた俺はルティア王女と相対していた。
「本日は急なお願いを快く引き受けてくださりありがとうございます。」
ルティア王女がカーテシーをとり挨拶をしてくださる。
俺も胸に手を当て、挨拶を返す………
「ルティア王女殿下お久しぶりですね。
お手紙を頂いた時は驚きましたが、またこうして会えたこと嬉しく思っております。
立ち話も何ですから席に座りましょう。」
私はルティア王女をエスコートし、劇場ホールへせり出したバルコニーに置かれたソファへ促す。
そして劇が始まると本題を切り出した………
階下では、劇が始まり大音量で音楽が奏でられている………
これでふたりだけの会話は万が一にも聞かれる事はないだろう………
「ルティア様………お手紙に書かれていた大切なメイドとは誰のことを申されているのですか?」
「………リドル様…わたくしベイカー公爵家でのお茶会の席で違和感を覚えましたの。………リドル様とほとんど目が合いませんでした。貴方様が、あるひとりの女性をずっと見つめてらした………」
………やはり気づかれていたか………
「その女性が、手紙にあった大切なメイドだと………?」
「………えぇ。」
「………くくっ………ルティア様は何か勘違いをされているようだ………
私が一介の使用人を特別だと思う筈がない。」
「それはどうでしょうか………?
わたくしも貴方様と同じ様にある方に恋をしました。
誰かを切ない瞳で追いかける………
わたくしにも覚えがございます。
………リドル様にとって、あの女性は特別な方ですね?」
………ある方に恋をしている?それはいったい誰だ………
「ルティア様………
お互いに腹を割って話した方がいいみたいですね………
貴方が恋している方とは、レッシュ公爵家のイアン殿ですか?」
「………はい………
しかし、今のままではイアンと婚約を結ぶことは出来ません。
リザンヌ王国の意向は、わたくしがベイカー公爵家へ嫁ぐことだからです。
幸い決定権はわたくしにありますので、婚約者を決めるまでの時間をギリギリまで延ばす事は可能です。
どうかイアンとわたくしに協力してください。何としてでもルカ王太子を説得せねばなりません。」
………確かに今の話では、リザンヌ王国の意向でルティア王女は俺を婚約者として選ぶしかない。
そうなれば、拒否権のない俺はミリアと結婚することは出来ない。
何としてでも、リザンヌ王国を説得せねばならないのは俺も同じだ………
「わかった………ふたりに協力しよう………」
「それで何か手立てはあるのか?」
「いえ………ルカ王太子を説得するだけの材料はまだありません………」
「………っ‼︎」
………今、ルカ王太子と言わなかったか?
………ルカ………ルカ・リックベン………
ただの偶然か………?
………これは調べてみる必要がありそうだ。
その後、ルティア王女からリザンヌ王国の現状やルカ王太子の生い立ち、王宮での立ち位置、今後の社交の場での俺との関係性などを打ち合わせ別れた。
1
お気に入りに追加
720
あなたにおすすめの小説
【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる
三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。
こんなはずじゃなかった!
異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。
珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に!
やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活!
右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり!
アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

立派な王太子妃~妃の幸せは誰が考えるのか~
矢野りと
恋愛
ある日王太子妃は夫である王太子の不貞の現場を目撃してしまう。愛している夫の裏切りに傷つきながらも、やり直したいと周りに助言を求めるが‥‥。
隠れて不貞を続ける夫を見続けていくうちに壊れていく妻。
周りが気づいた時は何もかも手遅れだった…。
※設定はゆるいです。
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?
アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。
泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。
16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。
マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。
あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に…
もう…我慢しなくても良いですよね?
この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。
前作の登場人物達も多数登場する予定です。
マーテルリアのイラストを変更致しました。

【 完結 】「平民上がりの庶子」と言っただなんて誰が言ったんですか?悪い冗談はやめて下さい!
しずもり
恋愛
ここはチェン王国の貴族子息子女が通う王立学園の食堂だ。確かにこの時期は夜会や学園行事など無い。でもだからってこの国の第二王子が側近候補たちと男爵令嬢を右腕にぶら下げていきなり婚約破棄を宣言しちゃいますか。そうですか。
お昼休憩って案外と短いのですけど、私、まだお昼食べていませんのよ?
突然、婚約破棄を宣言されたのはチェン王国第二王子ヴィンセントの婚約者マリア・べルージュ公爵令嬢だ。彼女はいつも一緒に行動をしているカミラ・ワトソン伯爵令嬢、グレイシー・テネート子爵令嬢、エリザベス・トルーヤ伯爵令嬢たちと昼食を取る為食堂の席に座った所だった。
そこへ現れたのが側近候補と男爵令嬢を連れた第二王子ヴィンセントでマリアを見つけるなり書類のような物をテーブルに叩きつけたのだった。
よくある婚約破棄モノになりますが「ざまぁ」は微ざまぁ程度です。
*なんちゃって異世界モノの緩い設定です。
*登場人物の言葉遣い等(特に心の中での言葉)は現代風になっている事が多いです。
*ざまぁ、は微ざまぁ、になるかなぁ?ぐらいの要素しかありません。
僕は君を思うと吐き気がする
月山 歩
恋愛
貧乏侯爵家だった私は、お金持ちの夫が亡くなると、次はその弟をあてがわれた。私は、母の生活の支援もしてもらいたいから、拒否できない。今度こそ、新しい夫に愛されてみたいけど、彼は、私を思うと吐き気がするそうです。再び白い結婚が始まった。
あなたが選んだのは私ではありませんでした 裏切られた私、ひっそり姿を消します
矢野りと
恋愛
旧題:贖罪〜あなたが選んだのは私ではありませんでした〜
言葉にして結婚を約束していたわけではないけれど、そうなると思っていた。
お互いに気持ちは同じだと信じていたから。
それなのに恋人は別れの言葉を私に告げてくる。
『すまない、別れて欲しい。これからは俺がサーシャを守っていこうと思っているんだ…』
サーシャとは、彼の亡くなった同僚騎士の婚約者だった人。
愛している人から捨てられる形となった私は、誰にも告げずに彼らの前から姿を消すことを選んだ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる