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第5章 忘れられない想い【ミリア&リドル編】
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しおりを挟む~リドル視点~
ルティア王女とのお茶会の翌日………
俺は執事のアーサーから衝撃的な事実を聞かされる事となった。
『ミリアより申し出がありました。
リドル様の専属侍女を辞めたいそうです………』
ミリアとの関係は最悪のものになっていたが、責任感の強いミリアが自ら辞めると言うとは思っていなかった。
アーサーの話では、ベイカー公爵家の侍女として働き続ける事は了承したらしいが、このままではいつ辞めてルカ・リックベンの処へ行ってしまうかわからない。
ミリアが俺の侍女を辞めて数週間が経った………
毎日の顔を合わせていたのが嘘のように、あの日以来ベイカー公爵家内でミリアと会うことはなくなった。
本当にまだ働いているのか不安になるほどに………
アーサーにミリアが今何をしているのか問いただしたところ、新人メイドの教育係りをしているとの事だった。
15年ベイカー公爵家に勤めているミリアは使用人の間でも一目置かれている人物で、将来的には侍女頭を任せたいと考えているとアーサーは言っていたが………
………ミリアは、俺と結婚するのだから侍女頭になどなるはずないのだが………
いまだにミリアを諦められない俺はウジウジと考えてしまう………
ミリアとの未来はあるのだろうか………
しかし………最も憂慮すべき懸案事項はルティア王女とのことだ………
結局あのお茶会でルティア王女の本心を聞き出すことは出来なかった。
ルティア王女さえ婚約者にレッシュ公爵家のイアンを選んでくれさえすれば、心おきなくミリアに猛アタックを仕掛けられるのに………
………王命とはいえ、何故こちらに拒否権がないのだ!
ルティア王女の気持ち次第で天国にも地獄にもなる今の状況がもどかしい………
俺が手をこまねいている間にも、ルカがミリアとの距離を縮めているかと思うと怒りで腹わたが煮えくりかえる。
………くっそ……何か手はないのか‼︎
数日後………
一通の手紙が俺の元へ届けられた。
『リドル様の大切なメイドの事でお話があります。
ふたり切りでお会いしたいのです。
了承してくださるなら、秘密が守れる場所を手配頂きたい。
お返事お待ちしております。』
………ルティア王女からの手紙だった。
あのお茶会で俺がミリアを見つめていたのに気づかれていたようだ。
大切な話ねぇ………
ルティア王女の誘いは、俺にとって吉と出るのか凶とでるのか………
確か………街にある劇場………
あそこの個室なら秘密を守れるだろう………
何しろ良くも悪くも貴族達の密会の場所だからなぁ~
俺は執事のアーサーを呼び出し、街の劇場の個室観覧席を手配するように申しつけた。
そして当日………
先に劇場の個室観覧席に入っていた俺はルティア王女と相対していた。
「本日は急なお願いを快く引き受けてくださりありがとうございます。」
ルティア王女がカーテシーをとり挨拶をしてくださる。
俺も胸に手を当て、挨拶を返す………
「ルティア王女殿下お久しぶりですね。
お手紙を頂いた時は驚きましたが、またこうして会えたこと嬉しく思っております。
立ち話も何ですから席に座りましょう。」
私はルティア王女をエスコートし、劇場ホールへせり出したバルコニーに置かれたソファへ促す。
そして劇が始まると本題を切り出した………
階下では、劇が始まり大音量で音楽が奏でられている………
これでふたりだけの会話は万が一にも聞かれる事はないだろう………
「ルティア様………お手紙に書かれていた大切なメイドとは誰のことを申されているのですか?」
「………リドル様…わたくしベイカー公爵家でのお茶会の席で違和感を覚えましたの。………リドル様とほとんど目が合いませんでした。貴方様が、あるひとりの女性をずっと見つめてらした………」
………やはり気づかれていたか………
「その女性が、手紙にあった大切なメイドだと………?」
「………えぇ。」
「………くくっ………ルティア様は何か勘違いをされているようだ………
私が一介の使用人を特別だと思う筈がない。」
「それはどうでしょうか………?
わたくしも貴方様と同じ様にある方に恋をしました。
誰かを切ない瞳で追いかける………
わたくしにも覚えがございます。
………リドル様にとって、あの女性は特別な方ですね?」
………ある方に恋をしている?それはいったい誰だ………
「ルティア様………
お互いに腹を割って話した方がいいみたいですね………
貴方が恋している方とは、レッシュ公爵家のイアン殿ですか?」
「………はい………
しかし、今のままではイアンと婚約を結ぶことは出来ません。
リザンヌ王国の意向は、わたくしがベイカー公爵家へ嫁ぐことだからです。
幸い決定権はわたくしにありますので、婚約者を決めるまでの時間をギリギリまで延ばす事は可能です。
どうかイアンとわたくしに協力してください。何としてでもルカ王太子を説得せねばなりません。」
………確かに今の話では、リザンヌ王国の意向でルティア王女は俺を婚約者として選ぶしかない。
そうなれば、拒否権のない俺はミリアと結婚することは出来ない。
何としてでも、リザンヌ王国を説得せねばならないのは俺も同じだ………
「わかった………ふたりに協力しよう………」
「それで何か手立てはあるのか?」
「いえ………ルカ王太子を説得するだけの材料はまだありません………」
「………っ‼︎」
………今、ルカ王太子と言わなかったか?
………ルカ………ルカ・リックベン………
ただの偶然か………?
………これは調べてみる必要がありそうだ。
その後、ルティア王女からリザンヌ王国の現状やルカ王太子の生い立ち、王宮での立ち位置、今後の社交の場での俺との関係性などを打ち合わせ別れた。
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