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第4章 思惑は交錯する【ルティア編】
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しおりを挟むルカ王太子との会談を終え、レッシュ公爵家に戻って来た私は、アンナにひとりにして欲しいと伝え自室に籠もった。
「………ひっく…ひっ………うっく………」
自室に入るともう我慢出来なかった………
ベットに突っ伏し泣きじゃくる………
………胸が痛い………苦しい………
イアンへの想いが溢れて心が辛い………
リザンヌ王国王女として自己の感情を殺して国のためベイカー公爵家へ嫁ぐべきだと頭ではわかっている。
でも………心が拒否する………
生まれた時から王宮に囚われ、他国に嫁ぐことになってもリザンヌ王国と長い鎖で繋がれ自由になれない………
私は一生、心を殺して生きていかなければならないの………
外の世界を知らない頃であれば、国のために生きることが当たり前だと思っていた。
でも…一度自由になった心を元に戻すことは出来ない………
もう我慢なんて出来ないのぉ………
「………っ⁈」
いつの間にか部屋に入ってきていたイアンに後ろから抱きしめられていた。
「………ルティ………こんなに泣いて………
ルカ王太子に何か言われたんだね………」
「………もう…イヤなの………
お願いイアン………わたくしの事を誰も知らないところに連れて逃げて………」
………そんなこと…絶対出来ないのはわかっている………
でも言わずにはいられなかった………
「………ルティア………」
イアンは泣きじゃくる私をただただ抱きしめ続けてくれた………
「ルティ…落ち着きましたか?」
しばらく泣きじゃくっていたが、時間が経てば徐々に落ち着いてくるものだ。
急に恥ずかしくなってきた私はイアンから離れようと身動ぐが、イアンはさらに私を抱く腕を強くする………
「ルカ王太子に何を言われたか…今なら言えますか?」
………私はぽつりぽつりと話始めた………
リザンヌ王国王女としてベイカー公爵家へ嫁ぐように言われたこと。
リドル様の心を掴むため行動するように言われたこと。
イアンとの関係を疑われたこと。
グルテンブルク王国に来てからの行動を監視されている可能性。
ルカ王太子は、シュバイン公爵家とベイカー公爵家が姻戚関係にある事で、ベイカー公爵家は王家に匹敵する力を持っていると考えていること。
「…それでルティは、ベイカー公爵家のリドルと婚約するつもりなの?」
私はイアンの胸でイヤイヤと首を振る………
「あくまでも、婚約者を決めるのはルティだよね………
たとえルカ王太子が何を言っても決めるのはルティだ。グルテンブルク王家は決定権はルティア王女にあると、リザンヌ王国の陛下に書簡を送っている。
ルカ王太子が何を言っても君が陛下にリドルと婚約すると言わない限り進まないようになっている。
………だからルカ王太子はルティに圧力をかけてきたんだろうけど………」
………え⁈私に婚約者を選ぶ決定権がある………?
父王が最後に言っていたことは、単なる比喩だと思っていた………
結局のところ決めるのはリザンヌ王国だと………
「しかし…ルカ王太子が圧力をかけてきた今、ルティがレッシュ公爵家に嫁ぐと言っても最大限の圧力をかけてくるだろう。
何より僕と婚約したとしても無事に結婚までこぎつけるかもあやしい。
さてどうしたものか………?
ルカ王太子を黙らせるだけのカードを切れるかどうか………」
私は、リドル様のある光景を思い出した………
ベイカー公爵家でのとあるメイドを見つめる視線………
イアンに恋した今ならわかる………
あの方はリドル様の想い人………
上手くいけばルカ王太子を出し抜くことが出来るかもしれない………
「イアン………お願いがあるの………
わたくしが、今後どんな行動を取ろうとも…わたくしが愛しているのはイアンだけよ………
それだけは絶対に忘れないで………
どうかわたくしを信じていて………」
私はイアンに抱きつく腕を強めた………
………数日後………
ベイカー公爵家のリドル宛に一通の手紙が届けられた。
『リドル様の大切なメイドの事でお話があります。
ふたり切りでお会いしたいのです。
了承してくださるなら、秘密が守れる場所を手配頂きたい。
お返事お待ちしております。』
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