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第3章 思惑は交錯する【ミリア編】
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しおりを挟む最近の私は最悪だった………
リドル様に泣き顔を見られ、ルカとの事を怒鳴られた夜から仕事にも身が入らない日々が続いていた。
私は自室のベットで横になり、リドル様との事を考えていた。
ルティア王女の婚約者候補と聞いたとき、確かにひどいショックを受けた………
エリザベスお嬢様がシュバイン公爵家へ嫁ぎ、残された私はリドル様付きの侍女になった。
幼かった時は子供同士、身分差なんて関係なく遊べていたのに私が遊び相手から侍女になると今までの関係は少しずつ変化していった。
エリザベスお嬢様の専属侍女となれば益々接する機会はなくなり、ベイカー公爵家に居ても会う事も殆どなく、会話なんてする機会はなかった。
身分が違い過ぎると諦めた幼い頃の想いは、リドル様を見かける度に少しずつ心の奥底から溢れて来ていた………
いつの間にかリドル様を見かける度に目で追ってしまう………
侍女仲間がリドル様と話しているのを見かければ嫉妬してしまう………
本当は、リドル様の専属侍女に選ばれた事を聞いた時、舞い上がるほど嬉しかったのだ。
初めて朝起こしに行き他の女性と間違えられキスされた時もショックだったが奥底ではファーストキスがリドル様であった事実に心が震えた。
………何故こんなにもリドル様に囚われてしまうのだろう………
結局………幼い頃の闇を纏ったリドル様が忘れられないのよね。
毎日のように乳母である母に甘えにきたリドル様………
彼の瞳が宿した哀しみを見るたび、堪らなくなった。
彼の哀しみを癒すのは母ではなく私でありたかった………
本当の彼を知っているのは私だけ………
………完全に初恋を拗らせたのは私の方だわ………
社交界でも有名なプレイボーイである今のリドル様に闇なんてないのに………
もう彼には私は必要ない………
ルティア王女という素晴らしい女性と共に未来を歩んで行くのが相応しい………
私はリドル様への初恋を本当に断ち切らないといけない時期が来たことを確信していた。
それから数日後………
ルティア王女がベイカー公爵家を訪れ、お茶会が開かれた。
私はリドル様にエスコートされ進むルティア王女を後ろから見ていた。
可愛らしい王女をエスコートするリドル様………
私から見てもお似合いの二人に見える………
庭の四阿でお茶会が始まれば、ふたりの会話は途切れる事なく進んでいく。
リドル様もとても楽しそうに話をされていた。
若くて、地位も教養も知性も併せ持つ隣国のお姫様………
25歳崖っぷち貧乏男爵令嬢の私………
とても敵わないと思った………
私は楽しそうにお茶をするふたりを見ているのが辛く、四阿がギリギリ見える遠い位置へ移動する。
私がいなくても他の侍女が対応するわ………
私はある決意のもと、その場を離れた。
『トントン』
「失礼致します。」
私は執事のアーサーの私室へ来ていた。
「………どうしました?ミリア………
難しい顔をして………」
執務机で書類を確認していたアーサーが顔をあげる。
「お願いがございます!リドル様の専属侍女を辞めさせて頂きたいのです。」
「………いつか貴方から言ってくるのではないかと思っていました。
最近の貴方は全く仕事に身が入っていなかった。あれでは、リドル様付き侍女は難しいでしょう。
理由は聞きません………
ただ、貴方ほどの優秀な侍女を手放すのは惜しい事です。
希望は出来るだけ聞きましょう。ベイカー公爵家には残ってくださいますか?」
私は、ただただ嬉しかった………
使用人のトップである執事のアーサーにベイカー公爵家に仕えた15年間を認められていた事実に………
エリザベスお嬢様に仕えた15年間は無駄では無かったのね………
私はアーサーの言葉に涙を堪えて頷いた。
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