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第3章 思惑は交錯する【ミリア編】
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しおりを挟む馬車に乗った私は隣に座るルカにずっと手を握られていた。
「ミリア………本当に綺麗です………
普段のミリアも十分に綺麗ですが、今のミリアは色気も纏ってとても魅力的だ。」
先ほどから紡がれる過剰な褒め言葉に益々私の頬は真っ赤に染まる。
「………ルカ………それ以上は恥ずかし過ぎるわ………」
「どうしてですか?淡い緑色のドレスも艶やかな赤色の髪とマッチしてとても魅力的に見える。」
俯いてしまった私の耳元でルカが囁く………
「………顕になったうなじが赤く上気して色っぽい………」
悪戯に囁かれる言葉に益々私が赤くなってしまったのは言うまでもない………
「………」
馬車から降りた私は本日二度目の絶句をしていた。
眼前にそびえ立つ建物は紛れもなくかの有名なレストランだ。
貴族御用達なんて生優しいものではない………
市井のど真ん中にあるのに王族御用達のレストランなのだ。高位貴族の中でも選ばれた者以外入ることも出来ない。
………確かにこのレストランへは、あの格好では入れないわね………
私達はエントランスで支配人に出迎えられる。
公爵家のエリザベスお嬢様ですら支配人に出迎えられたことなんて一度もないわよぉ………
あまりの大物ぶりに隣のルカを思わず見上げてしまう。
「ルカ様ようこそお越しくださいました。今夜は特別室をご用意しております。」
「支配人遅くなって済まなかった………」
ルカにエスコートされた私は、支配人の案内で二階へ続く階段を登る。
このレストランは一階は、幾つかのテーブルが等間隔に並べられ不特定多数のお客様がディナーを楽しめる造りとなっていて、二階席は趣向をこらした贅沢な造りの個室席となっていた。
私達が通された個室は、一番奥の角部屋で大きなガラス張りの窓が二面ある特別室だった。そこからはレストランの広大な庭が見渡せ、闇夜にキラキラと輝くキャンドルが左右対象に並べられ幻想的な雰囲気を演出していた。
「わぁ~なんて綺麗なのぉ………」
私は窓に近づき感嘆の声をもらす………
「………ミリア………気に入ってくれて良かった………」
私は背後に近づいて来たルカに肩を抱かれる。
「………っ!………ルカ………席につかなきゃ‼︎」
私は慌ててルカの腕から逃げ出し席に着く。
「………くくっ………ごめんごめん………
私も席に着くよ………」
笑いを噛み殺すルカをみて、揶揄われていたことに気づく。
「いい加減にしないと帰るわよ!」
私は赤くなった顔を誤魔化すように叫んでいた。
その後は、ルカに揶揄われることもなく次々と運ばれてくる料理に舌鼓をうつ。
さすが王族御用達のレストランだけあって何を食べても味は一級品だった。
ルカとのたわいも無い会話も、面白おかしく話してくれるから飽きることも無かった。
最後にデザートの鮮やかなプチケーキが運ばれてきたときは、数の多さにビックリしてしまった。
私はお腹もいっぱいだったので3つだけ選び一緒に紅茶をお願いしたが、甘党のルカはプチケーキを10個選び、それを実に美味しそうに頬張っている。
………相変わらず甘いもの好きなのね~
私は紅茶を飲みながらデザートを食べるルカを見ていた。
「ねぇ………ミリア………今日公爵家で何かあったの?」
「えっ⁈………何も無いわ………」
リドル様との会話を思い出した私の顔がみるみる歪んでいく………
「そんなことないでしょ?きちんとしているミリアが昼にした私との約束も忘れてた程の何かがあったんでしょ?
………今も泣きそうな顔している。」
「………ルカ………何でもないのよ………
何でもないの………………………」
「ミリアに好きな人がいるのは何となくわかっていたよ………
その人と辛い恋をしているの?」
「………」
私は俯き耐えきれず涙を零す………
嗚咽を噛み殺す私を近づいて来たルカが抱きしめる………
「………私のミリアをこんなに悲しませる男のことなんて忘れてしまえばいい………
………いや…私が忘れさせてあげる………」
ルカは私の頬を両手で包み込み上向かせる………
そして唇にキスを落とされていた………
ルカに抱きしめられた私の心が慰められるのを感じながら………
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