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第3章 思惑は交錯する【ミリア編】
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私はルカに連れてこられたドレスショップを見上げ絶句していた。
………ここって………
高位貴族御用達のドレスショップよ………
それもドレスショップ側が選んだ顧客の注文しか受けないって有名な。
エリザベスお嬢様の侍女をしていた私は、当時このショップに何度も足を運んでいた。上顧客だったエリザベス様は、小物もここで注文されることが多く、よく受け取りに来たのだ。
このドレスショップの支配人を勤めるマダムは業界では有名な気難し屋だったが、私は何故かマダムのお気に入りで、来る度にお茶に付き合わされたものだ。
………そのマダム自らエントランスで出迎えてくださるなんて………ありえないわ。
「ようこそお越しくださいましたルカ様。お待ちしておりました。」
「すまなかったねマダム………
急な願いを聞き入れてくれて感謝してるよ。」
「何を言いますかルカ様。わたくしとルカ様の仲ではないですかぁ~
ところで例のお嬢様は………
あら⁈ミリアじゃないのぉ~
久しぶりね~最近めっきり会わなかったから寂しかったのよ。
………じゃあ………例のお嬢様ってミリアなの‼︎
………ふふふ………ルカ様!とびっきりの令嬢に仕上げてみせますわ‼︎」
「よろしく頼むよ。」
私は妙に気合いの入ったマダムに強制連行されていく………ルカに見送られながら………
「ミリアも隅におけないわね。ルカ様と恋仲なんて………」
「マダム誤解です。ルカと私は恋人ではありません!」
私はマダムの着せかえ人形になりながらたわいもない会話をしていた。
「えっ⁈そうなの?嘘でしょ~!だってあのルカ様よ………
どんな美女にもなびかないって有名だったのよ~
このショップにも自身の服は注文しに来るけど女性を連れて来たことなんて一度もなかったもの。
それが急に令嬢をひとりドレスアップしたいなんて手紙が届いたものだったからビックリしてたのよ。
まさかミリアが来るとは思わなかったけど………」
どうもルカとマダムは旧知の仲らしい…
そう言えば、私ルカの事何も知らないわね………
リックベン商会の商会長って事くらいしか………
ルカの街での評判ってどうなのかしら………?
「………ねぇマダム………ルカって街ではどうなの?やっぱり有名な人なの?」
「えっ?ミリア何も知らないの⁈
ルカ・リックベンって言ったら街で知らない人はいないわよ!
だってあの手広くやっているリックベン商会の商会長よ!
それだけじゃなく、例の第二王子様が廃太子された事件以降、裏界隈を牛耳っていた組織が壊滅したじゃない。あれ以降急激に伸びてきたのがリックベン商会なのよ。裏組織にもかなり顔が効く方だし、荒れ放題だった裏界隈を整備して、良いように使われてた子供達に雇用を与えたのも彼よ。今じゃすっかり裏界隈も治安が良くなって新しいお店も沢山出来ているわ。まぁ、ほとんどの店がリックベン商会の支援を受けているしね。」
マダムの口から聞かされる話は、知らない事ばかりでただただ驚かされるばかりだ………
「それであの容姿でしょう~
独身女は放っておかないわよぉ。ルカ様の恋人になりたい女性は、貴族、平民問わず五万といるわよ~」
「それよりもミリアはルカ様とどういう関係なのよ!呼び捨てする仲なんて唯の知り合いじゃないわよねぇ~」
マダムに問われるままルカと私の幼少期の出会いから街で助けてもらった時、久々の再会をした事まで話してしまっていた。
「………素敵ね~幼少期に自分を救ってくれた女の子を大人になって偶然助けるなんて………久々に会ったふたりは恋に落ちました………って感じかしら~」
マダムは夢見る少女みたいに瞳をキラキラさせている………
「だからルカとはそういう仲ではないんです!マダム。」
「………貴方がそう思っててもルカ様は分からないわよぉ~
私から見てもミリアに対する接し方は他の女性達と違うもの~
あんな良い男そうそう居ないんだから、さっさと捕まえときなさい!」
私はマダムの押しにタジタジになりながらなんとかドレスに着替え終わると、その足で隣のサロンへ連れて行かれ、髪をハーフアップにし、薄く化粧も直される。
「はい!出来たわよ。お嬢様!」
鏡には、今まで見たこともない美女が写っていた。
………これ………本当に私なの?
化粧と服装でこんなに変わるなんて………
「ミリアは元の素材が良いんだから、あとは化粧とドレスアップでそこいらの令嬢じゃ足もとにも及ばない美女になれるんだから自信持ちなさいよ!
………女性は恋することでもっと綺麗になれるわ………
ミリア頑張って!」
私はマダムにルカの元へ送り出される………
「ルカ様!お待たせ~
とびきりの美女を連れて来たわ❤︎」
マダムは私をルカへと押し出す………
「………見違えました………本当に美しい………」
「ルカ………いいのよ。気を使わなくても………」
「ミリア………貴方は何を言ってるのですか?本当に綺麗です。惚れなおしました………」
「………」
私はルカの言葉に赤面して俯いてしまう。
「マダム!このお礼は後日必ず致します。急ぎますので失礼します。」
私はルカに手を引かれ、マダムへのお礼もそこそこに馬車へ乗せられ、夜の街を走り出す。
ルカの性急な行動に苦笑しているマダムに見送られながら………
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