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第3章 思惑は交錯する【ミリア編】
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しおりを挟む「ミリア!貴方の恋人がエントランスでお待ちよぉ~」
「………あのねぇ………ルカは恋人じゃないわ。友達よ………」
ルカと街に行った日以来、ルカは頻繁にベイカー公爵家を訪れるようになった。
それも、私が休憩時間の時を狙ってだ。
………そもそも休憩時間が何時かなんて教えてないんだけど………どこから聞き出したのかしら…?
まぁ、あの天性の人たらしスマイルでベイカー公爵家の使用人達を誑し込んだのでしょうけど………
今ではただの旧友が、使用人仲間の間では恋人という事になっている。
「もぅ、ミリアったら………
嘘つかなくても分かっているわよ!
あんな美丈夫が何とも思ってない女の所に頻繁に通う訳無いじゃない。
ミリアに会えない日は、ワザワザ花束まで届けさせるのに………
有名な商会長で美丈夫な男………今後絶対に現れないからしっかり捕まえておくのよ‼︎何だったらミリアから仕掛けて既成事実作っちゃえばいいのよぉ~」
貴族社会では厳しい目で見られる婚前交渉も平民の間では大目に見てもらえることも多く、平民同士の結婚では婚前交渉しているカップルも珍しくない。
「………」
私は、使用人仲間の言葉に背を向けエントランスへ向かう。
「ルカ!待たせてしまってごめんなさい。貴方も忙しいんだから頻繁に会いに来なくてもいいのに………
それに毎日お花やお菓子などプレゼントも………
私…何もお返し出来ないわ………」
「ミリア…気にしないでください。
私が貴方に会いたくて来ているのですから………
プレゼントも気に入ってくれているなら嬉しいです。」
ルカの言葉に思わず赤面してしまう………
………深い意味はないのよ…きっと………
「今日はディナーを御一緒出来ないかと誘いに来ました。私に申し訳ないと思っているなら一緒に行きましょう。
街でも有名な美味しいレストランなんです。きっと気に入ってくれると思います。」
「そうね………特に夜予定もないし御一緒しようかしら………」
「じゃあ決まりですね。また仕事が終わる頃に迎えに来ますね。」
………もう………本当強引なんだから………
私は呆れながらルカの背中を見送った。
あとは、リドル様の私室に昼食を持って行かなきゃ………
私は厨房へ行きリドル様用の昼食をワゴンにのせ部屋へ向かう。
リドル様がルティア王女の婚約者候補になったという話を聞いてから私達の関係は在るべき姿に戻った………
………主人と侍女の関係に………
これが正しい関係だと頭ではわかっている。しかし、一度火のついた感情を消す事はどうしても出来なかった。
リドル様の専属侍女として毎日接していれば嫌でも思いしらされる………
………リドル様を好きだという感情を………
噂では、リドル様とルティア王女の婚約の話は進んでいるらしい。
これからルティア王女がリドル様に会いにベイカー公爵家へ訪れる事も増えるだろう………
その時、仲睦まじいリドル様とルティア王女を果たして平常心で見ていられるのだろうか………
私は、リドル様の専属侍女を辞めなければ心が壊れてしまうとわかっていた。
『トントン』
「失礼致します。昼食をお持ちしました。」
「そこのテーブルに置いてくれ。」
リドル様は何やら難しい顔をして書類を読んでいる。
ただ、仕事をしているだけの姿にも胸が締めつけられる。
………ミリア!仕事に集中よ‼︎
私は自分に言い聞かせワゴンから昼食をテーブルへ並べていく。
「ミリア………近々、ルティア王女がベイカー公爵家へ来ると思う。お茶会への誘いの手紙を出した。可能であれば、ルティア王女の国の菓子を準備しておいてくれ。リザンヌ王国を離れて寂しい思いをされているかもしれない。自国の菓子ならきっと癒しになる。」
………とうとうその時が来てしまったのね………
「かしこまりました。至急手配致します。」
私は、ジクジクと痛み出した心を無視し仕事に徹した。
仕事が終わり自室にてボーッとしていた私に侍女仲間からルカがエントランスで待っていることが伝えられる。
………マズイ!ディナーの約束をしていたんだったわ………
私は慌てて普段着のワンピースに着替え部屋を飛び出した。
「ごめんなさい!ルカ。待たせてしまったわ‼︎」
息を切らしながらエントランスに駆け込んだ私をルカは怪訝そうに見る。
「………ミリア、もしかして今仕事終わったばかりですか?
なんだか、いつもの仕事着とあまり変わらないような………?」
私はあまりに急いで準備した為、街歩きをする時の簡素なワンピースに、髪は仕事の時のまま、ただ纏めているだけ………
アクセサリーさえ着けていない状態だった。
対するルカは、いつもの普段着とは違い洒落たジャケットにトラウザーズをあわせた、きちんとした出で立ちだ。
「………っ!ごめんなさいルカ………
急いでいたもので………時間があれば着替えてくるわ。」
ふたりの出で立ちのあまりの違いに恥ずかしくなり自室に戻ろうとした私の手をルカが掴む。
「ミリア………大丈夫です。
私がきちんとドレスコードを伝えなかったのが悪いんです。
今の姿でも十分綺麗ですが、今夜行くレストランは貴族御用達の店なんです。
今からだと既製品になってしまいますが、このままドレスショップへ行きましょう。
お詫びにプレゼントさせてください。」
「えっ!でも悪いわ………」
「時間もありませんし行きますよ!」
私は強引なルカに手をひかれ豪華な馬車に乗せられた。
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