売れ残り男爵令嬢は、うたた寝王女の愛ある策略に花ひらく

湊未来

文字の大きさ
上 下
18 / 92
第2章 うたた寝王女絶叫編

9

しおりを挟む

それから数日後、改めてルティア王女歓迎の夜会の日取りがレッシュ公爵から伝えられ、それまでの間、イアンがダンスの練習相手となる事が決まった。


………数週間後………

「ルティア様、そこのステップは足が逆です。男性が前に踏み出し、女性は後ろに一歩下がる………
そうです…だいぶ上手になって来ましたよ。」

講師は、マリアンヌ様が務めてくださっているがリザンヌ王国でのダンスのステップと真逆に踏むパートも多く、ルティアは四苦八苦していた。

………昔からダンスだけは不得意だったのよ………

まともな教師をつけてもらえなかったルティアは、ダンスも例外ではなくサラッとしかステップは教えてもらえなかった。ほとんどを独学で覚えたが、実践がものを言うダンスだけは、どうしても上達出来なかった。

王宮での夜会は極力参加せず、どうしても出席しないとマズイ夜会のみ出席をし、体調不良などを理由に人前でダンスを踊る事を避けて来たが、まさかグルテンブルク王国で初ダンスを踊ることになるとは………


ダンスって、こんなに難しいものなの?

ルティアは、正直頭を抱えてしまっていた。


「………ルティ………
足もとばかり気にしていたら、姿勢が悪くなって踊りにくくなってしまうよ。
大丈夫だから………僕の顔を見て、身を任せてご覧よ。きちんと支えてあげるから………」

イアンに腰を強く抱かれる………

………近い近い近い………

あまりの至近距離に心臓が爆発しそうだ………

何とか顔を上げイアンと顔を合わせるが、蕩けるような笑顔を見て、気恥ずかしさに俯いてしまう。

…私…今顔真っ赤よね………

あの笑顔………絶対わざとやってるわよ!

恥ずかしさで憤死しそうな私は、度々足をもつれさせてしまう。
その度に、イアンが上手に私の腰を支えステップを元に戻してくれる。

………本当にリードが上手いわ………



「はい!そこまで。
少し休憩にしましょう。」

マリアンヌ様の号令でダンスは終わり、休憩となった。

メイドがお茶の準備を始め、程なくして簡易的な3人でのお茶会が始まった。

「ルティア様、始めの頃に比べだいぶ上手になって来ましたね。これなら、夜会でも上手く行きそうですよ。
後は殿方ときちんと視線を合わせて、足もとを見ないことが大切です。イアンと練習あるのみです。
ルティア様には残念なお知らせですが、当日のパートナーは、ベイカー公爵家のリドル様に決まりました。」

「えぇ⁈イアン様ではないのですか?」

私は思わずイアンの方を見ると、困った顔でこちらを見つめていた………

「大丈夫ですよルティア様。ベイカー公爵家のリドル様はダンスの名手です。
どんなに下手な令嬢のダンスも華麗にリードされると有名な貴公子です。
イアンと踊れているルティア様ならきっと大丈夫です。後は、足もとを見ず踊りきるだけです。」

「………マリアンヌ様………」

「あぁ!忘れていたわ。これから用事がありますの。後は、イアンと一緒に練習してくださいませね。ルティア様!実践あるのみです‼︎」

マリアンヌ様は、私にエールを送ると颯爽と部屋を出て行った。




「………ルティ………そんなに心配そうな顔しないの。最後まで僕が練習相手として付き合ってあげるから………ね!」

「でも、まだステップも完璧でないし、きっとリドル様の足を踏んでしまうわ………」

「大丈夫だよ。アイツは、女性の扱いならお手のものだから………
足を踏んだところで、華麗にリードしてくれるさ………
それより、ルティは本当はダンス嫌いなんだろう?
でも………ステップなんて気にせず思いのまま踊ってみなよ。きっと楽しいから………
失敗しても全部僕が受け止めてあげる。」

私は、イアンに手をとられフロアに連れて行かれる。

いつもの曲ではなく少し早いテンポの曲が流れ出す………

イアンは私の腰を抱き踊り出す。

………クルクルクルクル………

足をもつれさせながら、回り出す………

イアンのリードに任せるしかないダンスは、何故か宙を舞っているように軽かった。

………クルクルクルクル………

ただ回っているだけなのに楽しくなっていく。

いつの間にかクスクス笑いながらイアンに身を任せ、見つめ合っていた………

私の心の奥底に火が灯る………

曲が終わり、体を離そうとした私の腰を強く引き寄せイアンは、私を見つめる。

「………ルティ………忘れないで欲しい。
僕が誰よりも貴方を想っているということを………」

………額にイアンの口づけが落とされた………

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる

三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。 こんなはずじゃなかった! 異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。 珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に! やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活! 右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり! アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

立派な王太子妃~妃の幸せは誰が考えるのか~

矢野りと
恋愛
ある日王太子妃は夫である王太子の不貞の現場を目撃してしまう。愛している夫の裏切りに傷つきながらも、やり直したいと周りに助言を求めるが‥‥。 隠れて不貞を続ける夫を見続けていくうちに壊れていく妻。 周りが気づいた時は何もかも手遅れだった…。 ※設定はゆるいです。

5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?

gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。 そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて 「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」 もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね? 3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。 4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。 1章が書籍になりました。

【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?

アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。 泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。 16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。 マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。 あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に… もう…我慢しなくても良いですよね? この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。 前作の登場人物達も多数登場する予定です。 マーテルリアのイラストを変更致しました。

【 完結 】「平民上がりの庶子」と言っただなんて誰が言ったんですか?悪い冗談はやめて下さい!

しずもり
恋愛
 ここはチェン王国の貴族子息子女が通う王立学園の食堂だ。確かにこの時期は夜会や学園行事など無い。でもだからってこの国の第二王子が側近候補たちと男爵令嬢を右腕にぶら下げていきなり婚約破棄を宣言しちゃいますか。そうですか。 お昼休憩って案外と短いのですけど、私、まだお昼食べていませんのよ?  突然、婚約破棄を宣言されたのはチェン王国第二王子ヴィンセントの婚約者マリア・べルージュ公爵令嬢だ。彼女はいつも一緒に行動をしているカミラ・ワトソン伯爵令嬢、グレイシー・テネート子爵令嬢、エリザベス・トルーヤ伯爵令嬢たちと昼食を取る為食堂の席に座った所だった。 そこへ現れたのが側近候補と男爵令嬢を連れた第二王子ヴィンセントでマリアを見つけるなり書類のような物をテーブルに叩きつけたのだった。 よくある婚約破棄モノになりますが「ざまぁ」は微ざまぁ程度です。 *なんちゃって異世界モノの緩い設定です。 *登場人物の言葉遣い等(特に心の中での言葉)は現代風になっている事が多いです。 *ざまぁ、は微ざまぁ、になるかなぁ?ぐらいの要素しかありません。

僕は君を思うと吐き気がする

月山 歩
恋愛
貧乏侯爵家だった私は、お金持ちの夫が亡くなると、次はその弟をあてがわれた。私は、母の生活の支援もしてもらいたいから、拒否できない。今度こそ、新しい夫に愛されてみたいけど、彼は、私を思うと吐き気がするそうです。再び白い結婚が始まった。

お飾りの侯爵夫人

悠木矢彩
恋愛
今宵もあの方は帰ってきてくださらない… フリーアイコン あままつ様のを使用させて頂いています。

あなたが選んだのは私ではありませんでした 裏切られた私、ひっそり姿を消します

矢野りと
恋愛
旧題:贖罪〜あなたが選んだのは私ではありませんでした〜 言葉にして結婚を約束していたわけではないけれど、そうなると思っていた。 お互いに気持ちは同じだと信じていたから。 それなのに恋人は別れの言葉を私に告げてくる。 『すまない、別れて欲しい。これからは俺がサーシャを守っていこうと思っているんだ…』 サーシャとは、彼の亡くなった同僚騎士の婚約者だった人。 愛している人から捨てられる形となった私は、誰にも告げずに彼らの前から姿を消すことを選んだ。

処理中です...