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第2章 うたた寝王女絶叫編
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しおりを挟む~マリアンヌ公爵夫人視点~
………ふふふ………ふふ………あのイアンがねぇ~
わたくしは、ルティア様とのお茶会を終え自室へと帰って来ていた。
…まさかとは思っていたが、あのイアンが誰かに執着する日が来るとは思わなかった。
あの子は昔から誰に対しても淡白………
いえ…全く興味を持つ事がなかった。
幼い頃から王妹姫の息子でレッシュ公爵家の跡取りとして、数々の良家の令嬢からの縁談が持ち上がったが、遊び相手として招いた婚約者候補の令嬢に見向きもせず放置するわ、平気で相手の欠点を容赦なく指摘するわ………
昔から興味のない人には容赦なかったのよイアンは………
まぁ、あの王子様みたいな容姿で辛辣な事言われれば、チヤホヤされて育った高位貴族の令嬢にはショックで当分立ち直れないわよね。
案の定、婚約を打診してきた側から取り下げの書簡が送られてくるのは必然であった。
その後、15歳で王城に上がりシュバイン公爵家のハインツ様の部下として働き出してから変わったのよね………
誰に対しても興味を示さなかったあの子が、ハインツ様だけは神のように崇拝しだした。
まぁ、ハインツ様は18歳だった当時から王城の影の支配者とか噂されていたやり手だったし、あの方の下で働きだし感銘を受けたのでしょうけど………
あの当時は、あまりの心酔ぶりに男色の道に行ってしまうと心配した程だった。
ハインツ様の部下として、周辺諸国へ行くようになり、レッシュ公爵家から離れている時期も増えて、22歳になるのに結婚はどうするのか心配していたが………
………リザンヌ王国へ行って3年………
あの子自ら結婚相手を連れて帰ってくるなんてねぇ~
詳しくは分からないが、ルティア様と我国の公爵家との婚約は、ハインツ様がリザンヌ王国へ圧力をかけて成立したらしいと聞いているわ。
ハインツ様が欲しがる程の逸材………
いえ………裏で暗躍していたのはイアン………
昔から自分より賢い者にしか興味を示さなかったイアン自ら欲しがる女性………
………ルティア様…貴方はレッシュ公爵家から逃げられないようよ………
本気になったイアンの実力…とくと拝見させて頂くわ………
『トントン』
「失礼致します。母上、お呼びとか?」
「忙しいのにごめんなさいね………
ルティア様の事で少し相談があるの。」
「えっ⁈………ルティの事ですか?」
………ふふふ………愛称呼び出てることも気づかないなんて………
困った子だわ………
「えぇ………ルティア様の事よ………」
「………」
「昨夜、ジョージから聞いたのだけど、近々王城でルティア様歓迎の夜会が開かれるそうね。」
「………はい。そのように伺っておりますが………」
「その夜会で、ベイカー公爵家かレッシュ公爵家の婚約者候補がルティア様をエスコートし、ファーストダンスを踊る事となるそうよ。
………ルティア様が、レッシュ公爵家に滞在している事を鑑みると、公平性を期すためにベイカー公爵家のリドル様がエスコートなさることになるでしょう。」
「そうでしょうね………今の段階では、余りにもレッシュ公爵家が有利な状況だ。
ベイカー公爵家がケチをつける可能性は大いにある。口惜しい事ですが………」
………まったく…本音がだだ漏れよ………
「そこで提案なんだけど………
リザンヌ王国と我国では、ダンスのステップの踏み方が違うのは知っているわね。ルティア様のダンスのレベルが分からないから何とも言えないけど、王宮での立場を考えると自国のステップは習っていても他国のステップを習い実践で踊ったことは全くないと思うわ。
このままだと、ダンスの名手であるリドル様相手に踊ったとしても、まともに踊れないでしょう。それでは、ルティア様が王女なのにダンスも踊れないのかと槍玉に上がってしまいます。」
「………で、母上は僕に何をさせたいのですか?」
「リドル様と同等のダンスの技術を貴方は持っているわ。
これから夜会まで、ルティア様のダンスの練習相手になりなさい。
………ルティア様には話を通してありますから………」
「………了解致しました。母上………」
艶然と微笑むイアンを前に、今後の展開が楽しみなマリアンヌであった。
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