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第2章 うたた寝王女絶叫編
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しおりを挟む~2週間後~
私は、グルテンブルク王国へ向かう馬車に揺られていた。
王女の出立だというのに、数名の護衛に馬車一台………
連れて行く侍女は、アンナのみ………
あまりにもシンプルな行列に街ゆく人々は、誰も王女が乗った馬車だとは気づかなかった。
途中の簡素な宿に一泊し、次の朝グルテンブルク王国の王城についた王女御一行は、あまりに簡素な出で立ちに、王城正門前で足止めを食らった………
一国の王女が乗った馬車だと言うのに、私達が足止めされている横を、次々と豪華な馬車が顔パスで通り過ぎていく。
やっと正門を抜け、王城内の控えの間に通された頃には、ゆうに正午を過ぎていた。
………あぁ………お腹空いた………
隣では、先程から侍女のアンナがぷりぷり怒っている。
「信じられませんわ!一国の王女様を馬車の中であんなに待たせるなんて‼︎
3時間ですよ!3時間‼︎‼︎
ここの王城の警備は何やっているのですか!仕事が出来ないボンクラばかりですか‼︎」
「………アンナ落ち着いて………
仕方ないわよ。まさか王女が、数名の護衛と簡素な馬車で来るなんて思わないじゃない。待っている間に次々と通り過ぎていった馬車の方が豪華だったもの。
王女の名を語る不届き者と勘違いされても仕方ないわよ。」
「それでも、あんまりですわ………
王女の出立だというのに………
陛下は酷過ぎます………
一般的な貴族の嫁入りの方がよっぽど豪華です。」
「………まぁ、そうよね………」
今の王宮の財政状況じゃ無理ね。
王都の復旧を果たしたばかりだし、これから王宮内の改革を進めるとしてお金はいくらあっても足りないくらいだろうし。
こちらからお願いして、私を嫁にもらってもらう訳でなく、グルテンブルク王国が所望したのだから、扱いはこんなものよね。
グルテンブルク王に渡す、貢ぎ物すらないなんて………
兄上は、血の繋がった妹にも容赦ないと言うか………面識がないから容赦ないのね………
結局最後まで言葉を交わすこともなかったわ………
まぁ、私が公爵家で困らない程度のお金を持たせてくれただけありがたいわ。
これなら、既製品のドレスやアクセサリー程度なら買えそうだし、ひとまず王女としての体面は保てそうだ。
それから控えの間でさらに3時間待たされ、やっと陛下に謁見出来、レッシュ公爵家へ着いたのは、夜遅くなってからだった。
予定よりかなり遅れて到着した私達をレッシュ公爵夫妻は温かく迎えてくださった。
「ルティア王女様、遠路はるばるお越しくださりありがとうございます。
わたくし、公爵家当主のジョージ・レッシュと申します。」
ロマンスグレーのしぶい美丈夫が挨拶をしてくださる。
「お初に御目にかかります。隣国リザンヌ王国より参りましたルティアと申します。遅い時間となってしまい誠に申し訳ありません。」
「いえいえ。王城での出来事は聞いております。お気になさらず。
こちらは、妻のマリアンヌでございます。」
そこには、完璧なカーテシーをとる金髪碧眼の美しいマダムがいらっしゃった。
………さすが、王妹殿下ね………
「お初に御目にかかります。ルティアと申します。至らない点も多々あるかと思いますが、よろしくお願い致します。」
「王女様。ここを我が家だと思って気を楽にお過ごしくださいね。わたくしも娘が出来たみたいで嬉しいの。」
公爵夫人は、茶目っ気たっぷりに言ってくださる。張っていた気を少し抜く事が出来た。
「そうそう…我が家にはもう一人息子が居りまして、紹介する予定でしたが他国から帰国して早々、王城に呼び出されまして、只今家に居りません。
明日には戻って来ると思いますので、戻り次第紹介させて頂きます。」
その後、ディナーを公爵夫妻と共に食べ、グルテンブルク王国の話を聞いたり、リザンヌ王国の話をしながら楽しい時間を過ごす事が出来た。
王宮では決して叶えることが出来なかった家族団欒とはこういうものだと認識しながら………
その夜は、長旅の疲れと長時間の緊張から解放された安堵感から死んだように眠りに落ちた。
ふかふかの布団に包まれる幸せを噛みしめながら………
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