売れ残り男爵令嬢は、うたた寝王女の愛ある策略に花ひらく

湊未来

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第2章 うたた寝王女絶叫編

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「陛下お呼びでしょうか?」

私は、謁見の間にて陛下と対峙していた。

………相変わらず母とべったりだこと…

謁見の間でも、陛下は母を隣に侍らせて手を握っている。

いい大人が何をしているのだか………
さっさと兄上に王位を継承して、母と一緒に隠居すればいいものを。
実際に、政を動かしているのは兄上で、お飾り陛下でしかないのだから………

私は昔から、この男が嫌いだった。
自分の快楽を優先し、政を疎かにする。
国のトップでありながら母を寵愛し、正妃の扱いを粗末に扱ったが為に、いらぬ軋轢を生み貴族社会を混乱に陥れただけでなく、私達兄妹の運命すら危険で波乱なものにした。

………国のトップなら自分の気持ちより、国の安定を優先しなさいよ。

今回のクーデターも全てこの男が悪いんじゃない………



「あぁ………ルティア来たか………
隣国グルテンブルク王国から書簡が届いてな、お前をあちらにご所望だそうだ。」

「………といいますと………?」

「簡単に言うと、グルテンブルク王国に嫁げと言うことだ。」

「それは、あちらの王族にということでしょうか?恐れながら、隣国の王太子様は最近結婚されたばかりではないでしょうか………第二王子は廃太子されたばかりですし………わたくしを側妃にお望みですか?」

「………いや違う………
書簡には、あちらの四大公爵家のどれかに嫁いでもらいたいそうだ。」

………なんだその曖昧な内容は?

確かグルテンブルク王国の四大公爵家は、シュバイン家とベイカー家とレッシュ家と最近新しく公爵家になったスバルフ家だったと思う。

シュバイン家とベイカー家は最近、姻戚関係になったとか………

「現在、四大公爵家のベイカー家とレッシュ家には、婚約者のいない独身子息がいるそうだ。ふたりとも、将来は公爵家を継ぐ跡取りだそうだ。
グルテンブルク王国には、先のクーデターで、兵を出してもらった恩がある。
また、まだ安定していない我が国には強固な同盟関係を隣国と結ぶ必要がある。」

………まぁ、要するに国の為に政略結婚をしろということね………

「あちらは、ベイカー公爵家でもレッシュ公爵家でも好きな方をお前が選べば良いと言っている。
相性も有るだろうから、正式な婚約を結ぶ前に、グルテンブルク王国でふたりと過ごしてみて、良い方と婚約を結べば良いとのことだ。」


ルティア王女は、頭がお花畑状態の両親を見て育った為か、恋だの愛だのは全く信用しておらず、とても現実的な考えを持つ王女だった。

王女に生まれたからには、国の安定の為には政略結婚が当たり前と………


「承知致しました。
それで、あちらにはどちらに滞在することになるのでしょうか?王城でしょうか?」

「………いや………あちらからの書簡では、王妹殿下が降下されたレッシュ公爵家での滞在を打診してきておる。
将来的には、グルテンブルク王国に嫁ぐことになるから、あちらの文化、マナー、習慣など実際の貴族家で触れた方が良いだろうとの配慮だ。」

………何だそれは………?

普通ならあり得ないでしょ。婚約するかもしれない相手の住む家にお世話になるなんて………

隣国は何を考えているのかしら………

………まぁ、こちらに拒否権はないのね。きっと………

「承知致しました。」

「では、2週間後に出立するように。」




謁見の間を辞した私は、その足で図書館に向かった。

………いるかしら………

図書館内を見回すと、司書カウンターで書類整理をしているイアンを見つけた。


「………イアンお疲れさま………
話があるんだけど今いい?」

「………どうしたのですか?改まって………貴方らしくない。
陛下から何か言われましたか?」

「………あのね………私………
隣国に嫁ぐ事になりそうなの。
2週間後に、グルテンブルク王国に出立するわ。あちらの公爵家に嫁ぐと思う。」

「………」

「イアン………今までありがとう。
貴方がいてくれて、3年間たのしかったわ。わたくし以外の女性に同じ事しちゃダメよ。女性の寝顔を盗み見るのは失礼だからね。
元気でね………さようなら。」

私は、イアンに言いたい事だけ言って図書館を出ていった。
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