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第2章 うたた寝王女絶叫編
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しおりを挟む「ルティ………ここにいましたか。」
私は、図書館のお気に入りの場所………
人気のない奥まった場所にある出窓に腰掛け本を読んでいた。
「………イアン………今良いところなの。
邪魔しないで………」
今日の私の読み物は、恋愛小説だった。
幼なじみの2人が、身分の違いに苦しみながらも愛し合い、最終的には全てを捨てて隣国に逃避行する物語りだ。
「ルティは、今何読んでるの?
………珍しいね。恋愛小説なんて………」
私が話しかけないように言ったにも関わらずイアンはお構いなしに話かける。
イアンとはかれこれ3年の付き合いになる。
初めて会ったのもこの図書館だった………
3年前………
いつものように、図書館のお決まりの机でうたた寝をしていた私は、目が覚め顔を上げると、目の前に知らない男性が頬杖をつき私を見ていた。
いつもは誰もいない席に誰かいる衝撃………
私は、しばらく放心状態で、ただ相手の顔を見つめることしか出来なかった。
「ルティア様、ヨダレが出てますよ。」
始め何を言われたのか分からなかったが、理解して更なる衝撃が私を襲ったのは言うまでもない。
今更ながら、知らない男性の前で寝入ってしまい、不覚にもヨダレまで垂らすとは………
私は服の袖で、素早くヨダレを拭い、対面の男と対峙した。
「貴方、誰?………私が王女と知っての狼藉ですか?女性の寝顔を観察するなんて最低です。」
「ルティア王女様ですね。もちろん知っておりますよ。うたた寝王女様………
狼藉と言われましても、王宮の図書館は働いているものであれば誰でも出入り出来る場所です。そんなところで、うたた寝していた王女様が悪いのではないですか。寝顔を見られたくなければ、ご自分の部屋でお休みになれば宜しいかと。」
………怒涛の勢いで反撃にあう………
正論すぎてぐうの音も出ない………
「そうそう、申し遅れました。
わたくし、イアン・レッシュと申します。こちらの図書館で司書をしております。以後、お見知りおきを。」
………正直………知り合いになりたくない。しかし、図書館の司書をしているのであれば、今後会わない訳がないじゃないか………
………私の心のオアシスが………
その後も、度々イアンは私がうたた寝していると目の前に現れてジッと寝顔を見続け、私が起きると立ち去るというルーティンを繰り返すようになった。
そんなルーティンにいつしか私も慣れ、イアンがいるのが当たり前と認識するようになっていった。
そんな関係が続き、始めはルティア様だった呼び名が今ではルティと愛称で呼ばれるまでになっている。
「確かに恋愛小説なんて珍しいわね。
ただ、王都で流行りの小説だって聞いてね。
………でもダメね。この恋愛小説。
現実離れし過ぎてる………
貴族のお坊ちゃんとお嬢ちゃんが手に手を取って、隣国へ逃避行………
すぐ死ぬわね。………現実はそんなに甘くない。」
「………ルティ………それを言ったら元も子もありませんよ。
空想小説なんですから………」
「………あぁ………そうそう。
忘れていました。陛下がお呼びだそうですよ。」
「えぇ‼︎それを早く言いなさいよぉ~」
私は、慌てて図書館を駆け出した。
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