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第2章 うたた寝王女絶叫編
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しおりを挟む………私の眠りを邪魔するバカ者は誰よ………
「………ルティ………そろそろ起きなよ。
今日は、王太子殿下のお披露目の日だよ。こんな所で、うたた寝してて大丈夫なの?」
私は眠い目を擦り、突っ伏していた机からムクリと起き上がった。
「………イアン………王女の寝顔を許可もなく見るなんて、不敬罪で訴えるわよ。」
「王女様………ここは、王宮に勤める者なら誰でも入れる図書館ですよ。
こんなところで、無防備にうたた寝しているルティア様が悪いと思いますが!」
私の目の前にいるイアンは、王宮図書館の司書をしている。
私は昔から誰も来ないこの図書館が大好きだった。
王女なのに、側妃の子供というだけで正妃から疎まれていた私は、後宮でも居場所がなく、もちろん教養を身につけるための教師をつけてもらうことも出来なかった。
疑問に思った事は、自分で調べるしかなく幼い頃からよく図書館に通った。
図書館は寂しい私にとって夢のような世界だった。
歴史書に、旅行記………恋愛小説に、ファンタジー………
数えきれない物語が私を夢の世界へ連れて行ってくれる。
王宮という牢獄から出られない私にとって図書館は唯一現実を忘れられる場所だった。
一日中図書館に入り浸り、そのまま寝てしまう………
いつしか私は、うたた寝王女という不名誉なあだ名がつけられるようになった。
「ルティア様‼︎こちらにいらっしゃいましたか‼︎‼︎」
イアンと対峙していた私は、図書館に走り込んできた私付きの侍女アンナに取っ捕まった。
アンナは、私が誰からも見向きもされなかった時から唯一色々と面倒をみてくれていた侍女だ。
「ルティア様!今日は絶対にお部屋にいてくださいと申したはずです。なぜ、図書館にいるのですか‼︎‼︎」
私は、アンナに首根っこを掴まれ、自室へ連行されていった。
「今日は、ルティア様の兄上である王太子殿下のお披露目の日ですよ。
朝からスケジュールがいっぱいだというのに………
これでは、正午に始まるメインバルコニーからの国民へのお披露目に間に合いません‼︎」
「アンナ………私いなくても大丈夫じゃないかしら………だって、国民が見に来るのは、クーデターを制圧した英雄のお兄様なんだし、私ひとりいなくても誰も気づかないわよ。
それに、お兄様は私が生まれたときには既に王宮にいなかったから、血のつながりはあっても、赤の他人と言うか………
私にとってはどうでもいい人なのよねぇ~」
側妃の子供でありながら、男子だった兄は王位継承権第一位の王太子に生まれてすぐ即位することになった。
正妃には、王女はいたが王子がいなかった。
側妃となる母を舞踏会で見初めた陛下は、伯爵家の娘だった母を側妃に迎え、寵愛を注いだ。
母にばかり寵愛を注いだ陛下は、正妃には見向きもしなくなった。
夜の営みもなくなった正妃に王女以外の子が出来る訳もなく、兄上を生んだ母は自身の意志とは無関係に、国母として王宮での力を強めていった。
それに反感を持った正妃は、王太子である兄上を暗殺しようと刺客を差し向けるようになった。
王宮では、兄上を守りきれなくなった母は、信頼できる従者に幼い兄上を預け王宮から逃したそうだ。
あれから数十年………
正妃に愛想を尽かした陛下は、益々母に寵愛を注ぎ、私が生まれた後も、母を手元に置き愛し続けた。
実の娘の私ですら、ほとんど母に会えない18年であった。
そんな私の環境が大きく変わったのは、数年前………
お飾り王妃に成り果てた正妃と王弟が手を組みクーデターを起こしたのだ。
王都は、王弟派の兵士に荒らされ略奪が横行し、王宮もあと少しで陥落する寸前まで追い込まれた。
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形勢はいっきに逆転し、あっという間に王弟派の兵を鎮圧し、短期間で王都を復旧した兄上は、今では国の英雄だ。
年をとった陛下は、ほとんどの執務を王太子に任せ、自分は愛する母と隠居を決め込んでいる。
近々、引退して王位を兄上に譲ると言われている。
そんな兄上が、今日国民に正式に王太子としてお披露目されるとあって、王都中がお祝いムードに湧いていた。
「何を仰いますかルティア様!
今では、ルティア様も側妃様のお子様という理由で正妃に虐げられた可哀想な王女様として、国民に絶大な人気ではありませんか!」
「………アンナ………その話、恥ずかしいからやめて………」
「ルティア様!つべこべ言わずさっさと着替える‼︎‼︎」
私はアンナに服を剥ぎ取られ、窮屈なドレスに着替えさせられ、あっという間に王宮バルコニーに放り出されていた。
………あぁ………疲れる………
私は、顔に笑顔を貼り付け国民に向かい手を振り続けた。
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