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第1章 男爵令嬢困惑編
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しおりを挟むファーストキスを奪われた日から数週間………私は変わらずリドル様の専属侍女をしていた。
初日以降、寝起きは布団をひっぺがし無理やり起こす事を決意した私だったが、寝起きの強烈な色気を醸し出すリドル様に四苦八苦すること数日………
始めは、ドギマギしてアタフタしていた私も今では、リドル様の寝ているシーツを持ち床に引きづり落とす作戦を決行し、2、3度の声かけで起きてくださるまでになった。
最初の余所余所しい態度から、今では昔みたいにハッキリ言い合う関係にまでなり仕事もやり易くなっていた。
「リドル様………そろそろ休憩の時間でございます。お茶を用意致しましたので、こちらでお休み下さいませ。」
「ミリア…あと少し、この書類を読んでからでもいいだろう?」
「ダメでございます。もうその手には乗りません。先ほども同じ事をおっしゃって、休憩なさいませんでした。」
「………敵わないな………わかった休憩するよ。その代わり、ミリアもお茶に付き合ってよ。」
「え⁈私は侍女ですよ!同席出来ません。」
「ミリアがお茶に付き合ってくれないなら、休憩しないよ!」
………コノヤロウ………断れないのわかってて………
「………わかりました………」
私達は、ソファで向き合ってお茶をすることにした。
「ミリアは、最近の市井の流行ってわかる?令嬢達に何が流行っているか知りたいんだよね。お菓子とかアクセサリーとかカフェレストランとかね………」
………貴方が、それを私に聞きますか………
「リドル様の華やかなご令嬢方にお聞きすればよろしいのではありませんか?
わたくしなんかよりよっぽどご存知で、ご一緒くださると思いますわ。」
「いや………違くてね………
何て言うか下見しておきたいというか………」
………ご令嬢達とデートするのに先に下見しておきたいけど、一人ではカッコつかないということかしら。
「わかりました。わたくしリドル様付き侍女ですし、お付き合いさせて頂きますわ。」
私はヤケクソ気味に答えていた。
「ミリアありがとう。じゃあ、明日街でお忍びデートしよう。」
………デート………その響きが私の心を揺さぶる………
「かしこまりました………」
次の日、私はリドル様と一緒に街に来ていた。
リドル様は、白シャツに茶色のトラウザーズを合わせた軽装で、私は足首までの臙脂色のワンピースに白い帽子をかぶっていた。
爽やかな日差しの中、人混みを歩く私達………すれ違う人々が振り返る………
不思議な色気を持つリドル様を見て思わず振り返る女性が多数………
………あぁ………やっぱりモテるのね………
隣で歩く私は急に恥ずかしくなり、少し離れて歩こうとして………
「………っ⁈」
リドル様に手を繋がれていた………
「ミリア………人も多いし、逸れると困るから。」
その後、行った菓子店でも帽子屋でも………
何故かカフェレストランでも隣に座り手を離してくれなかった。
「このネックレス…素敵………」
最後に行ったジュエリーショップで、ゴールドのチェーンに真珠をあしらった揺れる小花のネックレスを見つけた。
貴族用のジュエリーショップだったようで、私には到底手が出せる代物ではない。
私は買うのを諦め、その場を離れてあてもなく店内を見ていた。
まもなく、リドル様と合流しベイカー公爵家の馬車にて帰路についた。
「今日は付き合ってくれてありがとう。おかげで、色々と役に立ちそうだ。」
「ミリア………お礼………」
リドル様は、私に小箱を渡した。
「開けてみてよろしいのですか?」
「………ミリア…開けてみて」
「‼︎」
小箱を開けた私はビックリした。
「リドル様!これって………」
「さっきのジュエリーショップで見ていたでしょ。気に入ってたんじゃないかと思って………
ミリア………つけてあげる」
リドル様は、私からネックレスを奪い首につけてくれた………
「ミリア…とっても似合う………素敵だ………」
私は、ただ顔を真っ赤にして俯くことしか出来なかった。
………私の閉ざした想いが溢れ出しそうなのを感じながら………
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