売れ残り男爵令嬢は、うたた寝王女の愛ある策略に花ひらく

湊未来

文字の大きさ
上 下
8 / 92
第1章 男爵令嬢困惑編

7

しおりを挟む

ファーストキスを奪われた日から数週間………私は変わらずリドル様の専属侍女をしていた。

初日以降、寝起きは布団をひっぺがし無理やり起こす事を決意した私だったが、寝起きの強烈な色気を醸し出すリドル様に四苦八苦すること数日………

始めは、ドギマギしてアタフタしていた私も今では、リドル様の寝ているシーツを持ち床に引きづり落とす作戦を決行し、2、3度の声かけで起きてくださるまでになった。

最初の余所余所しい態度から、今では昔みたいにハッキリ言い合う関係にまでなり仕事もやり易くなっていた。



「リドル様………そろそろ休憩の時間でございます。お茶を用意致しましたので、こちらでお休み下さいませ。」

「ミリア…あと少し、この書類を読んでからでもいいだろう?」

「ダメでございます。もうその手には乗りません。先ほども同じ事をおっしゃって、休憩なさいませんでした。」

「………敵わないな………わかった休憩するよ。その代わり、ミリアもお茶に付き合ってよ。」

「え⁈私は侍女ですよ!同席出来ません。」

「ミリアがお茶に付き合ってくれないなら、休憩しないよ!」

………コノヤロウ………断れないのわかってて………

「………わかりました………」


私達は、ソファで向き合ってお茶をすることにした。

「ミリアは、最近の市井の流行ってわかる?令嬢達に何が流行っているか知りたいんだよね。お菓子とかアクセサリーとかカフェレストランとかね………」

………貴方が、それを私に聞きますか………

「リドル様の華やかなご令嬢方にお聞きすればよろしいのではありませんか?
わたくしなんかよりよっぽどご存知で、ご一緒くださると思いますわ。」

「いや………違くてね………
何て言うか下見しておきたいというか………」

………ご令嬢達とデートするのに先に下見しておきたいけど、一人ではカッコつかないということかしら。

「わかりました。わたくしリドル様付き侍女ですし、お付き合いさせて頂きますわ。」

私はヤケクソ気味に答えていた。

「ミリアありがとう。じゃあ、明日街でお忍びデートしよう。」

………デート………その響きが私の心を揺さぶる………

「かしこまりました………」





次の日、私はリドル様と一緒に街に来ていた。

リドル様は、白シャツに茶色のトラウザーズを合わせた軽装で、私は足首までの臙脂色のワンピースに白い帽子をかぶっていた。

爽やかな日差しの中、人混みを歩く私達………すれ違う人々が振り返る………

不思議な色気を持つリドル様を見て思わず振り返る女性が多数………

………あぁ………やっぱりモテるのね………


隣で歩く私は急に恥ずかしくなり、少し離れて歩こうとして………

「………っ⁈」

リドル様に手を繋がれていた………

「ミリア………人も多いし、逸れると困るから。」


その後、行った菓子店でも帽子屋でも………
何故かカフェレストランでも隣に座り手を離してくれなかった。




「このネックレス…素敵………」

最後に行ったジュエリーショップで、ゴールドのチェーンに真珠をあしらった揺れる小花のネックレスを見つけた。

貴族用のジュエリーショップだったようで、私には到底手が出せる代物ではない。

私は買うのを諦め、その場を離れてあてもなく店内を見ていた。

まもなく、リドル様と合流しベイカー公爵家の馬車にて帰路についた。


「今日は付き合ってくれてありがとう。おかげで、色々と役に立ちそうだ。」

「ミリア………お礼………」

リドル様は、私に小箱を渡した。

「開けてみてよろしいのですか?」

「………ミリア…開けてみて」

「‼︎」

小箱を開けた私はビックリした。

「リドル様!これって………」

「さっきのジュエリーショップで見ていたでしょ。気に入ってたんじゃないかと思って………
ミリア………つけてあげる」

リドル様は、私からネックレスを奪い首につけてくれた………

「ミリア…とっても似合う………素敵だ………」


私は、ただ顔を真っ赤にして俯くことしか出来なかった。


………私の閉ざした想いが溢れ出しそうなのを感じながら………
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる

三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。 こんなはずじゃなかった! 異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。 珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に! やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活! 右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり! アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?

gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。 そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて 「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」 もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね? 3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。 4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。 1章が書籍になりました。

【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?

アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。 泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。 16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。 マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。 あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に… もう…我慢しなくても良いですよね? この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。 前作の登場人物達も多数登場する予定です。 マーテルリアのイラストを変更致しました。

踏み台(王女)にも事情はある

mios
恋愛
戒律の厳しい修道院に王女が送られた。 聖女ビアンカに魔物をけしかけた罪で投獄され、処刑を免れた結果のことだ。 王女が居なくなって平和になった筈、なのだがそれから何故か原因不明の不調が蔓延し始めて……原因究明の為、王女の元婚約者が調査に乗り出した。

【 完結 】「平民上がりの庶子」と言っただなんて誰が言ったんですか?悪い冗談はやめて下さい!

しずもり
恋愛
 ここはチェン王国の貴族子息子女が通う王立学園の食堂だ。確かにこの時期は夜会や学園行事など無い。でもだからってこの国の第二王子が側近候補たちと男爵令嬢を右腕にぶら下げていきなり婚約破棄を宣言しちゃいますか。そうですか。 お昼休憩って案外と短いのですけど、私、まだお昼食べていませんのよ?  突然、婚約破棄を宣言されたのはチェン王国第二王子ヴィンセントの婚約者マリア・べルージュ公爵令嬢だ。彼女はいつも一緒に行動をしているカミラ・ワトソン伯爵令嬢、グレイシー・テネート子爵令嬢、エリザベス・トルーヤ伯爵令嬢たちと昼食を取る為食堂の席に座った所だった。 そこへ現れたのが側近候補と男爵令嬢を連れた第二王子ヴィンセントでマリアを見つけるなり書類のような物をテーブルに叩きつけたのだった。 よくある婚約破棄モノになりますが「ざまぁ」は微ざまぁ程度です。 *なんちゃって異世界モノの緩い設定です。 *登場人物の言葉遣い等(特に心の中での言葉)は現代風になっている事が多いです。 *ざまぁ、は微ざまぁ、になるかなぁ?ぐらいの要素しかありません。

僕は君を思うと吐き気がする

月山 歩
恋愛
貧乏侯爵家だった私は、お金持ちの夫が亡くなると、次はその弟をあてがわれた。私は、母の生活の支援もしてもらいたいから、拒否できない。今度こそ、新しい夫に愛されてみたいけど、彼は、私を思うと吐き気がするそうです。再び白い結婚が始まった。

お飾りの侯爵夫人

悠木矢彩
恋愛
今宵もあの方は帰ってきてくださらない… フリーアイコン あままつ様のを使用させて頂いています。

あなたが選んだのは私ではありませんでした 裏切られた私、ひっそり姿を消します

矢野りと
恋愛
旧題:贖罪〜あなたが選んだのは私ではありませんでした〜 言葉にして結婚を約束していたわけではないけれど、そうなると思っていた。 お互いに気持ちは同じだと信じていたから。 それなのに恋人は別れの言葉を私に告げてくる。 『すまない、別れて欲しい。これからは俺がサーシャを守っていこうと思っているんだ…』 サーシャとは、彼の亡くなった同僚騎士の婚約者だった人。 愛している人から捨てられる形となった私は、誰にも告げずに彼らの前から姿を消すことを選んだ。

処理中です...