売れ残り男爵令嬢は、うたた寝王女の愛ある策略に花ひらく

湊未来

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第1章 男爵令嬢困惑編

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「………お嬢様………本気でおっしゃっているのですか?」

私はドスの効いた声で、愛するお嬢様に詰め寄っていた。

「……ミ…ミリア………落ち着いて………」


私がベイカー公爵家で、エリザベスお嬢様の侍女として仕えて15年。この度、手塩にかけて育てたお嬢様がベイカー公爵家を出て、シュバイン公爵家のハインツ様の元へ嫁ぐ事が決まった。

この15年色々な事があった………

お嬢様の母上様が亡くなり、感情をなくしたお嬢様の元に遊び相手兼侍女として仕え始めたのが10歳のとき。
無事に感情を取り戻すまでは、本当に大変だった………綺麗なお人形のお世話をしているような毎日だった。

その後、ある事件をきっかけに感情を取り戻したお嬢様だったが、私が15歳のとき第二王子のウィリアム様に一目惚れをしたお嬢様は公爵様に泣きつき婚約者の座に着いたが、相手がクズだった。

婚約後も、多数の女性との肉体関係の噂が絶えないのに、お嬢様はその噂自体を知っているのか知らないのか、ウィリアム王子一筋。全く見向きもされていないのに、一途に愛し続けていた。

あれから、10年………そろそろ婚約解消に公爵様が動き出す頃合いかと思っていたら、なんとウィリアム王子から婚約破棄を言い渡してきた。

やっとお嬢様も目が覚めるかと思いきや毎日ウジウジと未練タラタラ………

私が叱咤鼓舞してやっとウィリアム王子との事に心の整理がついたところに、最大の悪魔が手ぐすね引いて待ってたのよ!




………シュバイン公爵家のハインツ様………

あの方が現れてから全てが急速に動き出したのよね。

ベイカー公爵家領地に現れ、お嬢様の心をさらい、スバルフ公爵家の夜会で婚約者となり、ウィリアム王子の婚礼の儀の夜会で、ウィリアム王子と婚約者のマリア男爵令嬢を断罪し、表舞台から退場させた。


まるで始めからお嬢様を手に入れる為に全てが仕掛けられていたかのように。

お嬢様は、まんまとハインツ様の罠に嵌り、めでたく悪魔との結婚が成立致しましたとさ………

………ありえないわ………
このままでは、あの悪魔にお嬢様をいい様にされてしまう‼︎


「お嬢様………シュバイン公爵家に嫁ぐ時に私に着いてくるなとはどういうことですか?」

「ベイカー公爵家からは侍女は必要ないと言うことですか?それは、ハインツ様からの命令ですか?
ベイカー公爵家ほどの家から誰も嫁ぎ先に連れて行かないのは有り得ません。」

「………違うのミリア………ベイカー公爵家からは数名侍女を連れて行く予定よ。
ハインツ様からも、慣れない家でひとりは大変だから気心の知れた侍女を連れて来ても良いと言われたわ。」

「では何故、私を置いていこうとするのですか?」

私は、泣きそうだった………

お嬢様とは、主人と侍女としてだけでなく、本当の姉妹のように育ってきた。
私にとってお嬢様は手のかかる妹のようなものだ。そんなお嬢様が、私の手を離そうとしている………

「お願いミリア………聞いて欲しいの…
ミリアと出会って、もう15年ね…
いつもわたくしの心配ばかりでたくさん迷惑をかけたわ。ミリアを危険な目にも合わせてしまった。このままだと、ハインツ様と結婚しても貴方にずっと、おんぶに抱っこだと思うの。きっと何も変われないままだわ………
賢く強いわたくしになる為に貴方の元を巣立ってがんばりたいの。」

「………お嬢様………それでも、私はお嬢様にお仕えしたい………」

「ミリア…それだけではないわ………
ミリアは25歳よ。今を逃したら幸せな結婚が出来なくなってしまう。わたくしは、ミリアに幸せになってもらいたいの。貴方の愛する人と………」

「私は、結婚するつもりはありません。一生お嬢様にお仕えするつもりでいます。」

………私の心に、初恋のあの人が浮かぶ………

「ミリアは、本当にそれでいいの?
貴方のことを心から愛してくれる人が、そばにいるかもしれないわ………
ミリアよく考えて………」


私は、お嬢様の言葉に答える事が出来なかった………



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