【R18】オークの花嫁〜魔王様がヤンデレ過ぎてついていけません!!〜

湊未来

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前編(ミレイユ視点)

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「きっとミレイユには分からないのでしょうね。私が今、どれほど嬉しいかなんて」

「えっ?」

「今、ミレイユが言った言葉は、私への愛の告白そのものですよ」

「あ、愛の告白!?」

「だって、そうでしょう。私を独占したかったなんて、愛の告白以外の何だと言うのです」

「嘘……、そんなつもりは」

「くくく、告白するつもりなんてなかった。でも、もう遅いです。怒りに任せて言った言葉こそ、真実だ。ミレイユ……、私はね、ずっと怖かったのです。覚醒しない私に、いつか貴方は愛想を尽かすとね。何しろ覚醒前の私は、なんの力もありませんでしたから。しかも子供姿のまま、成長することもない。ミレイユを愛していようとも、子供の姿では告白もできないでしょう」

「えっ!? 私を愛していた? そんな要素、私のどこにあるんですか?」

「己の命を賭して、私を守ろうとする貴方に惚れたと言ったらどうしますか?」

「騎士として命をかけるのは、当前の事です。主人を守るのが護衛騎士の役目です」

「そうですね。確かに、護衛騎士として、あるべき姿です。しかし、貴方はそれだけではなく、孤独だった私に家族の温もりというものを与えてくれた。確かに、始めは親愛の情だったかもしれない。でも、見た目は少年のままでも、心は成長し大人へと近づいていく。気づいた時には、ミレイユへの想いは、愛へと変わっていた」

 そう言って、昔を懐かしむように切なく細められたディーク様の瞳に、胸がキュッと痛み出す。
 
 なかなか覚醒しなかったディーク様は、成長していく心と少年のままの身体とのギャップにずっと苦しめられていたのだろう。それなのに、彼の苦しみにも気づかず私は、ディーク様を独り占めしているという仄暗い優越感に浸っていた。
 
 なんて浅ましいのだろう。

「申し訳ありません。ずっと、ディーク様の苦しみに気づかず、自分の欲望の事しか、考えていませんでした」

 瞳からこぼれ落ちた涙を、ディーク様の唇が吸い取っていく。その仕草があまりに優しく、溢れ出した涙は、止まるどころか、次から次へと落ちて消えていった。

「そんな情けない私、知られたくはなかったのですが……、ミレイユの愛の告白を聞けたので、おあいこですね。ミレイユ、貴方への想いは、家族への愛、親愛なんかじゃありません。愛しています。ミレイユ、貴方のことを一人の女性として愛しているのです。だから、どうか私の伴侶となってください」

『一人の女性として愛している』と言ったディーク様の言葉が心に響き、胸を熱くさせる。それと同時に感じる違和感に頭では警鐘が鳴る。

 性行為を必要とせず、子を成すことが出来る魔王に伴侶は必要ない。
 
 魔王の伴侶とは、魔族の世界では、性処理を目的とした愛人を示す。魔族の女にとって、魔王の愛人になることは、とても名誉なことだ。魔王の寵愛を受ければ、受けるほど、魔族の階級社会において、己の地位も、名誉も上がっていく。だからこそ、ディーク様の目に止まるために、熾烈な女の戦いが魔王城で日々、繰り広げられているのだから。
 
 魔王の愛人。

 確かに、そこに愛はあるのかもしれない。ただ、その愛は、ディーク様が振りまく数多あまたの愛の一部でしかないのではないか。私がディーク様、ただ一人を愛していても、彼は違う。ディーク様は私だけを愛してくれる訳ではない。
 
 そんなの、耐えられない。

「ディーク様、それは私に愛人になれと言っているのでしょうか? 護衛騎士としては力不足な私に、今度はディーク様の性のお相手をしろと」

「ミレイユを愛人にするつもりはないよ。私の妻とするのだから」

「では、ディーク様が選ぶ数多の妻の一人になれと?」

「数多の妻? 私はミレイユ以外の女を妻に娶るつもりはないよ。そんなもの、必要ないしね」

「嘘を言わないでください!」

「嘘? 嘘をついたつもりはないけど……」

「だって、魔王様に子を成すための伴侶は必要ないじゃないですか?」

「あぁ、そういうことか……。確かに、通説では、魔王に子を成すための性行為は必要ないと言われているね。ただ、それは他の魔族を欺くため。魔王の伴侶となるオークの花嫁を守るための『嘘』だよ。魔王の子を成すには、性行為が必要となる。他の種と同じようにね」

「……うそ、でしょ」

 私の脳裏に、オークの里で聞いたある噂が浮かぶ。

『覚醒前の魔王を守る騎士は、必ずオークの里の女の中から選ばれる。しかしその娘が、再びオークの里の土を踏むことは決してない』

「くくく……ミレイユ、貴方は私が他の女魔族に目移りするのではないかと心配しているのですね。でも、そんな心配は無用です。何しろ、魔王は、次期魔王を孕む器である女オークにしか、欲情しませんから」

 ぐりっと下腹部に押しつけられたディーク様の膨らみに、私は情けない悲鳴をあげた。

 今やっと、わかった。

 初めから、ディーク様は私を逃すつもりなどなかったのだ。
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